暑さで電気代がヤバい!! 夏の節電とピークシフトの方法を考える。(その1) 冬の倍!? 冷蔵庫の電気代を減らす方法はあるか?

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外気温計が39.4℃……暑い

 異例の6月下旬の梅雨明け、加えて猛暑により電力需給ひっ迫注意報が出たときは「いったい今年の夏はどうなるか」と心配したが、その後は梅雨空が戻って暑さも一段落。関東地方は7月下旬から暑くなり、8月はいよいよ夏本番だ。気になる電力需給ひっ迫注意報や電気料金の値上げ、どうする……節電。

電力需給ひっ迫注意報

 6月26日、政府は翌6月27日の15~18時の時間帯に、東京電力管内で「需給ひっ迫注意報」を出した。その後も28日15~18時、29日15~20時。30日15~18時と4日連続で発令され、「無理のない範囲での節電」が求められた。

 「需給ひっ迫注意報」は、翌日の電力需給が厳しい場合に出される注意報で、安定供給の予備率3~5%で「需給ひっ迫注意報」、3%を下回ると「需給ひっ迫警報」が発令される。休止していた火力発電所の再稼働により予備率は1%ほど改善するものの、天候により電力の需給関係は厳しい状況が続きそうだ。

東京電力のでんき予報。8月1日18時時点で8月2日の16~17時は95%

電気料金の値上げ

 1年半ほど前、筆者は2020年の年末年始にエアコン、PC、NAS、電気ポット、温水洗浄便座、電子レンジ、炊飯器などの電力を計測し記事にした(関連記事参照:その1その2その3その4)。「これから電気代が上がる」と想定した記事で、予想どおり電気代の上昇が続いている。2020年1月から2022年8月までの推移をグラフにしてみた。

 グラフの青線は東京電力で平均モデル(従量電灯B・30A契約、使用電力量:260kWh、口座振替)の電気料金、赤線はテレワークなどで電力量が増えている人を想定した360kWhの電気料金。260kWhの人は約6300円が約9100円(35円/1kWh)、360kWhの人は約9000円が約1万2900円(35.8円/1kWh)と40%を超える値上げだ。“家計の値上げ許容度”が高まっていない人はかなり痛い。

 電気料金が上がる要因は①エネルギーコスト(石油、LNG)の上昇、②円安、③原発の稼働停止などと言われ、①と②はすぐに改善される気配はなく今後ますます加速する懸念があり、③の原発再稼働がなければ近々に昨年1月比1.5倍、来年には2倍になる可能性がある。家計も大変、企業もコスト競争力が大幅に低下しそうだ。

2種類の節電

 一般的に家庭における節電は1か月、1年という期間で消費電力量をおさえ、支払う電気料金を下げること=節約だ。一方、電力需給ひっ迫注意報の15~18時、15~20時の時間帯に「無理のない範囲での節電」の意味合いはピークシフトだ。特に電力需給の厳しい16~17時の時間帯の消費電力をおさえたい。

 利用時間が短い電気製品のピークシフトは分かりやすい。その時間帯にアイロン掛けはしない。ドライヤーやトースターは使わない。炊飯器、電気ポットの使用はその時間帯の前後にズラす。ノートPCはバッテリー駆動にする。といった対策が考えられる。これらの節電はピークシフトに貢献するが、電気料金は下がらない。

 「電力需給ひっ迫注意報」「電気料金の値上げ」を考慮すると、どちらの節電も重要と考えられるので、この記事では2種類の節電方法を検討してみよう。

夏の節電の主役はエアコンと冷蔵庫

 地域差はあるが、電力需給ひっ迫注意報が発令された東京電力管内で夏の節電の主役(悪役?)の1つはエアコンだ。エアコンは寒冷地以外では夏も冬も消費電力が大きく、稼働時間は数時間~十数時間と長い。冬は石油ストーブ、ガスストーブなど消費電力を増やさず室温を上げられる暖房器具があるが、夏の室温を下げるものはほぼエアコン一択となる。使い方によって節約もピークシフトもできる。

 夏の節電のもう1つの主役は冷蔵庫だ。冷蔵庫は365日、24時間稼働し、室温の高い夏の消費電力は、冬の倍となる。エアコンほど消費電力が大きいわけではないが、電源を切ることはできず、節電と言われても対応に苦慮する人がいそうだ。今回は冷蔵庫、次回はエアコン、2回に分けて夏の節電方法を考えてみたい。

冷蔵庫の節電

 結論だけ知りたいという人に冷蔵庫の節電方法を先にお知らせしよう。

1.常温保存可能な食材は、夜遅くに冷蔵庫に入れる(ピークシフト)

 冷蔵庫に食材などを入れると消費電力は急増する。買い物から戻ったら、冷凍・冷蔵食品はすぐに冷蔵庫に入れ、常温のものは遅い時間や寝る前に入れるとピークシフトができる。

