コロナに翻弄された東京2020、その現場を支えたのは4年目のノートPCだった[Sponsored]

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国立競技場などに足を運び、PCのメンテナンスを担当していた、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の丸山健一氏

 2021年7月、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、東京2020)が開幕。プロジェクションマッピングが開会式を彩り、オメガの機器が選手の順位を計測し、厳重なセキュリティがさまざまな脅威から東京2020を守った。

 東京2020の大会運営を支えるために、会場やバックオフィスでは実に1万5000台以上のPCが利用されていた。そのほとんどはパナソニックが提供したもの。それも、ほぼ1機種のみに絞って、各会場やバックオフィスへと納品された。予期せぬ新型コロナのまん延によって延期されたことで、結果的には機種選定から実に4年後の東京2020を支えることになる。

 なぜ、パナソニックは東京2020の公式モデルを1機種に絞ったのか? 話は2017年、平昌2018の開催に向けた準備がピークだった頃までさかのぼる。

オリンピック開会式の会場運営に使われたレッツノート。あのプロジェクションマッピングにもパナソニックのプロジェクターが使われた

サイバー攻撃を防げ!! オリンピックに求められるセキュリティとは

 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下、組織委員会)の組織図には、アスリート委員会やメディア委員会など、各分野でさまざまな委員会が名を連ねている。その中でもIT関連業務を手掛けるテクノロジーサービス局で、PC担当課長をつとめる丸山健一氏によると、東京2020で利用するPCをパナソニックが提供することが決まったのは、2017年の秋ごろだったという。

東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 テクノロジーサービス局 ベニューテクノロジー部 PC担当課長 丸山健一氏

 「検討を始めるにあたって、前回大会からの情報の引継ぎがありまして、それを元に『どのスペックのPCを何台用意するか?』といった基本設計を固めていきました。その中で、パナソニックさんと話していたのが、『東京2020の大会運営までに提供するPCを、1機種に絞り込めないか?』ということです」(丸山氏)

 組織委員会ではこの頃から東京2020に向けての準備を進めており、その業務に使用するPCを必要としていた。東京2020の開催まで、あと3年。その間に納入されるPCの機種が変わると、セキュリティの管理が複雑になる。それは東京2020の大会運営にあたり大きなリスクになると、丸山氏は感じていた。

 2018年2月に開催された平昌2018では、サイバー攻撃によりPCが起因ではないがIT機器のトラブルが起きたという。さらに、東京2020に向けてはアクレディテーションカード(大会参加資格および入退可能なエリアを表すパス)の発行に関する個人情報を管理し、医療の現場では選手のカルテを扱うことになる。その中でセキュリティを維持するためには、用途に応じてPCをカスタマイズするマスターイメージを、50種類以上も用意する必要があった。

東京2020の会場などでは、エリアごとにアクレディテーションカードのチェックがあり、その管理端末もレッツノートが使用された

 「東京2020が開催されるまでの3年間に機種を更新したり、現場ごとに納入するPCを変えたりすると、その機種の数だけマスターイメージを増やすことになります。これは容易なことではありませんし、セキュリティ上のリスクにもなる。なので、4年後も使えるPCを、1機種だけで提供し続けてくれないかと、パナソニックさんに相談したのです」(丸山氏)

法人対応の経験が、レッツノートの公式モデルで生きた

 一方、パナソニックでは組織委員会から伝えられた仕様を元に、納品するPCの選定を進めていた。しかし、これを1機種で全てカバーするとなると、その難易度は一気に上がる。結局、当時のラインアップでも一番性能の良いレッツノートを用意し、それを3年間にわたって生産し続け、修理対応にも応じることを約束した。これは、1年に1回はモデルチェンジを行うPC業界においては、かなりイレギュラーな対応といえるだろう。

パナソニック株式会社 コネクティッドソリューションズ社 モバイルソリューションズ事業部 法人営業1部 主幹 本田拓郎氏

 当時の現場を知るパナソニック コネクティッドソリューションズ社 モバイルソリューションズ事業部 法人営業1部 主幹の本田拓郎氏によると、これには法人向けにモバイルPCを提供し続け、今年レッツノート生誕25周年を迎える同社の経験が生かされていたという。

