カリフォルニア生まれの エスプリ 、米国市場に復帰へ:NYにクリエイティブ本部を設置

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欧州とアジアで何年もかけてビジネスを構築してきたエスプリ(Esprit)が、北米に復帰しようとしている。

ファッションブランドであるエスプリは、米国へのカムバック計画の一環として、今年初めにニューヨーク市で新しいクリエイティブ本部の賃貸契約を結んだ。このスペースは4万平方フィート(約3720平方メートル)近くの広さがあり、2フロアを占め、同ブランドのグローバルなデザイン、ブランディング、クリエイティブ、マーケティングのためのオフィスが入る予定だ。これまでクリエイティブオフィスはドイツにあったと、同社は米モダンリテールに語った。約120人の従業員は今年末までに新しいセンターに移動する。エスプリの事業本社は香港のままで、同社によれば「イノベーションとコラボレーションで知られるグローバルなブランドという構想を強化する」。

真の米国ブランドとして再出発

エスプリは1960年代にカリフォルニアで創設されたが、この10年ほどは米国でプレゼンスを発揮できていなかった。1980年代から1990年代にかけて、カルト的人気のファッションブランドであったが、その勢いを維持するのに苦労し、2011年に北米から正式に撤退した。その数十年前の1970年代に、香港とドイツに進出していた。現在は、スウェットシャツや、ストライプシャツ、3本の横棒からなる「E」ロゴで知られており、80年代や90年代のファッションへの懐古の流れが強まるなか、自社を真のアメリカのブランドとして再確立することを望んでいる。

その計画の一部として、同社は昨秋に米国に復帰し、ロサンゼルスにポップアップ店舗を開設した。現在、ニューヨーク市に別のポップアップ店舗があり、今年後半には両方の都市に旗艦店舗を開設するとともに、マイアミ、バンクーバー、トロントにも店舗を開設する予定だ。

約1年半前、エスプリのCEOを務めるウィリアム・パク氏は、ブランドを復活させるために自社の再編成を開始したと、米モダンリテールに語った。そのとき同氏は、「当社はエスプリが何を売っているのかを探ることにしたが、どの都市や国に行っても、誰もが異なる回答を持っていた」と述べた。オーストラリアの人々は、エスプリがオーストラリアのブランドだと考え、欧州の人々は欧州のブランドだと考えていたと、同氏は説明した。「当社は、世界のどこでも、従業員、パートナー、ベンダー、メディア、顧客を問わず、エスプリとは何なのかを明確にしたいと考えた。そして、昔からそうであったように、エスプリはアメリカのブランドであると決めた」。

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優れたファッションのセンスが集結する都市

同社が創設されたのは西海岸だが、同社はクリエイティブ本社を東海岸に移すことを望んだ。「ニューヨークは世界のファッションの中心地であり、ブランドにとってはるかに有益となる」とパク氏は述べている。「また、米国だけでなく全世界のハブでもある。多くの才能、多くのエネルギー、シナジー、そして優れたファッションのセンスが集結している」。

さらに、「エスプリ固有のエネルギーやブランドの表現は、ニューヨークの人々が持つ『ここで成功するために来ている』という考えとよく一致している」と、同社で新たに任命された最高ブランド責任者であるアナ・アンジェリック氏は米モダンリテールに語った。「ロサンゼルスの美学は、非常にくつろいだ、サーファー的なものだ。エスプリは過去も現在もこのような雰囲気のブランドではない。ニューヨークのほうがブランドの遺伝子や原点とはるかに一致している」。

NYC.govによれば、米国内で、ニューヨーク市は、ほかのどの都市よりも多くのファッションデザイナーやファッション小売業者の本社が存在する。また、世界最大級のファッションウィークのひとつが年2回開催され、国内でもっともよく知られているファッションデザイン学校3校がある。

アディダス(Adidas)、アメリカンイーグルアウトフィッターズ(American Eagle Outfitters)、エクスプレス(Express)でブランドマーケティングの役職を担ってきたクリスティーナ・アンジェリ氏は、「あの頃は、ファッションの分野でキャリアをはじめるならニューヨークにいることが絶対だった」「すべてがニューヨークだった」「それから、デジタルとインターネットの時代になり、ニューヨークの重要性は減少した。どこでもファッションを行えるようになったためだ。ファッションはよりユニバーサルになり、どこからでも着想を得られるようになった」と述べている。

エスプリについて、「ビジネスの観点からはニューヨークに拠点を置くことに意義がある。大手のファッションブランドのほとんどは伝統的にニューヨークを拠点としており、多くの才能が集結し、欧州と調整を行う時間や、製造とのつながりを考えても最適の選択肢だ」と、同氏は述べている。

プレミアムなポジショニング

しかし現在では、ニューヨークへの移転が必須というわけではないと、同氏は強調している。「世界は変わった。10億ドル(約1340億円)規模の事業を自宅の地下室ではじめることもできる」。また、人々はパンデミックのあいだに、いくつものタイムゾーンにまたがって働くことに慣れた。「現在では分散したチームが一般的になった」。

エスプリは、米国市場を理解するためにリソースを注ぎ込んだと、同社の経営幹部は語る。まず、同社は消費者の「嗜好や行動、ショッピングの習慣、特定の市場の力学」をより適切に把握するために調査を行ったと、アンジェリック氏は米モダンリテールに語った。同社の再立ち上げの準備として、生地の品質の調整、衣服のフィット感の見直し、価格の変更も行った。同社は、店舗、eコマース、屋外広告でより一貫性を持たせるため、キャンペーン画像を撮り直した。また、トレンドを追いかけるよりもヒーロー商品と基礎商品に集中することを決定した。

突き詰めていくと、エスプリの戦略についていえば、「当社の決断は、プレミアムなポジショニングでアジアと米国の市場に参入し、この分野におけるジェイクルー(J.Crews)やバナナリパブリック(Banana Republics)が残したホワイトスペースを確保することだった」と、アンジェリック氏は述べる。「米国でザラ(Zara)に立ち向かっても勝ち目はないだろう。当社はオールドネイビー(Old Navy)になることは望まない。プレミアムブランドによって自社独自のニッチを確保することを望んでいる」。

[原文:Esprit returns to the U.S. with a new global creative headquarters]

Julia Waldow(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Esprit

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