音楽と ゲーミング 、ふたつがパートナーシップを結ぶ理由:「ゲーム以外のゲーマーの最大の関心事は音楽だ」

DIGIDAY

マーケティング担当者は、ゲーミングと音楽という2つのエンターテインメント分野が1つのアテンションエコノミーに収斂されてきていることに気づいてきている。そのため、ゲームと音楽ブランドのパートナーシップはここ1年で増加傾向にある。

本物を求めるゲーマーたちに訴求するために、最近のゲームと音楽ブランドとのパートナーシップは、主にオリジナルのブランデッドミュージックとコンテンツを中心にデザインされている。

ミュージシャンとのパートナーシップは「大いに意義がある」

ミュージシャンたちが仮想環境内での仕事に違和感を感じないようになるにつれて、ゲーミング企業と仕事をすることへの関心がミュージシャンの間で高まっている。ザ・デファイアント・コレクティブ(The Defiant Collective)の文化ブランド・パートナーシップ責任者で、UTAの元エージェントでもあるマーヴィン・リセンデ氏は、「ブームの始まりはおそらくパンデミックが始まったころだと思う」と話す。

「それまでとは違うシナジーを見出そうとする時代になった。ちょうどその頃フォートナイト(Fortnite)とトラビス・スコットのコラボ・コンサートが始まり、『この2つの世界をどう融合させるか?』とみんなが関心を持ち始めた」。

ゲームと音楽を融合させる1つの方法は、オリジナルのブランデッドミュージックやコンテンツを制作することだ。これは、最近発表されたハイパーX(HyperX)と著名なDJでソングライターのアントン”ゼッド”ザスラフスキとのパートナーシップにおいても特筆すべき点だ。ゲーミングの周辺機器ブランドであるハイパーXは、2019年にラッパーのポスト・マローンと契約しているが、ゼッドとのパートナー契約はそれ以来3年ぶりのミュージシャンとのパートナーシップとなる。

ハイパーXのインフルエンサー兼eスポーツ部門の責任者、ダスティン・イリングワース氏は、ゼッドとの契約は複数年にわたるもので「大いに意義があるものだ」と語った。同氏はこの契約の2年目には、ゼッドがハイパーXのオリジナル曲を制作する可能性を示唆した。「エレクトロミュージックとゼッドが非常に人気のあるDJとプロデューサーであり、彼のリスナーのかなりの割合が、PCゲームやよりカジュアルなコンソール、モバイルゲームのプレイヤーであると思われる」。

ミュージシャンは元祖インフルエンサー

ミュージシャンと提携してオリジナル曲を制作することは、ミュージシャンのオーガニックなファン層にアピールするだけでなく、ゲーミング企業のほかのブランドやインフルエンサーとのパートナーシップをサポートするのにも役立つ。これはツンドラ・eスポーツ(Tundra Esports)がリバプールに所属するサッカー選手フィルジル・ファン・ダイクと提携した背景にある戦略の一部と同じ意味を持つ。

ツンドラ・eスポーツは、ラッパーで同チームのアンバサダーであるパリス”Pマネー”ムーア=ウィリアムズに制作してもらったオリジナル曲「アウトプレイド(Outplayed)」を、ダイク選手とのパートナー契約の宣伝としてリリースした。

ハイパーXとゼッドのパートナーシップもそうだが、ツンドラのCEOであるエヴゲニー・ロシュチャプキン氏によると、同社がPマネーをパートナーに選んだのは、ゲームの世界と彼のファン層との間にかなりの重複があると考えたからだ。「ゲーム以外のゲーマーの最大の関心事を見てみると、音楽は常に上位1位か2位になる」と同氏は語る。「ますます多くの音楽アーティストが、自分自身でゲームをしたり、トップタイトル周辺のコンテンツに参加したりしている。そのため、私たちにとって、非常に相性が良い」。

音楽とゲームブランドのパートナー提携におけるオリジナルコンテンツの役割が拡大していることは、ゲーマーが「嘘っぽさ」に敏感であることを反映している。ブランド企業は、過度に企業的であるとか(広告目的で)無理やり言わされている、と思われないような方法でゲーマーにリーチしようと躍起になっており、著名な個人インフルエンサーとの連携を強めている。そして長い歴史のなかで、ミュージシャンという職業は元祖インフルエンサーであった。一部の専門家によると、音楽インフルエンサーがゲームに「移行」するのは、他の分野のインフルエンサーよりもはるかに簡単だという(従来のスポーツ選手も有利だが)。

「ゲームの世界に影響を与えている多くのミュージシャンたちを見ると、彼らは真のゲーマーである。彼らは、一貫して自らが選んだゲームをプレイしている、アスリートも同様だ」とリセンデ氏は述べている。「そのため、彼らにとってはゲームの世界に足を踏み入れることは本物らしさがあり相性が良い。なぜなら、それが彼らがオフの時間にしていることだからだ」。

一体化するゲームと音楽

今のところ、音楽とゲームのクロスオーバーの多くは、前者から後者へという一方向に進んでいるようだ。フォートナイトやロブロックス(Roblox)のようなゲームの世界では、音楽のインフルエンサーやバーチャルコンサートが定番になりつつあるが、音楽シーンにアピールして新たなファンを獲得しようとしているゲーミング企業はほとんどない。

両サイドのマーケターがこの分野に慣れてくれば、ゲームの次のステップは音楽パートナーシップになるだろう。スヌープドッグとフェイズ・クラン(FaZe Clan)によるスーパーボウルコラボからヒントを得るミュージシャンが増えるかもしれない。

「たとえばファッションでは、ゲーミング領域との大きな融合が見られるが、それは両方の分野で起きる双方向的な現象だ」とリセンデ氏は述べている。「一方、ゲームや音楽では、すべてが一方向に向かって動いている。アーティストの世界に入り込む方法を模索しているゲームブランドはそれほど多くない」。

[原文:Why musicians are partnering with gaming companies to produce original songs and content

Alexander Lee(翻訳:塚本 紺、編集:分島翔平)

Source