アディダス 、新たなサステナブルな繊維コレクションでナイキよりも一歩リード

DIGIDAY

スポーツウェア大手企業は、サステナビリティの推進とパフォーマンスのイノベーションの確保を両立させる方法を模索している。その両者を何とか実現したアディダス(Adidas)は、現在、テレックス(Terrex)のパートナーであるスピノバ(Spinnova)との戦略を公開している。

スポーツウェア企業にとって再生繊維の使用は困難

2月、アディダスは同社のアウトドアアドベンチャーレーベルであるテレックスで、初めてサステナビリティに焦点を当てた製品のローンチを発表した。HS1パーカーと名づけられたその製品は、フィンランドの素材メーカーであるスピノバの再生繊維を使用している。再生繊維でできた素材は、クローズドループシステムで何度も再利用することが可能だ。

スポーツウェアの分野では再生繊維はまだ浸透していないが、カルバンクライン(Calvin Klein)やトミーヒルフィガー(Tommy Hilfiger)の親会社であるPVHなど、ほかのアパレル企業はその可能性を見出している。PVHは2カ月前に、再生繊維のインフィンナ(Infinna)を生み出した再生企業インフィナイテッドファイバーカンパニー(Infinited Fiber Company)との提携を発表している。

スポーツウェア企業にとって、パフォーマンスの品質と迅速な製品産出の両方を維持することが重要であるため、再生繊維の使用は特に困難である。2021年、アディダスは、海洋からのプラスチック廃棄物の転用と、再生プロセスおよび再生素材を優先することを中心とする「3つのループ戦略」を発表した。同社のグローバルアウトドアマーケティング・バイスプレジデントであるマーウィン・ホフマン氏は「プラスチック廃棄物の撲滅に貢献することは、テレックスのレベルだけでなく、ブランドレベルでのサステナビリティの使命だ」と述べている。一方、ナイキ(Nike)は、専用の再生および回収プログラムによる既存製品の循環にかなり力を入れている。しかし、ナイキは近いうちにカーボンネガティブな素材で再生スニーカーを作るだろうというがある。

アディダスも2024年末までに、バージンポリエステルの使用を廃止したいと考えている。そして、2030年までに二酸化炭素排出量を30%削減したいとしている。アディダスによると、サステナビリティの目標は、同社だけでは解決できない大きな課題に相当するほど非常に野心的だという。半年前にスピノバとの提携が始まってから、これまでに1500着のHS1ジャケットを生産してきた。7月15日には追加生産分が発売される予定だ。

「アディダスでは再生計画の『メイド・ウィズ・ネイチャー』という点に関して、2段階の戦略がある。ひとつ目は、イノベーションに大きく投資することだ」とホフマン氏は語る。「ふたつ目は我々だけで行うことはできないこと、外部の優れたブランドや頭脳と提携する必要があることを認識している。サステナビリティに関するこれらの課題に立ち向かうために、ときには競合相手とも一緒に、我々は喜んで協力しあっていく」。2020年、アディダスは生産時に発生した炭素量を刻印したランニングシューズで、スニーカー会社のオールバーズ(Allbirds)と提携した。

再生繊維の商用生産に向けて

最初の1500着のHS1パーカーは、2月にウェイティングリストに登録したアディクラブ(Adiclub)のロイヤルティメンバーに向けて、180ドル(約2万4850円)で販売された。アディダスは、いずれは再生繊維の使用を全製品に拡大したいと考えている。同社によれば、性能の質を維持するために、今回のパーカーで使用したスピノバ繊維は25%のみとなっている。「スポーツ企業である以上、品質のためにイノベーションを妥協することはできない。アウターウェアの面でも、テレックスの面でも、品質への挑戦と我々の野望は極めて高い」とホフマン氏は述べた。

スピノバの繊維は、綿のように編んだり織ったりすることができるが、それを使用するにあたってはまだ学びの過程にある。スピノバの共同創業者でCEOのヤンネ・ポラネン氏は、アディダスのサプライチェーン・パートナーにこの素材の扱い方を教えた。「このパーカーに使われている繊維はすべて、私たちのパイロットプログラムで生産されたもので、まだ商業生産はしていない」とポラネン氏は説明している。「最初の商用パイロットは、今年末に開始する予定だ。現在の目標は、今後10年で100万トンの量を生産することだ」。時間の経過とともに扱いやすくなり、品質も向上するため、再生繊維の規模の拡大は、スピノバがアディダスなどの大手ブランドと長期的に成功するためのカギとなるだろう。

変えるべきはブランドの思考プロセス

新しいテクノロジーがさらなるイノベーションを可能にするなかで、アディダスのようなメガブランドは、パフォーマンスクオリティの定義そのものを考え直さなければならなくなるだろう。「我々は社内的にも、企業としてもみずからに挑戦しなければならない」とホフマン氏は言う。「過去5年から10年のあいだに存在していたかもしれないアディダスの品質基準を、将来も適応させていかなくてはならないのか? 人工繊維は、手触りや湿度特性が天然繊維とはまったく異なっている。スピノバのような天然繊維について考えた場合でさえ、その繊維は市場でまったく新しいものなので、それに対するベンチマークが存在しない」。

アディダスのシニアデザインディレクターであるアン・ネベンダール氏は、変えるべきは製造工程だけでなく、ブランドの思考プロセスでもあることを指摘した。「長持ちさせる必要がありながら、寿命についても考慮したリサイクル可能な製品をデザインする必要がある」。

アディダスは、ビジネスオブファッション(Business of Fashion)の2021年度サステナビリティ・インデックス(2021 Sustainability Index)で、全スポーツブランドのなかで最高点を獲得している。同社の希望は、オールバーズとのスニーカーコラボのようなブランドコラボレーションや、スピノバやパーレイ・フォー・ジ・オーシャン(Parlay for the Oceans)といった企業とのパートナーシップによって、「前向きな競争」と呼ばれる分野で優位に立つことだ。

[原文:Adidas is getting a leg up on Nike with new sustainable-fiber collection]

ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:Maya Kishida 編集:黒田千聖)

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