 「同じ機種を長く生産して、サポートを続けるという要望は、法人ではよくあることなんです。ただ、3年間も同じ機種を生産し続けるというのは、前例のないことでしたね。サポートのことを考えると、常に専用部材を首都圏にストックする必要もありました」(本田氏)

 本田氏によると、組織委員会のセキュリティへの要求はかなり高かったようだ。OSやソフトウェアで何かの脆弱性が発見されると、それに対して「パナソニックはどう対応するのか?」と、常に回答を求められたという。このため、東京2020が始まるまでの準備期間には専属のエンジニアを立てて、2週間に1回はミーティングを行った。

 こうなると供給するPCを1機種に絞ったことは、セキュリティでは優位に働く。脆弱性に対処するPCのマスターが1種類で済んだため、対応はスムーズに進んでいった。

東京2020では会場からバックオフィスまで、さまざまな場所・用途でレッツノートが利用された

 オリンピックはさまざまなチームが役割を担うが、中でも競技の計測を行うオメガからの要件は高く、現場で利用する機材として、より高性能なPCが求められることもあった。これに対応すべく、パナソニックでは一般に提供している標準モデルにはない、CPU をインテル Core i7 プロセッサーに換装したレッツノートを急遽用意。それも、同じマスターイメージで動くように、特別なカスタマイズを行ったという。

 「こうした機種のカスタマイズも、法人向けのPCではよくある要件なんです。筐体設計の段階から、Core i7の搭載を想定した評価を行っていたこともあり、組織委員会の要望に応えるPCをスムーズに用意することができました」(本田氏)

 こうして、パナソニックが提供したレッツノートによって、東京2020の準備は着実に進んでいった。しかし、新型コロナウイルスの感染が拡大したことで、パナソニックと組織委員会を取り巻く状況は、大きな変化を迎えることになる。

1年の延期、予定外のテレワークにレッツノートが活躍

 東京2020が開催される予定だった2020年の春、世界はパンデミックに翻弄された。コロナ禍でテレワークが急速に普及していく中、組織委員会のメンバーも例外ではなく、在宅勤務を余儀なくされていた。

 ただ、これについては、パナソニックから提供されたのがノートPCだったこと。さらに、ネットワークの敷設前に会場で業務を行うことを考え、VPNで組織委員会のネットワークに接続できる環境を整えていたことで、現場ではテレワークへとスムーズに移行することができたという。「開催の1年前には、利用するPCを専用の倉庫に納品しておくこと」という国際オリンピック委員会の方針もあり、世界的にPCやその部材が品薄な状況下でも、無事に職員用のレッツノートを確保することができたという。

設営中でネットワークの敷設が終わっていない会場でも、組織員会のネットワークに接続できる仕組みが用意されていた

 その一方で、3月に東京2020の延期が発表されると、丸山氏や本田氏の周辺は一気に慌ただしくなる。東京2020の開催に向けて、組織委員会では全競技のリハーサルを2019年に行い、それに合わせたレッツノートのマスターイメージを、既に作成していた。しかし、開催が1年延びるとなると、その間にWindowsの「October 2020 Update」がパッチ提供されてしまう。このメジャーアップデートに対応すべく、組織委員会ではすべてのマスターイメージを作り直し、全てのPCで対応を実施した。

 「東京2020が1年延びたので、レッツノートの買い替えについても検討されました。一番大きかったのはバッテリーの稼働時間。UPS(無停電電源装置)の代わりとして使われるため、『4時間は利用できなければいけない』という要件があったのですが、この時点でもまだ問題なく動いていたんです。これで、1年後の大会でも、今のレッツノートを問題なく利用できるという結論になりました」(丸山氏)

 その後、1年の期間をおいて、東京2020が開幕。何かあった時のために、パナソニックではシステムエンジニア担当課長の携帯電話を組織委員会からのホットラインにしていたが、期間中に緊急の連絡が入ることはなかったという。予定から1年の利用延長を経て、レッツノートは東京2020を最後まで無事に支え続けたのだ。

