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ディフューザーブランドのビトルビー(Vitruvi)は、ブランド刷新後、新規顧客獲得のため、新しい雇用と実店舗に動いている。
ビトルビーは4月、ブランドを一新し、顧客がより的確なアロマ・プロファイルを把握できることを目的とした新しいパッケージに変更した。また5月には、新しいブランドプレジデントとしてシンディ・ボキッチ氏を雇用した。同氏はルルレモン(Lululemon)の派生ブランドでトゥイーン向けのアスレチックウェアを扱うアイビバ・バイ・ルルレモン(Iviva by Lululemon)のジェネラル・マネージャー、そして、低糖キャンディーブランドのスマートスイート(Smart Sweets)のCOOとして、実店舗の小売を運用した経験がある。どちらの動きも、ビトルビーが店舗における顧客の獲得を中心にしていく計画を示唆している。同ブランドは新しい小売パートナーシップ契約を締結するとともに、より幅広い小売業者にアピールする新しい商品を発売しようとしている。現在のところ、同ブランドはエレウォン(Erewhon)、クレート(Crate)、およびバレル(Barrel)とディラーズ(Dillards)などの企業により店舗内で販売されている。
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450万ドルの資金調達
ビトルビーは2015年に創設され、25万個を超えるディフューザーと、50万本を超えるオイルを、それぞれ150ドル(約1万9000円)と30ドル(約3810円)前後の価格で販売してきた。同社は2020年2月に450万ドル(約5億7200万円)の資金調達ラウンドを発表した。この調達は、同ブランドが今年パッケージと商品のブランド一新を行うために役立ったと、同社の共同創設者でCEOを務めるサラ・パントン氏は説明している。
同氏は次のように述べている。「当社は商品のエクスペリエンスと革新のために多額の投資を行っており、ブランド一新とともにこれらが実現した。当社の目標は2つだ。ひとつは顧客が店舗の棚でアロマを探し、どのような香りが好きかを把握できるようにすること。もうひとつは、ブランドのコレクションのあいだに一貫性を持たせることだ」。
資金調達は、同社がボキッチ氏のような「何人かの重要な雇用」を行うためにも役立った。ビトルビーは今後、大部分の労力を実店舗に傾けることを計画している。同ブランドは現在、400店舗以上の実店舗を持ち、200社の小売パートナーを保有しているが、パントン氏は急速な拡大を望んでいる。
「ボキッチ氏は、小売への大規模な展開によって当社のビジネスを爆発的に成長させてくれるだろう」とパントン氏は述べている。
ビトルビーは自社商品の多くをノードストローム(Nordstrom)やアンソロポロジー(Anthropologie)などのパートナーとともに、オンラインおよびアーバン・アウトフィッターズ(Urban Outfitters)など一部のブランドの店舗内で販売しているが、次の段階は「デジタル側で当社が構築した基盤をもとに、小売を重視していくこと」だとパントン氏は述べている。同氏は商品の正確な詳細を明らかにしていないが、ビトルビーのブランドが「大規模販売店」やパートナーに訴求するよう、2つの新商品を低価格で立ち上げると述べた。ボキッチ氏は、これらの新商品が今後6カ月のあいだに発売されると付け加えている。
顧客獲得での困難
ビトルビーは、ほかの新興企業と同様に、顧客獲得コストが上昇している時期にオーディエンスを築き上げるという課題を抱えている。Appleは2021年にiOS14アップデートを公開し、ユーザーがアプリ間でのトラッキングに同意するよう求めるようになった。それ以来、新興企業が新しい顧客をデジタルでターゲットに設定するのは困難になり、コストも上昇した。
ブルックリネン(Brooklinen)やフライ・バイ・ジン(Fly by Jing)など多くのデジタルネイティブなブランドは、自社独自の店舗を開設するか、小売への展開を拡大することで、今年のうちに実店舗への展開を広げることを模索してきた。
ビトルビーがオンラインで顧客を獲得する能力がiOS14のアップデートの影響を受けたかという問いに対して、パントン氏は直接的には答えなかったが、「D2C専業でビジネスを行うのは、数年間は非常に好調で楽しかったが、当社は別のチャネルに移行するようになり、よりD2Cに特化したほかの会社が苦闘した困難な問題をたくさん切り抜けてきた」と述べている。
アルバレス・アンド・マルサル・コンシューマ小売グループ(Alvarez & Marsal Consumer Retail Group)のマネージングディレクターを務めるトルエット・ホーン氏は、iOS14のプライバシー関連のアップデートは「広告業務における障壁を作り出した」と、メールで語った。
「これにより、購入が非効率化し、獲得コストが上昇した」と同氏は付け加えている。
コアサイトリサーチ(Coresight Research)の調査および顧問担当プレジデントを務めるケン・フェニョー氏は、これらの課題はビトルビーのように大規模なD2Cチャネルを持つデジタルネイティブのブランドには特に困難なものだと付け加えた。
同氏は次のように述べている。「実績のある大企業なら、店舗があり、テレビ、ラジオ、広告板、印刷物の戦略が確立されているため、メッセージを広く伝えるためデジタルチャネルにそれほど強く依存しない。しかし、デジタルネイティブの新興企業の多くが保有しているのはデジタルマーケティングの技術だ。これらの企業は、Facebookや検索エンジンでマーケティングを行う方法を熟知している」。
ホーン氏は、このような種類のブランドにとって、小売中心の戦略は、ますますコスト高になっていくデジタルマーケティングの障害を回避するための方法のひとつだと付け加えている。
同氏は次のように述べている。「実店舗もまたひとつの販売ルートなので、顧客の獲得に役立つのは当然のことだ。小売店舗には自然な対人でのショッピングによりオーガニックなトラフィックが生まれるため、「無料で」認知を広げることができる。オムニチャネルの顧客は、デジタルやフィジカルでの顧客よりも価値の高いものだ」。
[原文: Diffuser brand Vitruvi charts brick-and-mortar expansion after rebrand]
Maile McCann(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:猿渡さとみ)
Image via Vitruvi