キリンの群れにはこれまで知られていなかった「複雑な女性社会」があることが判明

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アフリカの大地を悠然と歩くキリンはこれまで、動物学者たちの間で「社会的な動物ではない」と考えられてきました。しかし、キリンの群れに関する膨大なデータを分析した研究により、キリンたちはメス同士の助け合いを中心とする極めて複雑な関係を築いていたことが新たに分かりました。

A review of the social behaviour of the giraffe Giraffa camelopardalis: a misunderstood but socially complex species – Muller – – Mammal Review – Wiley Online Library
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/mam.12268

Giraffes are as socially compl | EurekAlert! Science News Releases
https://www.eurekalert.org/news-releases/924159

Surprise! Turns Out Giraffes Have Highly Complex Social Lives Akin to Elephants
https://www.sciencealert.com/giraffes-have-been-deeply-misunderstood-they-re-actually-as-complexly-social-as-elephants

キリンは群れを形成することが知られている一方で、個体同士は次々と仲間を変えているように見えることから、これまでは「幼い子キリンと母親の親子関係以外には、社会的な結びつきはない」と考えられていました。例えば、アフリカの哺乳類の行動について論じた1991年の文献は、キリンについて「物理的にも社会的もお互いに距離を置いており、仲間と継続的な関わりを持たず、最もおざなりな方法でほかの個体と付き合う動物です」と記しています。

by Zoe Muller

2000年代になると、デジタルカメラの普及や洗練された個体識別技術の登場などにより、「キリンの群れにはランダムな付き合い以上のパターンがあるのではないか」と指摘されるようになったとのこと。しかし、キリンの群れを長期的に追跡した研究データがほとんどないことから、一体どのような社会が形作られているのかは不明でした。

そこで、イギリス・ブリストル大学の生物学者であるゾーイ・ミュラー氏とスティーブン・ハリス氏の研究チームは、キリンの群れを調査対象にした404件の論文を横断的に調べる研究を実施しました。

その結果、キリンの個体同士のグループは、成熟したメス同士のグループであることが多く、中には6年以上も行動を共にした事例や、母親とその子どもなど15年以上にわたり関係を続けた事例があったことが分かりました。こうしたキリンのグループは、最大で3世代にわたる血縁関係で構成されることがあり、大人のメスが他の母キリンの子どもの面倒を見たり、ほかの個体の子どもの死を一緒に悲しんだりする様子が観察されたとのことです。

さらに、ミュラー氏らがキリンの年齢に焦点を当てて分析をしたところ、キリンのメスは繁殖ができなくなってからも10年以上にわたって群れに関与しつづけることが確かめられました。キリンの寿命は約30年であるため、キリンのメスは一生の約30%を閉経後の状態で過ごすことになります。これは、子育てを終えたメスの個体が複雑な社会で重要な役割を持っているゾウの23%やシャチの35%に匹敵する割合でした。

by Zoe Muller

人間を含む一部の哺乳類では、子育てを終えたメスが次の世代の子育てを助ける様子が観察されており、これは「おばあさん仮説」として知られています。ミュラー氏らは、キリンのメスたちも母系社会の中で協力し合って子育てを行い、子孫の繁栄を助けているのではないかと考えています。

ミュラー氏はこの結果について、「アフリカの動物の中でも、特に目立つ象徴的な存在であるキリンが、よく理解されないままだったことは注目に値します。今回の研究で、キリンが複雑で協力的な社会システムを持つ母系社会の中で生きているということが分かりました。これが、キリンの生態や保護の必要性についての理解が深まるきっかけとなることを願っています」と述べました。

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