レッツノートは「エクセレントラップトップ」だ

 東京2020の期間中、レッツノートは50か所以上ある競技会場、練習会場、選手村、プレスセンター、組織委員会の拠点など、あらゆる場所で利用された。その中でも高い評価を受けたのが、ノートPCならではのコンパクトさと、設営のしやすさだったという。

 従来のオリンピック競技大会ではワークステーション(デスクトップ機)を利用する現場も多く、それをモニターやUPSと横並びに置くと、テーブル上などで多くのスペースを取っていた。しかし、レッツノートなら設置面積はA4サイズ強で済み、設置も電源ケーブルを接続するだけ。レッツノートの性能が向上していく中、もはやワークステーションが求められる現場は、組織委員会ではかなり少なくなくなっていた。

ただでさえ「狭い」と言われる日本だが、UPSも不要なレッツノートは省スペース化に貢献

 東京2020の期間中に丸山氏がオメガのスタッフの元に足を運ぶと、USBでタコ足拡張されたケーブルに4つのモニターが接続されていた。そこには計測機器から送られたと思われるデータが表示されており、この映像出力を得るために、インテル Core i7プロセッサー搭載モデルのレッツノートが必要だったという。

 そのオメガのスタッフから、丸山氏はこんなことを言われた。「このPCは本当に壊れない、エクセレントラップトップだ」と。

 東京2020用のPCを準備するにあたって、丸山氏が過去のオリンピックの実績を確認したところ、使用した全てのモデルでスペアが10%用意されていた。つまり、それだけPCが故障するケースが多かったということだが、レッツノートは優れた堅牢性で知られるマシン。パナソニックの担当者からも、「そこまで壊れるのは考えにくい」という話があり、スペアの準備を5%に抑えたという。

 計測現場などでは、かなり慌ただしい状況でPCが使われるが、その過酷な現場でもレッツノートはタフに利用され続けたが、ほとんど故障はなかったという。むしろ、在宅勤務中に職員が飲み物をこぼすケースもあり、「そこでスペアが消費されるのにドキドキした」と丸山氏は話している。

先端技術の採用で「長く使える」ノートPCを目指して

 パナソニックではこうした組織委員会へのPCの供給にとどまらず、東京2020オリンピック・パラリンピックの開催にあたって、プレスセンターや選手村にブースを設置している。

MPC(メインプレスセンター)に設けられた「MPCパソコン修理工房」

 このうち、MPC(メインプレスセンター)に設置されたのが、レッツノートのサポート拠点となる「MPCパソコン修理工房」だ。これはパナソニックが東京2020において、PCに関するスポンサーカテゴリーを獲得できたためなのだが、実はスポンサーカテゴリーを獲得できていなかった過去のオリンピック競技大会でも、パナソニックは会場の近くでレッツノートのメンテナンスを行ってきた。これが、記者の間では「安心して仕事ができる」「予備のPCを持ち込まなくて済む」と好評で、オリンピック会場ではレッツノートを利用する姿がよく見られる。

 この日もある記者が修理工房を利用しており、その様子を見ることができた。亀裂の入ったボトムケースの交換ということで、予約していた1時間程度で作業は終了。競技の合間にメンテナンスすることで、記者は仕事を止めることなくレッツノートを持ち帰ることができる。

上からカメラを落としてしまったというレッツノートをその場で修理。幸い底面のキャビネットのみの交換で済んだ

取材の空き時間を使ってその場で修理が済むのは記者にとってもうれしいサービスだ

PCの貸し出しサービスも実施し、海外の記者向けに英語キーボードモデルも用意した

誰でも利用可能なインターネットラウンジも併設。こちらにも英語キーボードモデルを用意。複数の言語で使い方が記される

 現場を担当していたモバイルソリューションズ事業部の井口舞香氏によると、大抵の基板や部品は現地に持ち込んでいるので、ここ数年に発売されたレッツノートならこの場ですぐに直せるという。このような対応ができるのは、レッツノートの生産を神戸工場で一括して行っていることが大きいようだ。

パナソニック株式会社 コネクティッドソリューションズ社 モバイルソリューションズ事業部 CS部 井口舞香氏

「開発を全部自社でやっているので、レッツノートのことを全て分かっている人間が社内にいるんです。だから、これまでのオリンピックでも技術者に帯同してもらえば、大抵の故障は解決できました。レッツノートはビジネス用なので、“仕事を止めない”ことを大切にしています。売って終わりではなくて、どうサポートしていくかを社内で大切にしているんです」(井口氏)

