米リテールブランド、アメリカン・イーグル(American Eagle)はメタバースマーケティングおよび販売戦略を早くから取り入れていたが、アメリカの新学期シーズンとなる今の時期も、バックトゥスクールキャンペーンの一環として続けている。
ロブロックス(Roblox)に狙いを定め、Metaのバーチャルリアリティヘッドセット、メタクエスト2(Meta Quest 2)をイノベーション予算に組み込むことで、メタバースへの関心が高いZ世代の消費者と出会うことが、同社の狙いだ。
「マーケティング予算の約10%を、我々が試し、学び、進化するための資金、イノベーション予算が占めている」と言って、アメリカン・イーグルCMOクレイグ・ブロマーズ氏はメタバースへの投資額に対する問いに答える。「我々の顧客がリーチしようとしている何かを見つけたらすぐさま、それを適切な手法で見定める」。
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ブロマーズ氏によれば、アメリカン・イーグルのロブロックススペースにおけるユニーク訪問者は3000万人に上り、ロブロックスによると、この数字は同スペースにおけるどのリテールブランドのそれも上回っているという。「つまり、我々の顧客がどれほど楽しんでいるのかということがわかる。だからこそ、今後もそこに投資を続けていく」。
Z世代に人気のTikTokやSnapchatも活用
2022年8月前半には、Z世代アーティスト、ブルー・デタイガー氏がアメリカン・イーグルのキャンペーン曲「Vintage(ヴィンテージ)」をロブロックスの同ブランドスペース内で披露した。これもまた、バックトゥスクールキャンペーンの一環としてロブロックスに引き続き投資していくという、同社の姿勢が顕著に現れた一例だ。また、同社はロブロックスを推すだけでなく、一部店舗では、買物客がヘッドセット、メタクエスト2を手に取り、バックトゥスクール広告キャンペーンの舞台裏を見せる没入型360度動画を体験できる場も設けている。
こうしたメタバースマーケティング戦略に加え、TikTokおよびSnapchatへの投資額も増やしていると、ブロマーズ氏は話す。「TikTokとSnapchatは我々の予算のはるか先を行っている」と同氏は言い添え、いずれのプラットフォームもZ世代が日々の時間を費やしている場であり、だからこそ同世代を惹きつける場として利用するのは理に適っていると話す。したがって、「Metaのプラットフォーム、つまりFacebookとインスタグラムへの予算については、多少の引き締めも考えている」。
アメリカン・イーグルのメタバースマーケティング投資額、広告予算の内訳ともに、ブロマーズ氏が具体的な数字を明かさなかったため、定かではない。ただ、アナリティクス企業、パスマティックス(Pathmatics)のデータによれば、アメリカン・イーグルは2022年これまでに380万ドル(約4億9400万円)を広告に費やしている。2021年の同社広告費は760万ドル(約9億8800万円)だった。
重要なのは、人々とその人々がいる場で出会うこと
メタバースといった新分野への投資は、アメリカン・イーグルにとって理に適った行動であり、出会うべきオーディエンスと、そのオーディエンスがいる場で出会っていると、アナリストらは分析している。
たとえばそのひとりグロースストラテジーコンサルティング企業、プロフェット(Prophet)のパートナーで、テクノロジー、メディア、エンターテインメントプラクティシズ部門トップ、ユーニス・シン氏は、ターゲットオーディエンスを捕まえるには、こうした姿勢はアメリカン・イーグルにとって合理的なものであり、それにより「ブランドアウェアネスだけでなく、それら消費者とのあいだにブランドレレバンスも構築できる」と指摘する。
コンサルティング会社、ランドー&フィッチ(Landor & Fitch)のエクゼクティブクリエイティブディレクター、MB氏も同様の見方をする。「いまやどのブランドにも、カルチャーのなかにレレバンスを有し、人々とその人々がいる場で出会うことは欠かせない。Z世代は過去のどの世代よりもデジタルネイティブだ。だからこそ、彼らが日々の大半を過ごしている場に顔を出すことは理に適っており、実際そうした努力はまもなく、ごく当たり前のものになるだろう」。
[原文:American Eagle taps Roblox, Meta Quest 2 to get in front of Gen Z shoppers]
Kristina Monllos(翻訳:SI Japan、編集:黒田千聖)