新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックで大きな打撃を受けた旅行業界とエンターテインメント業界が、3年近くを経て回復の兆しを見せ始めた。一方、ロックダウンが始まってから早々に上向きとなったほかの業界では、企業が景気後退の可能性を憂慮するなかで広告費の伸びが鈍化している。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックで大きな打撃を受けた旅行業界とエンターテインメント業界が、3年近くを経て回復の兆しを見せ始めた。一方、ロックダウンが始まってから早々に上向きとなったほかの業界では、企業が景気後退の可能性を憂慮するなかで広告費の伸びが鈍化している。
情報プラットフォームのメディアレーダー(MediaRadar)の新しい分析によれば、2022年上半期(1月~6月)には、旅行とエンターテインメントの両方の分野で広告支出が過去最高レベルに達する一方、不動産、家庭用品、ペット用品の広告投資が昨年より落ち込んでいることが明らかになった。ホームオフィス家具やペット用品の分野でこの2年間に見られた消費者の買い物傾向は、市場の変化に伴って衰え始めている。
「パンデミックが始まった頃と同じように、広告投資に変化が起こっている。金利と燃料費の上昇、そして高インフレが不況への不安を高めているのは間違いない」と、メディアレーダーのCEO兼共同創業者、トッド・クリゼルマン氏はいう。
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打撃からの回復と特需の終了
2019年の支出データは得られなかったが、2020年上半期の広告支出レベルはあらゆる分野で低下していた。しかし今年は、特にメディアとエンターテインメント、およびテクノロジーの分野で、パンデミック発生後の数カ月と比べて投資が大きく増加している。一方、家庭用品やレストランの分野では減少が見られるが、これはおそらく2021年の特需に対する反動で、2020年に近い支出レベルに戻りつつあるというのが実態だ。
メディアレーダーの予測では、エンターテインメント分野などでの増加傾向は下半期にも続きそうだ。このところ旅行費用やガソリン代が急騰しているが、旅行であれ映画であれ、人々が再び外出をためらうようなことはないだろうと、クリゼルマン氏はいう。
「混雑は激しくなり、空港には長蛇の列ができ、レンタカー代や航空券はかつてないほど値上がりしているが、それでも旅行需要は記録的に伸びている。したがって、旅行業界が2022年下半期に落ち込むとはまったく予想していない。今後半年間または1年間で広告費がさらに回復する業界のひとつになる可能性もある」と、クリゼルマン氏は説明する。
勝者:上昇基調のエンターテインメント、テクノロジー、旅行
- メディアとエンターテインメントの分野では、広告投資が極めて大きな増加を見せており、2021年上半期の58億ドル(約7700億円)から2022年上半期には109億ドル(約1兆4500億円)にまで増加している。前年同期比で2倍近いこの伸びは、おもにストリーミング企業によってけん引されたものだと、メディアレーダーは述べている。また、映画のプロモーションも伸びており、今年の投資額はすでに12億ドル(約1600億円)に上っている。
- テクノロジー分野の広告費は、2021年上半期の50億ドル(約6650億円)から今年の上半期には67億ドル(約8900億円)に上昇し、前年同期比34%の増加となった。特に伸びたのは、半導体チップとモバイル、それに企業向けソフトウェアだ。
- 旅行分野の広告費は、2021年上半期の12億ドル(約1600億円)から2022年上半期には21億ドル(約2790億円)に増え、前年同期比で83%増加した。この分野の投資をけん引したのは、大手航空会社とクルーズ会社、それに旅行代理店だ。
敗者:落ち込みが見られる家具、不動産、外食
- 金融と不動産では、広告投資が2021年6月の9億200万ドル(約1200億円)から2022年6月には7億6900万ドル(約1020億円)に減少し、直近1カ月で最も大きな落ち込みを見せた。かつては、人々が都市部周辺で住宅を購入したりリモートワーク用の家具や備品を注文したりするなど需要が旺盛だったが、現在この手の需要は冷え込んでいる。
- 家具の広告費は、2021年6月の4億9800万ドル(約660億円)から今年6月には4億9400万ドル(約655億円)へとやや減少した。レストランとバーの広告費は、昨年6月の3億8100万ドル(約505億円)から今年6月には2億8300万ドル(約375億円)へと、前年同期比25%の大幅な減少を見せている。
Antoinette Siu(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:黒田千聖)
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