2.設置環境の見直し(節約)

 側面など冷蔵庫の放熱部が常に熱い場合は設置環境を見直す。側面の隙間が狭かったり、側面に色々貼り付けて放熱を妨げている場合は設置方法を見直そう。

3.キッチン(冷蔵庫設置場所)の室温を下げる(節約)

 冷蔵庫自身の放熱もあり、冷蔵庫回りの温度は上がりやすい。換気に気を付け室温を下げると冷蔵庫の消費電力は下がる。

冷蔵庫の夏と冬

 筆者は昨年5月上旬から今年7月上旬まで冷蔵庫の消費電力量を計測した。そのデータから1年間+1か月の冷蔵庫の消費電力量を見てみよう。グラフは昨年6月1日から今年6月末までの消費電力量だ。日ごとの電力量は上下するが年間で見ると夏は消費電力量が多く、冬は少ないことが分かる。

 このデータを各月ごとにその日数で割って、月ごとの1日平均のグラフにしてみた。電力量のピークは8月で1日1367Wh、ボトムは1月で1日671Wh。8月は1月のほぼ倍となった。年間の平均は1日1056Whとなった。電力量は冷蔵庫のサイズ、機種(性能)、設置環境で異なるので傾向だけ参考にしていただきたい。

 一目見て分かるように冷蔵庫の消費電力量(電気料金)は室温に左右される。外気温→室温が高くなると消費電力量が増えるので夏は電気料金を押し上げる。グラフの左右の端は昨年6月と今年6月。昨年6月の1139Whに対し今年6月は1231Whと増加している。

 さらに、6月の毎日の消費電力量を比べてみると今年は6月下旬の暑さで昨年より消費電力量が増加していることが分かる。

 少し細かく冷蔵庫の動きを見てみよう。次の2つのグラフは8月と1月の24時間の消費電力だ。グラフは1分ごとの棒グラフで、一定時間ごとにオンとオフを繰り返している。オン=連続稼働時間が長くなると棒が太くなる。8月(夏)は太くなり、稼働時間の短い1月(冬)は細くなる。どちらもグッと消費電力が増える時間帯がある。これについては後述する。

8月の1分ごとの消費電力量

1月の1分ごとの消費電力量

冷蔵庫の動作を理解する

 冷蔵庫の消費電力の計測に加え、複数の温度センサーを設置して稼働中の動作を確認してみた。最初のグラフは2日間、48時間の1分ごとのデータ。塗りつぶしたように見える黄色の棒グラフ(右軸)が消費電力量、赤線は冷蔵庫側面(放熱部分の温度)、緑線が室温(冷蔵庫の前面)、黒線は冷蔵庫内(ドア内側)の温度(左軸)だ。

手で触って熱くなる部分にセンサーを取り付けた。室温の影響を避けるためセンサーを断熱材で覆っている

庫内温度はセンサーをドア内側に設置した

 庫内の温度(黒線)はドアの内側(玉子入れ付近)なので、ドアを開けると室温の影響で数値が跳ね上がる。1分ごとの計測なので短時間の開閉はデータに残らない可能性もある。そもそも冷蔵庫自体の温度センサーは野菜室、冷凍庫、冷蔵室に設置されていると思われ、今回設置したセンサーと位置も離れているので動作の参考程度に見ていただきたい。

 48時間のグラフから動作の特徴的な3つの部分を抜き出してみよう。A:通常動作、B:霜取り、C:食材投入の3つだ。

【A:通常動作】

 最初は通常動作だ。抜き出したのは1日目の2~8時。室温は25~26℃。冷蔵庫のドアを開けた形跡はない。

①2時28分に庫内温度が12℃(黒線)に上昇し冷却(黄棒)がスタート(消費電力が増加)。同時に放熱部の温度(赤線)が上昇する。
②3時2分に庫内温度が3℃まで下がり冷却が少し弱くなると庫内温度は急速に上昇する。
③3時10分には冷却停止。放熱部の温度は急速に下がる。庫内温度はゆるやかに上昇。
④3時38分、庫内温度が12℃になると冷却を再開。室温まで下がった放熱部の温度が急上昇する。
⑤3時39分、10分ほど冷却が行われ庫内温度は横ばい、放熱部が少し温度が上昇する。この後は動作①に戻る。

 ⑤の短時間の冷却動作の意味は不明だが、基本は庫内温度が上がると冷却し、下がると停止を繰り返す。冬に室温が下がれば冷却稼働時間が短く停止時間が長くなり、夏に室温が上がれば冷却(電力消費)時間が長くなる。

