「可処分所得は減少している」:家庭用品ブームに見えはじめた陰り

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家庭用品業界は、2022年初めに記録的な売上を計上した。

しかし、住宅市場のブームが落ち着きはじめ、さらにインフレによって消費者の支出は抑制されはじめると、増加した売り上げが減少する可能性がある。

ターゲット(Target)のような大手小売業者や、家具専門店は、1年前と比べて経済が大幅に変化するなかで、売上の変化はすでに表れていると語る。こうした状況を受け、一部の小売業者はデスクや椅子といった在宅勤務の必需品から、リネンやアクセサリーなどの機能性商品に重点を移行させつつある。ほかの小売業者は、価格を気にする消費者向けにお得な特売やセット売りを行っている。

家電の売上も頭打ちに

米国国勢調査局(U.S. Census Bureau)の月次小売取引データは、2022年4月に家具と家財道具部門の売上高が過去20年間で最高額となり、121億ドル(約1兆6300億円)に達したことを示している。これは、パンデミックの初期に見られた家庭用品の購入ブームにより達成された金額をも超えており、2020年9月に達成された以前の記録である107億ドル(約1兆4400億円)を上回っている。

パンデミックの初期には、外食の減少、旅行への出費の抑制、住宅リフォームへの関心の高まりなど、いくつもの要因が重なったことで、消費者の出費が促進された。不動産ブームのなかで新しい家を購入した人々も、家具への出費を下支えした。全米住宅建設業者協会(National Association of Home Builders)の2017年のデータでは、既存の一戸建て住宅に引っ越す買い手は、ほかの家屋保有者よりも、最初の1年間で約3700ドル(約50万円)多く消費することが示されている。

LGエレクトロニクス(LG Electronics)の家電製品の商品管理担当バイスプレジデントを務めるブラント・バーナー氏は、新たに家屋を所有した人々がもっとも多く購入する大型家電は冷蔵庫と洗濯機だと、メールで米モダンリテールに語った。この部門もまた、パンデミックの最中に記録的に成長した。しかしこれらの分野も現在は、家屋の売上と同様に頭打ちになってきた。全米不動産業者協会(National Association of Realtors)によれば、既存の家屋の売上は、4月まで3カ月連続で減少した。

バーナー氏は次のように述べている。「過去数年間にわたり、家電業界は記録的な成長を見せてきた。前年比という観点から見れば、この成長は鈍化しはじめているが、需要と数量で見れば依然としてCovid前よりもはるかに大きなものだ」。

空間の変化と小さな工夫

ターゲットは、アパレルと日曜大工用具に次いで、「家庭」を中核的なカテゴリーのひとつに数えているが、第1四半期の家庭カテゴリーの売上は前年よりわずかに減少した。しかし、それでも2019年の第1四半期を40%以上上回る高い数値を維持している。ターゲットのエグゼクティブ・バイスプレジデント兼最高成長責任者を務めるクリスチーナ・ヘミングトン氏は、ターゲットの最新の決算発表において、顧客は現在、自宅用の小さなアイテムにお金をつぎ込むようになっていると語った。

「顧客はすでに、家具や小型電気製品などのカテゴリーの商品を購入して、自宅を改装し終えたので、今度はより小さな部分にこだわって自宅をリフレッシュし、室内装飾やキャンドル、季節商品などのカテゴリーで需要を促進している」と、同氏は述べている。

小規模の家庭用品ブランドは、家庭市場が移行しても、現在のところ売上は減少していないと語る。しかし顧客は、ロックダウン後とインフレ時代の新しい優先順位に適応した、異なるタイプのアイテムを買い求めるようになってきている。

サンデーズ(Sundays)は、パンデミックのロックダウンが開始される数カ月前に設立されたオンラインの家具小売業者で、最初はコンソール、ベッド、ダイニングテーブル、デスクなど多機能な商品を堅実に売り上げた。しかし最近では、人々が集まれるような空間を装飾する需要が増加していると、同社の共同創設者で商品開発およびデザインのディレクターを務めるノア・モールス氏は語る。これは、モジュール式の組み立てソファなどのアイテムを意味する。

「家族や友人が安全に集まれるようになったため、娯楽やおもてなし用の商品が売上をより強力に押し上げてくれることを期待している」と同氏は述べる。

エコフレンドリーな家庭用品ブランドのコユーチ(Coyuchi)の自然住宅アドバイザーを務めるミシェル・ストリファー氏は、顧客は現在、自分たち自身だけでなく、ゲストのためにもリフォームをするようになったと語る。

「人々はより大きな空間に移行した可能性があり、こうした人々が自宅に客を招待することで、客室の改装が増えると予測している」と同氏は述べている。

セット売りとバリュー

ストリファー氏は、最近のセールが「大好評」だったことから、価格に敏感なお客様が増えていることにも注目している。

「これは、人々がお買い得な商品を求めているという兆候だ」と、同氏は述べる。

米連邦準備制度理事会(FRB)は、今年5%にも達すると予想されるインフレに対処するため、6月19日に再び金利を引き上げた

家庭用品メーカーのパターンブランズ(Pattern Brands)の共同創設者で最高業務責任者を務めるスーズ・ダウリング氏は、たとえば黒色やクリーム色の3段玄関ラック、大型のワイヤーバスケット、積み重ねできる保存容器など、時代に影響されない色や多用途の機能アイテムに需要があると語っている。これは特にキッチン用品に顕著で、パンデミックの初期にレストランが閉鎖されたのと同じように、人々が外食の出費を節約するために自宅で料理をする人が増えているのが理由だと、同氏は述べている。

これは同時に、価格への考慮も意味する。パターンブランズはGIRのシリコン製調理用具を、3品30.50ドル(約4120円)から10品90.95ドル(約1万2300円)までのセット売り価格で提供している。

「こうした顧客は、自分たちの身の回りについてより意識的になっているようだ。当社の商品は、機能的要素に重点を置き、日常的に使用することに特化している。我々が提供しているカテゴリーがインフレにもかかわらず依然として堅調であることからも、我々は有利な位置にいる」。

住宅リフォームは減少傾向に

住宅リフォームは、パンデミック時に家具の販売を後押ししたが、いくつかのデータから、住宅のリフォーム計画の人気は減少しつつあることが示されている。データインテリジェンス企業であるプリサイスリー(Precisely)の一部門であるプレース・アイキュー(PlaceIQ)は、匿名化されたモバイル移動データとカード購入データを使用して、4月に消費者が前年と比べてどこに行って消費を行っているかを調べた。

そのデータから、4月のホームセンターへの訪問者数は、2021年の同月と比べて12%減少したことが示されている。同様に、それらの店舗で消費された合計金額も25%減少した。家具や装飾の小売業者の場合、訪問者数は2%減少し、その店舗での消費金額は27%減少した。

プリサイスリーの戦略担当バイスプレジデントを務めるドルー・ブルーニグ氏は、消費者がパンデミックのあいだに、自分たちの住宅の改修を済ませたことを、このデータが示していると語る。そして、これらの消費者は実店舗に回帰しても支出を減らしている。

家具をはじめとする住宅関連商品の需要は、住宅販売の低迷と、体験に費やすことを好む人々の増加により、今後は低下していくと同氏は予想しています。

同氏は次のように述べている。「人々は自由に自宅を離れることができるようになり、以前から好んでいたような楽しみに目を向けはじめた。家への関心は薄れつつあり、しかも可処分所得は減少している」。

[原文:‘There’s less disposable income’: The home goods boom starts to slow]

Melissa Daniels(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:猿渡さとみ)
image via Bed Beth & Beyond

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