ブランドは、TikTok戦略の成功の秘訣を解読できる情報通の若い才能を見つけようと奔走しており、そうした若者たちを採用するために直接その発信元へと向かっている。
TikTokとインスタグラムを求人に活用
Z世代に特化した美容ブランドのロッティ・ロンドン(Lottie London)は、この4カ月でTikTokとインスタグラムのリールに広告を出し、3つのマーケティングポジションの人材を採用した。候補者には、TikTokとインスタグラムのDMでポートフォリオを添えて応募するよう求めた。もちろん、カバーレターは不要だ。
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美容業界では大量辞職が続くなか、「多くの人が自分のキャリアを見つめ直し、さまざまな役割や仕事を探している」と、ロッティ・ロンドンのマーケティングディレクター、ノラ・ズカウスカイテ氏は言う。「人々が人生におけるワーク・ライフについてそれぞれが異なる意味を求めていることをふまえ、私たちもそれに沿って考えるようになった。それが採用にどう影響するのか、そして、そのようなコミュニティとどのように対話すればよいのか、検討するようになった」。
ロッティ・ロンドンのソーシャルメディア・アシスタントであるアリシア・コノリー氏は、ある求人動画を見て、ブランドのDMから応募し、今年の初めに採用されている。「従来のジョブシェアリングや求人プロセスから脱却した、とてもクールな方法だ」と、彼女は言う。
コノリー氏とほかのふたりは、ソーシャルメディアマーケティングの担当として採用された。業務の一部には、TikTok用にオフィスでの日常の舞台裏を紹介する動画を撮影することも含まれている。
ブランドはTikTokでの求人により積極的になっている。6月に行われたでは、セラヴィ(CeraVe)のバイスプレジデントおよびグローバルデジタルマーケティング責任者のアダム・コーンブルム氏が、TikTokでのマーケティング職をTikTok上で募集していると語っている。また、ティーンに注力した小売業者パクサン(PacSun)は、店員のバイラルなTikTokコンテンツを見て、本社でのフルタイムのポジションに採用している。
LinkedInを敬遠するZ世代
LinkedIn(リンクトイン)はこれまで、ロッティ・ロンドンが新たな求人情報を発表するための主要なソーシャルプラットフォームだった。しかし「Z世代はLinkedInをより企業的で公式なものとみなし、企業による線引きがあるため、よりお高くとまっていると思うだろう」とズカウスカイテ氏は述べている。「これは世代間の問題だ」。
LinkedInのパロディーはTikTok、Twitter、インスタグラムで急増しており、「LinkedInのインフルエンサーはこんな感じ」といった投稿は、プラットフォーム上の企業のハッスル文化のプロパガンダをもっともバカバカしい形で示すものとしてバイラルになっている。TikTokerのパシャ・グロズドブ氏(フォロワー数37万9000人)は、そのバカバカしいLinkedInのパロディ投稿で数百万ビューを獲得している。8月中旬、ハイパーソーシャル(Hyper Social)のCEOブレイデン・ウォレイク氏が涙ぐみながら従業員を解雇したことについて語ったLinkedInの動画は、無神経なだけでなく、信じられないほど恥ずかしいということで、オンラインでは広く嘲笑されている。ベスト・オブ・LinkedIn(Best of LinkedIn)というアカウントに至っては、思わず笑ってしまうLinkedInの投稿をキュレーションして、インスタグラムで2万6000人のフォロワーを獲得している。
若い人材の採用では視覚的にストーリーを伝える
TikTokはすでに次の大きな求人プラットフォームとしての可能性を認識しており、1年前に#TikTokResumesのパイロットプログラムをローンチしている。
ロッティ・ロンドンはLinkedInを捨ててはおらず、求人情報も掲載しているが、TikTokは「もっとも多くの応募者を引き寄せる」とズカウスカイテ氏は話す。
「特にZ世代のオーディエンスやZ世代の従業員について考えた場合、視覚的にストーリーを伝える方がはるかに強力だ」と、彼女は若い人材の採用にその投稿がより効果的だった理由を説明した。また、リクルート活動で競争力を保つために、ブランドは既成概念にとらわれずに考えるべきだという。
「これは、業界全体で起こさなくてはならない変化だ」と、彼女は語る。
今のところ、同ブランドではTikTokでの求人をクリエイティブな職種に限定しており、財務やサプライチェーンマネージャーなど他の役職については、依然としてLinkedInに頼っている。将来的には、より多くの採用にTikTokを活用する計画だ。また、求人戦略の一環となるのは、エントリーレベルの仕事だけではない。
同ブランドがTikTokで経営幹部を探すことを行う可能性があるかという質問に対して、ズカウスカイテ氏は「クリエイティブディレクターの場合は、可能性がある」と回答している。
[原文:Move over, LinkedIn: TikTok and Instagram are hot hiring tools for Gen-Z talent]
LIZ FLORA(翻訳:Maya Kishida 編集:猿渡さとみ)