Amazonは、ウォルマートに次いで多くの従業員を擁するアメリカ第2位の雇用者である一方で、反労働組合的なトレーニング動画や組合反対への投票を促す手紙、さらには非合法な方法まで使って労働者の団結阻止に血道を上げている企業でもあります。そんなAmazonから流出した内部資料により、同社は一見すると慈善事業に見える取り組みを通じて、組合運動の弱体化を図っていたことが分かりました。
Leaked memo: Inside Amazon’s plan to “neutralize” powerful unions by hiring ex-inmates and “vulnerable students” – Vox
https://www.vox.com/recode/23282640/leaked-internal-memo-reveals-amazons-anti-union-strategies-teamsters
ニュースメディアのRecodeは2022年7月29日に、Amazonの幹部が5月に作成した反組合戦略についての内部文書を入手したと報じました。Recodeによると、この文書にはAmazonの重要な目標として「Amazon全体のブランド向上」に加えて、「地域の利害関係者や主要な政策立案者との関係を確立すること」が掲げられていたとのこと。
文書を作成したAmazon幹部は、政策立案者らとの関係を深める理由について、「外部の検証者や代弁者との連合を拡大しようとする組合労働者の取り組みを無力化し、Amazonの代弁者や提携組織が南カリフォルニアにおけるAmazonの経済的および社会的影響力を拡大させるための足がかりを提供するため」と説明しています。なお、カリフォルニア州はAmazonが保有する世界最大の物流拠点があり従業員も多いため、Amazonにとって特に重要な場所とのこと。
そして、Amazonが「我々の反対勢力と密接に協力している組織と意図的にパートナーシップを結ぶ」として名指ししていた組織には、元受刑者や犯罪歴のある人の社会復帰を促すことを目的とした団体であるHomeboy IndustriesやDefy Venturesが含まれていました。
これについてRecodeは、「Amazonは求職者に対する大麻などの薬物検査を廃止するなどしてこれらの組織との関係を深め、Amazonが社会復帰を目指す人や社会的に弱い立場にある人を支援していることを宣伝してもらうことで、Amazonの劣悪な労働環境や労働者への待遇の改善を訴える組合の活動を形骸化させる意図がある」との見方を示しています。
Amazonが反組合を念頭に関係を結ぼうとしている組織としては、他にもロサンゼルス統一学校区(LAUSD)が挙げられています。Recodeによると、LAUSDでは子どもがいる家庭の約80%が貧困基準以下で生活しており、高校を卒業する生徒も81%とカリフォルニア州の平均の88%より低いとのこと。
このような恵まれない地域の学生に雇用を提供することは、Amazonの労働運動家らが攻撃材料にしている「Amazonは雇用を増加させていない」「Amazonでは安定した雇用を得られない」との主張に対抗する上で役立つと、Amazonの内部資料には記載されていました。
Amazonが公共的な団体と関係を結ぶ裏に、反組合的な意図が隠されていたことを示す今回の内部文書について、Recodeは「この文書は、Amazonが批判をかわすためにいかに膨大なリソースをつぎ込み、善意に見せかけて評判を回復させるためにいかに巧妙な戦略を駆使しているかを、はっきりと思い知らせるものでした」と述べました。
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