かつての短尺動画の雄、 Snapchat のいま:「いまなおクリエイターにとっては信頼できる収益源だ」

DIGIDAY

Snapchat(スナップチャット)が縦型短尺動画の「王道」だったころのことを覚えているだろうか。いまやTikTok、インスタグラムの「リール(Reels)」、YouTubeの「ショート(Shorts)」が市場を席巻し、それまでZ世代の視聴者と特に結びついていたとされるSnapchatから注目を奪った。しかし、Snapchatが完全に屈して影に引っ込んだ訳ではない。

今でもクリエイターや動画パブリッシャーたちはSnapchatに関心を払っている。その多くが、同社が短編動画プラットフォームとしては珍しく、動画クリエイターと収益を分配しているためだ。そして、同アプリの親会社であるスナップ(Snap)は、その可能性を認識しているようで、クリエイターやパブリッシャーに利益をもたらすオプションを提供する取り組みを強化している。

そのいい例として、バイス・メディア・グループ(Vice Media Group)のリファイナリー29(Refinery 29)は、昨年Snapchatでの視聴が減少し、その結果Snapchatでのコンテンツ投稿の量を減らした。しかし同社は過去数カ月のあいだにSnapchatで「再び規模を大きくしつつある」と、リファイナリー29とI-Dのオーディエンス・コンテンツ戦略担当バイスプレジデントのタマール・ライリー氏は語る。ただし、具体的な数字は明らかにしなかった。

「スナップがローンチしようとしているすべての新製品、コマースの学習方法、そしてバーティカルに注力しつつあることを考慮すると、彼らの取り組みに我々が大きな期待を寄せるのは理にかなっている」とライリー氏は言う。

どうなるSnapchat?

以下が今回のポイントだ。

  • クリエーターとパブリッシャーにとって、Snapchatはもはや光り輝く新しいおもちゃではない。
  • しかし同プラットフォームの収益分配プログラムは、その魅力を維持するのに役立っている。
  • 動画クリエーターにとってより魅力的、かつ受け入れやすいものになるための取り組みも行なっている。

Snapchatの大きな付加価値

2015年にディスカバー(Snapchat Discover)に参加するパブリッシャー向けに収益分配プログラムを開始し、2018年にクリエイターと収益の分配を始めたSnapchatは、今年2月にクリエイターのストーリーに広告を挿入する収益分配プログラムをテスト開始した。同社の広報担当者によると、同プログラムを通じて利益を上げているクリエイターは全世界で200人を超えるという。

また、パブリッシャーやクリエイターがほかのプラットフォームに投稿した動画をスナップショーズ(Snap Shows)に転用し、そこから得られる広告収入の一部を受け取ることも可能にした。あるメディア担当幹部は「1年ほど前には、パートナーが新しい番組を作りやすくなり、週に何話放送されるかをよりコントロールできるようになった。それをきっかけに勢いが高まった」と語った。

「クリエイターが参加できる収益ラインは継続的かつ毎月更新されるようになっている。これはYouTubeアドセンス(YouTube AdSense)がほとんどの場合そうであったように、多少の予測可能性を持っている」と、クリエイター向けコマース企業ワーラー(Whalar)のタレント・マネージャーを務めるメーガン・フランツ氏は述べた。ワーラーは、TikTokのスターであるエマニュエル・デュヴァーヌー氏やレオ・ゴンザレス氏などのクリエイターと仕事をしている。

「安定した毎月の収益が保証されており、非常によくできた収益自動化プログラムだ。いつローンチされるかわからないベータ版でも、その内廃止されてしまう新しいプログラムでもない。これは数年前から導入されている。毎月の収入に追加することのできる信頼性の高い収益源であり、それがSnapchatというプラットフォームに大きな付加価値を与えている」とスポ0つメディアのチーム・ホイッスル(Team Whistle)でプレジデントを務める、ジョー・カポローゾ氏は述べた。彼は、チーム・ホイッスルがSnapchatでどれくらいの収益を上げているかは言わなかったが、その金額は「それは年々変化しておらず、どちらかといえば、当社の包括的な事業収益の大きな部分を占め続けている」と述べた。

トッププレイヤーにならないワケ

Snapchatがそれほど信頼できる収益源であるならば、なぜ縦型短尺動画のプラットフォーム市場における注目はTikTokとそのクローンプロダクトに集まっているのか。Snapchatにこの市場におけるトッププレイヤーとしての栄光が授けられていないのはなぜなのか。それにはいくつかの理由がある。

第1に、Snapchatは短尺動画プラットフォームかもしれないが、そのスイートスポットは長さ3分〜6分の動画で、TikTokなどで制作されている60秒未満の動画よりも指数関数的に長い。これは、動画のクリエイターがSnapchatに手を伸ばすための障害になっている。なぜなら、完全に新しい動画を作成するか、TikTokのために制作した動画を拡張する必要があるからだ。

そうは言っても、TikTok、リール、ショートを使って、Snapchatで番組を配信する方法はいくつかある。カポローゾ氏によるとチーム・ホイッスルは、Snapchatの番組に組み込むことのできるアイデアをテストするために、ショートやTikTokをますます利用しているという。また同氏は、逆に「Snapchat向けのオリジナルコンテンツは今でも非常に多く作られている。Snapchatが最初の窓口になって、そこからほかのバーティカル動画プラットフォームにコンテンツを選んで投稿するケースも多くある」と述べ、チーム・ホイッスルがSnapchatのために常に15から25の番組を制作していることを明かした。

第2に、スナップがクリエイターを受け入れるには時間がかかった点が挙げられる。彼らは当初、伝統的なセレブやメディア企業に焦点を当てており、数年前まではクリエイターを取り込もうとはしなかった。しかし現在、スナップはパブリッシャーだけでなくクリエイターも積極的にサポートしている。たとえば、同社はクリエイター教育イベントを主催し、ニュースレターをパブリッシャーたちに送り、プラットフォームのトレンドや新製品の機能について知らせている。

ワーラーのシニア・タレントマネージャーであるアムロン・ロペス氏はスナップの人材開発責任者ブルック・ベリー氏に関して、「(彼女は)Snapchatにおけるさまざまな機会についてコンテンツクリエイターたちに教育する役割を切り開いてきた。コンテンツに関して彼らは何ができるのか、Snapchatはその役割を果たすためにどのように支援できるのか(といった点を教育してきた)」と語った。

クリエイターの注意を引くことができるか

短編の縦方向動画に時代の波が集まっていることで、実際にSnapchatに注目が集まっている。さらに、この注目はSnapchatの収益分配プログラムの存在を反映しており、これによって同社は動画クリエイター、特にほかのプラットフォーム、望ましくは直接収益化の機会を提供するプラットフォームに多様化しようとする短編動画クリエイターの注意を引こうとしている。

「Snapchatは、クリエイターたちがプラットフォーム上で何を作っているのか、そしてこれが実際にどのように持続可能なビジネスラインになり得るのか、を率直に報告した点で本当に賢明だった」とフランツ氏は語った。「これが、この1年半で彼らがクリエイターを優先し、彼らにとって重要なことを理解し始めていると感じた大きな理由だ。ボーナスプログラムなどといった収益の可能性があまり予測できないプログラムと比べると、収益分配システムはクリエーターにとっては実に効果がある」。

[原文:Future of TV Briefing: Snapchat’s standing in the short-form vertical video market for creators and publishers

Tim Peterson(翻訳:塚本 紺、編集:黒田千聖)

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