2021年、労働者が仕事との関係性、特に現状に満足しているかどうかを見直す動きが米国全土で起こった。現在、この話題に関与しているブランドが登場している。
大離職の風潮に関与するシュミッツとペプシコ
人員確保や業務を社内的に考えるのではなく、この文化的な話題を支援して関与する機会を見出しているブランドもある。その一例は、パーソナルケアとデオドラントのブランド、シュミッツ(Schmidt’s)だ。同社は、5月10日に、「シュミッツとともに辞めよう(Quit with Schmidt’s)」キャンペーンを開始した。ここでは、辞めることはポジティブになりうるという考えが前面に押し出されている。
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また、ペプシコ(PepsiCo)の機能的スパークリングウォーターの新規ブランド、ソウルブースト(Soulboost)は、5月4日〜20日に「グレート・リシャッフル・リセット(Great Reshuffle Reset)」という補助金提供キャンペーンを実施した。選ばれた応募者には5000ドル(約64万円)が提供された。
ペプシコビバレッジ(PepsiCo Beverages)の未来ブランド担当シニアディレクター、ジェニー・ダンジ氏は次のように述べている。「ドリンクという枠組みを超えて、人々の生活に影響を与えられるようなものを提供したいと考えた。いま、大勢の人たちが生活を省みて、自分の時間をどう使いたいかを見直している。(このキャンペーンは)新しい経験に対して心の準備ができている人たちを支援して、自分を幸福にするのは何かを評価するように皆を促す優れた方法だと感じた」。
ソウルブーストのキャンペーンの詳細
ソウルブーストは、デジタルネイティブな機能的スパークリングウォーターのブランドで、製品にはリラックスと活力のためにL-テアニンやオタネニンジンのような成分が含まれており、飲む人の気分を向上する目的がある。
グレート・リシャッフル・リセットのために専用ウェブサイトのSoulBoostReset.comが設けられ、もっとも好きなアクティビティや場所に再びつながりたい理由について人々が応募できるようになっていた。その後、クリエイティビティを基準に応募回答は審査され、複数の受賞者が5000ドル(約64万円)を受け取った。ダンジ氏からは審査員やクリエイティビティ以外の評価要素についての詳細は共有されなかった。
ダンジ氏によると、「数千」件の応募があったという。また、キャンペーンを促進するためのマーケティングとコミュニケーションはニュース記事や口コミが中心だった。
キャリアの中段階の人々が大量離職
米国の労働統計局によると、離職は2021年4月にピークに達し、異常な高止まりが続いているそうだ。ピュー・リサーチ(Pew Research)とハーバード・ビジネス・レビュー(Harvard Business Review)誌は、この経済的、労働的な再編には根本的な原因がいくつかあるとしている。ピュー・リサーチの3月の調査によると、2021年に仕事を辞めた労働者の63%が低賃金で昇進の機会がないことが理由だと述べている。その次に57%が職場で軽蔑されていると感じたそうだ。また、ハーバード・ビジネス・レビュー誌の2021年9月の記事ではキャリアの中段階にある従業員が退職する可能性がもっとも高いことが示され、これは特にテック業界とヘルスケア業界において顕著だった。
「離職=失敗」の認識を変える試み
「我々は、辞めてもいいのだという議論を始めたい」と述べているのは、シュミッツのブランドマネージャー、ローラ・エリオット氏だ。「当社はつねに限界を拡げていきたいと考えているブランドであり、辞めることはポジティブな姿勢だと社会的に見なされるようにしたい。皆、自分のやりたいことをする勇気を持つべきだ」。
シュミットのソーシャルメディアキャンペーンでは、辞めることを失敗だと考えるのではなく、その認識を変えようと、別のキャリアを求めて仕事を辞めた同社創設者のジェイミー・シュミット氏の、同社の起源となったストーリーと関連付けられた。
シュミッツ・ナチュラルズ(Schmidt’s Naturals)は、当時妊娠中でナチュラルな製品を探していたシュミット氏の趣味として2010年に始められ、会社が成長するにつれてフルタイムの事業へと変化した。同社は2017年にユニリーバ(Unilever)に買収されている。今回のキャンペーンは、シュミット氏が自分の体験を語った動画を同ブランドのソーシャルチャネルに投稿してスタート。プロサッカー選手のミーガン・ラピノー氏も5月10日に自分のインスタグラムストーリーズに投稿して、何かを辞めたいと思ったことはないかとフォロワーにアンケートを取り、シュミッツのキャンペーンを宣伝した。
このキャンペーン後、シュミッツは、ラピノー選手とシュミット氏との「シュミッツ・クイッターズ・クラブ(Schmidt’s Quitters Club)」ビデオチャットに参加するために選ばれた3人の受賞者とコンテストを主催、また、受賞者には1500ドル(約19万円)のAirbnbギフトとシュミッツ製品1年分が贈られた。さらに、シュミッツは、ラピノー選手や同社所有のソーシャルチャネルとの協働のほかにも、有料のTikTokインフルエンサーとインスタグラムインフルエンサーらと協働してラピノー氏の5月10日のインスタグラムストーリーズを視聴するようにとアピールした。
「辞めるのは怖いことで、社会では否定的に思われている点を取り上げた。だが、辞めることにはほかにもさまざまな意味がある」とエリオット氏は述べている。同氏は、例として、メンタルヘルス面の理由からソーシャルメディアを辞める人々や、パラベンやアルミニウムや人工香料の使用に対してシュミッツが「『ノー』と言った」ことを挙げている。「キャンペーンではこの大離職時代を取り上げているが、現状は文化的なものだと思う。大規模な離職状況についてはすでに話題になっており、大勢が自分の生活を見直して自分にとって何が最善かを考えているいま、(我々のブランディングを)このキャンペーンに結び付けるのは理にかなっていた」。
シュミッツはこのキャンペーンの成果を評価するために、応募数や全体的なソーシャルメディアのエンゲージメント、インプレッション、獲得したメディア価値を調べた。キャンペーンの終了後、同社チームにメトリックス情報について問い合わせたが、回答は得られなかった。
[原文:Beauty and wellness brands tap into Great Resignation conversation]
EMMA SANDLER(翻訳:ぬえよしこ、編集:黒田千聖)