ソフトバンクG、過去最大「1.7兆円」の赤字に–孫氏「守りを固めながらARMで攻める」

CNET Japan

 ソフトバンクグループは5月12日に2022年3月期決算を発表。売上高は前年度比10.5%増の6兆2215億円、税引前損益は8695億円、当期純損益は1兆7090億円と、5兆円近い過去最高益を達成した前年度から一転して、過去最大の赤字決算となった。

 同社の代表取締役会長兼社長執行役員である孫正義氏は、その理由についてコロナ禍やロシアのウクライナ侵攻など、混沌している世界情勢が株式市場に大きな影響を与えているためだと説明している。そこで孫氏が打ち出したのが“守り”である。

決算説明会に登壇するソフトバンクグループの孫氏
決算説明会に登壇するソフトバンクグループの孫氏

 同社は新型コロナウイルスの影響で赤字となった2020年にも、4.5兆円の資金化プログラムを実施するなどして現金の確保を進めていたが、今回も世界情勢の不安に備えて現金化を継続し、また新しい投資についても基準をより厳格化して実行することを進めていくとしている。

 赤字決算で同社への負債や資金繰りを不安視する声に対しても、同社が重視する指標であるNAV(時価純資産)が18.5兆円あること、LTV(純負債/保有株式)が20.4%と、25%を上回らない水準で推移していることをアピール。ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)のNAVについては6兆円が3兆円へと半減しているが、孫氏によると「3兆円下がったが、投資した元本に対してまだ3兆円の利益があることも事実」と、下落はしているが利益は出ていると説明している。

大きな影響を受けたSVFの累計損益だが、四半期で約6兆円から3兆円下がってもなお利益は出ている状況だという
大きな影響を受けたSVFの累計損益だが、四半期で約6兆円から3兆円下がってもなお利益は出ている状況だという

 またかねて指摘がなされてきた中国への依存が強い構造についても、SVFにおける中国企業への新規投資割合は大幅に減少しているとのこと。新たな投資は継続しており、2021年度も5.2兆円分の投資を実施したが、その投資資金はSVFなど上場企業の株式を売却した資金の5.6兆円を用いて実施しているほか、守りを固めることを重視し新規投資もより厳選、1件当たりの投資額も縮小するなど、「雨が降ったら傘をさす」(孫氏)という慎重な姿勢を示している。

SFVでの投資は継続して実施しているが、その資金は上場企業の売却益を用いており、1件当たりの投資規模も縮小しているという
SFVでの投資は継続して実施しているが、その資金は上場企業の売却益を用いており、1件当たりの投資規模も縮小しているという

 ただコロナ禍の影響を受け2020年に設立し、大きな損失を出して話題となった、上場株を主体とした運用投資子会社のノーススターについては「ほぼ手じまいに近い状況にある」と孫氏は説明。ノーススターを作ったのはアリババが全体の6割の価値を占めていたことから分散化を進めるのが目的であったとのことで、完全にやめるのではなく開店休業に近いくらい縮小し、ノウハウを積み上げ必要に応じて活用する方針とのことだ。

攻めの鍵はARM、アリババを超える存在に

 その一方で、孫氏は“攻め”の取り組みもアピールしているが、なるべく資金を使わず攻めの姿勢を強めるべく、打ち出しているのが英半導体設計大手のARMに関する施策である。

 ARMのアーキテクチャを採用したチップの出荷数は290億個に達し、スマートフォンだけでなくクラウドや自動車など幅広い分野で活用されるようになっている。加えてソフトバンク傘下となって以降の4年間で積極的な投資を進めて開発した、より高付加価値を実現するアーキテクチャのバージョン9に対応したチップの出荷が増えたことで、売り上げが急上昇している。

ARMの業績は投資を進めてきた高付加価値製品の利用が増えたことで、売り上げは急上昇しているとのこと
ARMの業績は投資を進めてきた高付加価値製品の利用が増えたことで、売り上げは急上昇しているとのこと

 さらに孫氏は、ARMのさらなる成長のカギとなるのは「マルチコア」だとし、年々CPUのコア数が増えることで他社のアーキテクチャより低消費電力ながらより高い性能を出せると説明。そうしたことから今後もARMは一層成長が見込めるというが、孫氏が重要なポイントだと説明するのが既に投資が完了しており、新たな資金を投下する必要がないことだという。

 ARMは既に利益を出していることから、積極的な投資をすることなく今後多くのキャッシュフローを生み出す存在になるとしており、「NAVの中でアリババを超える比率を占める」存在になっていくと孫氏は話す。そこで注目されるのがARMの上場だが、その障壁となっていたのがARM Chinaの社長を巡って発生していたトラブルである。というのもARM Chinaでは2020年に社長の解任が取締役会で決定したものの、中国での手続きが進展せず、社長が居座り続けるという状況が続いてた。

 だが孫氏によると、今週その問題に関して大きな進展があったそうで、新たな代表者が取締役会で決議され、中国政府にもそれが認められたことから、経営正常化が進み上場に向けた準備を進められるようになったとのことだ。ただその上場時期や価値については、明確なコメントを控えている。

ARMの上場に向け懸念されていたARM Chinaを巡るトラブルは解決に向かっており、上場に向けた準備が進められるようになったという
ARMの上場に向け懸念されていたARM Chinaを巡るトラブルは解決に向かっており、上場に向けた準備が進められるようになったという

 当面は手持ちの資産を用い守りを重視した戦略を取るとした孫氏だが、今後もそうした状況が続く訳ではないと孫氏は説明。これまでもインターネットバブルやリーマンショックなどで世界の時価総額が大きく落ち込んだことはあったが、その後急成長を遂げ、1994年時点から2400倍にまで拡大していると孫氏は説明する。

 孫氏はロシアのウクライナ進行が止まったとしても、経済的制裁、そしてインフレや金利上昇などもしばらく続くと見ているという。ただ今後はは新たな冷戦状況にあることを前提とした物流やエコシステムに調整されていくことから「いつまでも悲観する必要はない」と話す。

 加えてコロナ禍でオンライン化が進んだこともあり、インターネットやAIの利用、そしてARMの出荷数などテクノロジーの進化に関連する数字は「二次曲線で増え続けている」と孫氏は説明。この状況は一時的な変動を乗り越えて止まらない進化と呼ぶべきだと孫氏は話し、情報革命に取り組むことが今後大きな成長につながるとしている。

テクノロジーの進化は今後も続くことから、一時的に時価総額が落ち込んでも将来的には成長につながるとしている
テクノロジーの進化は今後も続くことから、一時的に時価総額が落ち込んでも将来的には成長につながるとしている

 また起業家のElon Musk氏がTwitterの買収を打ち出した件について問われた孫氏は、「彼(Elon Musk氏)は最も尊敬する起業家の1人で、奇想天外な打ち手でTwitterを大きく飛躍させると思っている」と話す。ただソフトバンクグループ自身が、直接投資に関わることは現在考えていないとのことだ。

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