割れた生卵がキーボードの上やオフィスの床、電子レンジの中、椅子の上に散乱している――思わず焦ってしまうこれらの写真に、ツイッターで10万「いいね」を超える大きな反響が寄せられた。
投稿したのは、1932年創業の食品サンプルメーカーいわさき(大阪市)の公式アカウント。散乱した生卵は同社の食品サンプルだったのだ。あまりにもリアルな出来にツイッターでは、「匠の技」「どこに置いても大惨事だ」などと驚きの声が広がっている。
J-CASTニュースは2022年8月30日、製作のこだわりやねらいを、いわさきの広報担当者に取材した。
食品サンプルならではの表現
話題になった割れた生卵の食品サンプルは、特販部の田尻崇さんが「生々しい生卵」というタイトルで製作した作品の一つだ。いわさきの広報担当者は、同作をこう評する。
「卵なら広く外国の方でもわかるポピュラーでシンプルな食材ですし、あっと驚くリアル感、そして食品サンプルならではの表現をどなたにでも楽しんでいただける作品かと思います。落として割れてしまった卵黄表面の飛び散った感じや白身の色の濃いところ薄いところの微妙な色の差はもちろんですが、特に製作担当者のこだわりの『卵の殻』は繊細な薄さや割れた感じ、そして殻の内側の卵殻膜まで見事に再現されています」
広報担当者によれば、田尻さんは「卵の殻を今までにないくらいリアルに作れるかもしれない」再現のアイデアを思いついたことをきっかけに製作したそうだ。
従来の食品サンプルは実物から型を取るが、今回は黄身や白身などの原型を創作。殻の中の薄皮やわずかに残った卵白、殻のひび割れも全て意図的に表現したという。しかし殻の製作は最も苦労したそうで、薄くて繊細な部分の表現に広報担当者も「よく再現したな」と驚く。
「生々しい生卵」は2022年8月18日から31日まで、同社グループが主催したイベント「おいしさのアート展2022」で展示された。
東京ソラマチの会場には「ピサの斜塔」のように積み上げられたピザや、龍になったドラゴンフルーツなど、食品を模したユニークな作品が並ぶ。このような食品サンプルを作るねらいを聞いた。