DX時代に対応した著作権政策とは – 中村伊知哉

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文化審議会著作権基本政策小委がDX時代に対応した著作権制度・政策の中間まとめを発表しました。

コンテンツ創作の好循環を目指し、簡素で一元的な権利処理の方策を審議したものです。

放送ネット配信の制度改正という大仕事に次ぐ、大ミッションです。

今回、大きな方向を打ち出しました。

分野横断の一元的な窓口を創設し、権利情報データベースも構築する仕組み。

これを通じ、データベースに権利情報がなく、集中管理がされておらず、権利者が不明の場合に、新しい処理の仕組みを構築する、というものです。

場面としては、過去の放送番組や舞台公演等のデジタルアーカイブ・配信、権利者不明などで利用許諾が得られないコンテンツの利用、UGC等のデジタルコンテンツの二次利用などを想定しています。

議論を通じ、あれこれコメントしました。

横断窓口とデータベースがセット運用されて、そこから外れる権利者不明なコンテンツについて裁定で拾う。これを迅速に実装する。そして、拡大集中許諾とUGCについて並行して検討していく。という構成。

プライオリティの高さに対応していて、骨太で、シンプルでわかりやすい政策です。

早く成案を得てアクションに移ることを希望します。

著作権論議は数年前まで制度論に偏重していて、ムラに閉じているきらいがありました。

今回、制度論もあるが、データベースや窓口整備、普及啓発といった「施策」の比重が大きくなっています。

それは著作権が経済社会との結びつきが強まり、重要な政策分野になってきた現れではないか。歓迎します。

制度論は、この「方向性を堅持しつつ」という意味深なことが書いてあるが、後戻りしないよう具体設計に移っていただければ。

そして「データベースと窓口の整備を速やかに進める」という結語が全体の前提となるもので、最も重要。

  コストや収入の設計が一番の難問で、それをクリアしないとこの報告全体が空洞化します。

公的資金を確保する上でも、政策のプライオリティーを上げる必要があります。

そのためにも、他の大きな政策に乗っていくなどして、外に向けてメッセージを発することが大事と考えます。

  それは、ムラにとどまらず、データ政策、規制改革など、霞が関内の調整も大事になっているということで、この政策を実現するには汗をかく必要があります。

委員も関係者も、このまとめに賛同するかたは、協力いただくようお願いすべきものだと考えます。

私も自分の立場で協力できることを進めたい。

なお、普及啓発は制度設計やデータベース構築よりも時間とコストがかかり、成果検証がしにくい。著作権だけで取り組むのはしんどすぎます。

この点、青少年のネット安心安全対策は12年前から省庁横断で進められ、デジタル庁も普及啓発策に取り組んでいます。

著作権教育も乗っかるのがよいと考えます。

・・以上、今回のまとめは文化庁著作権課をもう一つ作るぐらいの政策を含む野心的なスイングです。

2022年はこの界隈、熱くなりそうです。

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