2023年、もっとも投資に値するフォーマットは 音声メディア か:「いま現在、オーディオ広告は最強のフォーマットだ」

DIGIDAY

多くの経済部門で広告が減速するなか、ポッドキャストと音声メディアへの投資は来年も堅調に推移するもようだ。

ライブストリーミングから独占配信の番組まで、成功の度合いこそ異なるが、音声メディアはさまざまなプラットフォームで成長を続けている。この第2四半期を見る限り、メタ(Meta)をはじめとする大手テクノロジー企業が広告事業で苦戦するなか、Spotify(スポティファイ)や、パンドラ(Pandora)の親会社であるシリウスXM(Sirius XM)といった企業は逆に広告収入を伸ばしている。さらに最近、TwitterやYouTubeも相次いでポッドキャスト機能を導入しており、ブランドやクリエイターにとっては、追加的な収入を獲得し、新たな顧客層を開拓する選択肢が増えている。

業界筋によると、ポッドキャストのリスナーは定着性が高く、しかも音声コンテンツではより柔軟な広告フォーマットが使えるという利点もある。実際、調査会社のWARCによると、ポッドキャスト広告費は2018年には世界全体で8億600万ドルだったが、今年は26億ドルに迫る勢いだという。2023年には世界全体で28億ドル近くに達すると推定されるが、この金額は
オンラインの音声メディアに対する投資総額の26.8%に相当する。これに対し、ラジオ広告費の世界総額は、来年、推定で2.4%落ち込む見込みという。

新しい配信面の想像

サイビッツ(Scibids)のナディア・ゴンザレスCMOはこう語る。「ほとんどの人はジョギングをしたり、車の運転をしたりしながら音声コンテンツを聞いているため、広告のスキップは起こりにくい。いま現在、オーディオ広告は最強のフォーマットだ」。

WARCでデータ、情報、予測の責任者を務めるジェイムズ・マクドナルド氏もこう説明する。「多様な広告フォーマットやデバイス、たとえばイヤフォンやスピーカー、スマートホーム機器、あるいは運転しながら音声コンテンツを聞く習慣など、さまざまな要因が音声という媒体への関心を高めている。また、ポッドキャストというフォーマットは、番組やクリエイターに固定ファンがついている場合、特に効果的だ」。

多くの番組は、ホストやパーソナリティが読み上げる形で広告を挿入している。WARCによると、現在、オーディオ広告費で最大のシェアを占めるのはこのフォーマットだという。この形式の唯一の弱点といえば、容易に拡張できないところである。とはいえ、このメディアの信奉者たちにとって、それはさしたる障害ではない。

マクドナルド氏はこう語る。「広告が番組を支えている場合、リスナーはポッドキャスト広告の価値交換を理解しているだけでなく、受け入れてもいる。番組を聴いているオーディエンスは、たいてい関心や親近感をもって聞いているため、ブランドにとっては非常に魅力的だ」。

音声コンテンツを聞くためのデバイスが増えれば、ショッパブル広告やインタラクティブ広告など、新しい広告フォーマットも普及するようになるだろう。ア・ミリオン・アッズ(A Million Ads)のポール・ケリー最高収益責任者は、広告収入で成り立つメディアとして、ポッドキャストは「まだ十分に収益化されていない」と考えている。

「カートに商品を入れるとか、ブックマークに登録するとか、このような瞬間を収益化の進んでいないメディアでうまく活用することにより、まったく新しい広告配信面を創造できる」とケリー氏は話す。

ストーリテリングを試すのに最適のチャンネル

実際、独立系エージェンシーのオーシャンメディア(Ocean Media)は、ポッドキャストに参入するクライアントの増加に伴い、このメディア専任のチームを新設した。CEOのジェイ・ランガン氏によると、現在同社でもっとも成長著しい領域は、間違いなくストリーミングとポッドキャストであるという。オーシャンメディアでは、このような新しいメディアチャネルを積極的に活用する試みとして、たとえば中古車マーケットプレイスのヴルーム(Vroom)と連携して、テクノロジーに強い若者層への訴求を強化したりしている。「ファースト・シングズ・ファースト(First Things First)」や「コナン・オブライエン(Conan O’Brien)」など、いくつかのポッドキャスト番組やトークショーに投資をおこなったところ、アッパーファネルの評価指標で10%、ローワーファネルの指標で43%の効率アップを達成したという。

「ポッドキャストの成長についてはかなり強気の見通しを持っている」とランガン氏は米DIGIDAYに語っている。「当初こそ、思うように普及しなかったが、ここ数年でオーディエンスが一気に増えた」。

オーシャンメディアでメディア投資の責任者を務めるジャレッド・レイク氏によると、ブランドは「リスナーがポッドキャストの番組に寄せる強い思い入れ」に注目しているという。ほかのチャネルよりも広告が少ないことにもリスナーは気づいていると同氏は指摘する。さらに、ほかの広告フォーマットと比べて制作上の柔軟性が高い点も、広告主が期待するところだ。

「現在の広告出稿数から考えて、リスナーの愛着心を有効に活用する機会はまだ十分に残されている」とレイク氏は話す。「30秒の広告枠に縛られず、さまざまなメッセージやストーリーテリングを試すのに、ポッドキャストは最適の環境だ。広告フォーマットの柔軟性、番組に寄せるリスナーの親近感、その番組のホストが読み上げる広告。これらを組み合わせれば、勝利の方程式ができあがる」。

ポッドキャストのもうひとつの長所は、若者層での利用が進んでいるため、この層への訴求機会が広がるという点だ。トライトンデジタル(Triton Digital)とエディソンリサーチ(Edison Research)が2022年3月におこなった調査によると、米国の10代および成人のあいだで一番人気のデジタルオーディオサービスはSpotifyで、12歳以上のデジタルオーディオリスナーの35%がSpotifyを利用していた。同様に、Spotifyでは、2022年の第1四半期に、Z世代のポッドキャスト平均聴取率が前年比約40%増加した。

いかにその価値を確立するか

エージェンシーやブランドを顧客としてモバイル広告を制作するアドルディオ(Adludio)の調べによると、今年はデジタルオーディオの広告収入のうち、4分の1をポッドキャストが占める見込みという。その反面、同社のポール・コギンスCEOは、若者層へのリーチに効果的だという利点を広告主に認めさせることは、Spotifyのような大手にすら容易でなく、「前途遼遠」だと指摘する。

「ポッドキャストに参入するテクノロジー大手は増える一方だが、YouTubeのような企業がプライバシー意識の高いオーディエンスの信用を固めるには、自社のプラットフォーム内で包括的な広告ソリューションを準備することが先決だろう」。

[原文:Why marketers see audio as a ‘strong format’ worth investing in next year

Antoinette Siu(翻訳:英じゅんこ、編集:分島翔平)

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