 井口氏によるとレッツノートの開発ではサービス部門の意見も取り入れ、開発段階のレッツノートが形になったら、サービス部門が“修理のしやすさ”という観点からマシンをチェックするという。それは整備性という性能となり、今回のオリンピック公式モデルでも、カスタマイズやメンテナンスに生かされているように見えた。

 一方で、選手村ビレッジプラザには、「Internet Lounge & Café」が設けられた。このラウンジではドコモの5G通信環境が整備されており、選手がそのスピードを体感していたのだが、そこで利用されていたのが5Gに対応した最新モデル「レッツノートFV(CF-FV1RTAVS)」だ。

オリンピック選手村に設けられた「Internet Lounge & Café」

5Gの基地局が設けられラウンジ内で5Gの通信を体験することができた

選手は5Gモジュールを内蔵したレッツノートFVで自由に楽しんだ

パナソニック株式会社 コネクティッドソリューションズ社 モバイルソリューションズ事業部 開発センター ハード開発部 ハード設計3課 川端章吾氏

 パナソニックではレッツノートの5G対応に向けて、モジュールを手掛けるベンダーとの共同開発を実施。ドコモ5Gオープンラボ「OSAKA」で検証を行い、業界でもいち早く製品化に成功している。このマシンの開発に関わったモバイルソリューションズ事業部 開発センターの川端章吾氏によると、4×4 MIMOに対応すべくアンテナを従来のLTEモデルの2本から4本に増やしているが、狭額縁のディスプレイに収めるにはフレキシブル性のある基板を使うなど、「高速・大容量通信を実現するためにはノイズを抑制しながら高い受信感度をだす必要があり、5Gのアンテナ設計にかなりの苦労があった」という。

 このような先端技術の採用では、インテル vPro プラットフォームの搭載もあげられる。初めて採用されたのは2008年頃ということで、その後もインテルの技術者と直接やり取りをしながら実装を進めてきた。多くのビジネスの現場で利用されているレッツノートとの親和性は高く、今では法人向けマシンのほとんどで採用されている。

パナソニック株式会社 コネクティッドソリューションズ社 モバイルソリューションズ事業部 開発センター ソフト開発部 ソフト設計1課 森部美沙子氏

 インテル vPro プラットフォームの実装に取り組んできたモバイルソリューションズ事業部 開発センターの森部美沙子氏によると、インテル vPro テクノロジーは10年以上前からあるが、インテルのCPU開発によってその機能がどんどん充実しているという。

 「セキュリティや遠隔操作など難しい技術が使われているので、問題が発生した時には、インテルのエンジニアと直接話す機会が多いですね。コロナ禍の前はインテル社の海外拠点に出張する機会も多かったです」(森部氏)

 こういう先端技術の採用にいち早く着手できるのは、パナソニックが、自社で開発し、ユーザーの近いところで現場を知っている幅広いコネクションがあってこそといえるだろう。

 レッツノートは、2~3年で買い替えるユーザは少なく、平均利用年数が6年というアンケートデータもあるという。ビジネスユースで長く現役であり続けるためには、今後利用が広まっていく5Gへいち早く対応することは欠かせないわけだ。さらに森部氏は、インテル vPro プラットフォームが持つハードウェアレベルでのセキュリティ性能と、高いリモート管理機能は、特にテレワークを要求される今のビジネスシーンで使われるPCにとって、必要不可欠なものになると語る。

 当初はスペックオーバーと思われた“オリンピック公式モデル”が、4年後の東京2020本番まで稼働し続けたのは、こうした優れた先進性があってこそと言えるだろう。そして、その先進性が生きるのは、ビジネスのシーンにも通じるはずだ。

 「MPCパソコン修理工房」を訪ねた時、受付カウンターなどに設置されていたモニターには、「ビジネスを止めるな」というフレーズが表示されていた。1年延期となった東京2020を止めることなく、裏で支え続けたレッツノート。次はどんな現場で活躍するのか、その姿をまた目にするのが楽しみだ。

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