【B:霜取り】

 2つ目は霜取り動作だ。抜き出したのは1日目の11時30分~15時。

①11時45分から通常動作で冷却(黄棒)が始まり放熱部の温度(赤線)が上昇する。
②12時25分から消費電力が急上昇する。通常動作では放熱部の温度が上がるが放熱部の温度が下がり、庫内温度も上昇する。この真逆な動作は霜取り動作だと考えられ、放熱部(冷蔵庫側面)は室温よりも低くなる。
③13時12分に霜取り動作が終了すると一瞬消費電力が下がり、直後にリカバリーの冷却が再開する。通常動作よりも高い消費電力で冷却が始まり放熱部の温度が急上昇、庫内温度も急速に下がる。
④13時58分、庫内温度が3℃に下がったところで通常動作に戻る。

【C:食材投入】

 最後は食材投入後の動作だ。抜き出したのは1日目の14時30分~翌日の0時30分。

①14時30分から15時30分までは通常動作。15時30分に買ってきた食材を冷蔵庫に入れる。ドアを開けた時間が長いため庫内温度(黒線)が跳ね上がる。
②食材を入れたため冷却が17時55分まで長時間継続。放熱部(赤線)の温度も長時間高温が続き18時15分に室温に戻る。
③庫内温度(黒線)は通常動作と異なり3℃までは下がらず高止まりが続き、23時前後の霜取り動作が終了した後、翌日0時20分頃に4℃まで下がる。食材投入の影響は大きく通常動作に戻るまで9時間ほどを要した。

冷蔵庫の節約とピークシフト

 冷蔵庫は庫内の熱を室内に放出する。その熱が室温を上げるとさらに冷蔵庫は放熱する。夏の冷蔵庫は負のスパイラルだ。ただ、1日50円程度の電気料金で冷たい飲料やアイスクリームが取り出せる幸せ度が高い家電製品でもある。

 まずはピークシフト。「電力需給ひっ迫注意報」が発令されたときに冷蔵庫の消費電力をピークシフトさせる方法は、食材を入れるタイミングを調整することだ。買ってきた冷凍・冷蔵食品はすぐに冷蔵庫に入れ、常温のものは電力需給ひっ迫注意報の時間帯を過ぎてから投入する。

 例えば人参、カボチャ、大根、キャベツなど、すぐに野菜室に入れなくて大丈夫な食材は夜遅く、寝る前などに冷蔵庫に入れればピークシフトが可能となる。冷蔵庫の消費電力がもっとも増えるのは霜取り動作だが、これは不定期に実行されるのでピークシフト(コントロール)するのは難しい。高級でインテリジェントな冷蔵庫であれば、深夜に実行されるかもしれない。今後の冷蔵庫の機能として搭載してほしい。

 次は節約。冷蔵庫左右の側面から放熱する機種は壁や食器棚などから離すことで効率よく放熱することができる。冷蔵庫を買い替えるときは設置場所ギリギリの機種を少しスリムな機種に変更すると、10年間の電気料金を節約できるかもしれない。

 冷蔵庫の側面は広くて磁石が使えるため色々貼り付けたくなるが、タオル、エプロン、ミトン、紙類(ゴミ出し日、カレンダー、行事など)で覆ってしまうと放熱しにくくなるので控え目にしたい。放熱部に触るといつも熱い場合は設置状況を見直そう。

 次に電気料金を節約する方法はキッチンの室温を下げること。といっても外気温が35℃を超える日に留守中の室温を下げるのは難しい。地域や間取り、生活スタイルによって異なるので可能性を探っていただきたい。運よく小窓などを開けて熱気を逃がすことができればコストを掛けずに節約ができる。

 猛暑となった6月下旬、さいたま市でアパート暮らしの息子からLINEが届いた。

 1人暮らしなら換気扇で熱気を排出するのが1つの方法だ。換気扇はキッチン、浴室、トイレ、住居によっては24時間換気装置などがある。トイレの換気扇や24時間換気装置の消費電力は数ワットで1か月24時間稼働させても電気料金は100円以下。浴室、キッチンの換気扇は消費電力が増え数百円となる。

 キッチンの室温を下げるために換気扇を稼働させたら、冷蔵庫の節電(節約)より換気扇の電気料金の増加が上回ることもあるので万人におすすめとは言えない。

 冷蔵庫まわり、キッチンだけ熱気がこもっている場合は送風・換気など対策をしたいが、家中が暑い場合は効果的な方法は見あたらない。

 世の中では冷蔵室に入れる食材は少なめ、冷凍庫はすき間なく食材を入れると節電になると言われている。なんとなくそうかなぁと思いつつ、筆者は検証したことがないし、検証したデータを見たこともないので、本当か否か分からない。特に冷凍庫の消費電力が「すき間あり」を「すき間なし」にすると消費電力が減る場合、「空っぽ」にすると消費電力が増える? 減る? どっち?? と納得しがたい印象だ。節電効果は不明だが、冷蔵庫に缶ビールを大量に入れている人は、毎日必用本数だけ冷やすようにすると節電になるかもしれない。

 次回はエアコンの節電についてお伝えしたい。

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