「外出先から自宅のPCをMagic Packetで遠隔起動させたい」――急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記(108)【急遽テレワーク導入!の顛末記】

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LANネットワーク外からのWoLには、Windowsだけでなく、ルーターの設定変更も必要になる

 緊急事態宣言などが解除されたことで、会社で仕事をしたり、出張に行ったりする機会も増えた。これまでは、会社のPCを自宅から操作していたが、今後は逆方向のリモート操作が必要になるかもしれない。

……この記事を書いている時点で、東京都でまん延防止等重点措置が解除されてから130日が過ぎた。

 私が勤めている新宿にある中小企業では現在、各スタッフが可能な範囲でリモートによる業務を行っている。その中で、今回は自宅のPCなどの設定を変更して、WoL(Wake On LAN)で外出先から遠隔起動させてみた。

【今回のハイライト】

Win11でファイルの共有設定を実施

さらに、WoLについての設定も

LANネットワーク外からMagic Packet送信

7月25日(月):OSをWindows 11にアップデート、ファイル共有の設定に変化は?

 PCの起動時にメッセージが表示されるなど、「Windows 11にアップデートしませんか?」というマイクロソフトからのプレッシャーが日に日に増しているので、自宅にあるマシンの1台をアップデートすることにした。その操作自体は無事に終わったのだが、ファイルをLAN経由でコピーしようとしたところ、ネットワーク設定の不具合からか上手くいかない。

 Windowsのネットワーク設定を確認しようとしたのだが、アップデートによってインターフェイスが更新されていて、少し操作に戸惑ってしまった。結論としては「ネットワーク プロファイル」を「プライベート」に変更すればよかったのだが、

  • Windows 10……「設定」→「ネットワークとインターネット」→「接続プロパティの変更」
  • Windows 11……「設定」→「ネットワークとインターネット」→「イーサネット」

 と、設定画面へのアクセス方法が微妙に変わっている。ただ、各フォルダの共有設定の方法などはWindows 10と同じだったので、ファイルの共有に必要な一連の操作については、OSをアップデートしてもあまり迷うことはなさそうだ。

「イーサネット」画面では、ネットワーク プロファイルやIPアドレスの設定などが行える

共有の設定はWindows 10と同様に、フォルダのプロパティ画面から変更できた

7月27日(水):ルーターでWoL用にポートマッピングを設定

 以前は同じLANネットワーク内にあるPCの電源を遠隔操作していたが、今回は外出先からWoLを使いたいので、ルーターのポートマッピング機能を利用することにする。

 ポートマッピングとは特定のポート番号を、指定のIPアドレスに紐づける機能。WoLではインターネット経由で「Magic Packet」という特殊なデータを送信するが、それを特定のポート番号宛に送信。ルーターがそれを認識することで、指定のIPアドレスを割り当てたPCにデータを転送することができる。

 自宅ではKDDIから提供された「Aterm BL190HW」というルーターを利用しているので、ブラウザ上で設定画面を開き、「ポートマッピング」の設定画面を表示。プロトコルとポート番号を指定して、新たなエントリを追加しておく。これで、WoLに必要な準備はすべて整った。

ルーターの設定画面で、ポートマッピングに関する設定を行う。今回は昨日DHCP固定割り当て機能で割り当てたIPアドレスを、指定のポートに紐づけた

7月28日(木):Magic Packetを送信! ……してみたのだが

 今日はオフィスに出勤することになったので、さっそくWoLのテストを行ってみた。

 なお、Magic Packetの送信には色々なサービスやツールが利用できるが、今回は「Magic Packet送信」というオンラインツールを使ってみることに。このツールではプロトコルを「UDP」に、ポートを「2304」にしてポートマッピングを行う必要があるので、先のルーターの設定もこれに合わせて行っておいた。

 「Magic Packet送信」は非常にシンプルなツールで、必要になるのは自宅の「グローバルIPアドレス」と、操作するPCの「MACアドレス」だけでよい。このうち、グローバルIPアドレスは「CMAN」などのオンラインサービスで確認できるので、表示されたアドレスを入力。一方、MACアドレスは、共有設定の時にも利用した「イーサネット」画面で確認できるので、こちらもボックスに入力すれば準備は完了だ。

 なお、現在自宅ではインターネット回線に「auひかり ホーム」を利用しているが、グローバルIPアドレスは変動制……とはいえ、ほとんど変わらないようなので、しばらくはこの設定で自宅のPCをWOLで操作できるだろう。

ネットサービスを利用して、グローバルIPアドレスを確認

Windows 11の「設定」にある「イーサネット」で「物理アドレス(MAC)」を確認

「Magic Packet送信」の各ボックスに、グローバルIPアドレスとMACアドレスを入力する

 この状態で「次へ」ボタンをクリックすると、確認画面を経た上でMagic Packetを送信できるのだが……。自宅のPCには、一向に電源が入る気配がない。えっ、なんで?

7月29日(金):WoLできなかった原因を、ルーターの設定に発見!!

 自宅に戻ってからスマホ回線経由でMagic Packetを送ってみたが、やはりPCの電源は入らなかった。そこで、ルーターの設定を見直していたところ、どうやら「パケットフィルタ」機能の設定に問題があったらしい。

 パケットフィルタ機能とは、外部から受信したデータを指定したルールに基づいて破棄、もしくは通過させるというもの。「Aterm BL190HW」には標準でいくつかのエントリ(ルール)が登録されており、指定のパケットを破棄するように指定されていた。

 そこで、プロトコルを「UDP」に、ポートを「2304」に指定したデータを「通過」するエントリを追加したところ、「Magic Packet送信」を利用して自宅のPCを遠隔操作で起動させられるようになった。あとは、「Chrome Remote Desktop」を仕込んで(関連記事参照)おけば、電源の入ったPCを外出先から遠隔操作できるようになるだろう。

パケットフィルタ設定で、プロトコルが「UDP」で、ポート「2304」宛てに届いたデータを通過するように指定する

 ちなみに、「Magic Packet送信」はスマホでも利用できるので、Magic Packetの送信画面をブックマークしておけば、いつでもどこでも自宅のPCの電源をリモート操作できるようになる。

グローバルIPアドレスなどを入力した後、次の画面をお気に入り登録すれば、ワンタップでMagic Packetを送信できるようになる

 ただ、スリープもしくはシャットダウンしてからある程度の時間が過ぎると、Magic Packetを送信してもPCが起動しなくなった。その原因は以前にWoLを利用した時と同じで、どうやらルーターがPCを認識できなくなっていたらしい。

 そこで、ルーターのポートマッピングに関する設定で、IPアドレスの末尾を255に変更。ルーターに接続した全端末にMagic Packetを送信するようにしたところ、ある程度の時間が経過してもPCを遠隔起動できるようになった。ただ、この状態では一度のMagic Packetの送信ですべてのPCが起動してしまうので、WoLで起動するように設定しておくマシンは1台に絞り込んでおく必要があるだろう。

Windows 11の「設定」にある「イーサネット」で「物理アドレス(MAC)」を確認

 これで、スマホやノートPCを持ち歩けば、いつでも自宅のPCにあるデータを取り出せるようになった。セキュリティや運用するファイルの種類などにも気を付けながら、引き続きこの仕組みを運用していきたい。

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