KDDI、通信障害対策に500億円を投資–プラチナバンドで強気の楽天モバイルに苦言も

CNET Japan

 KDDIは11月2日、2023年3月期 第2四半期決算を発表。売上高は前年同期比4.4%増の2兆7408億円、営業利益は前年同期比2.5%減の5585億円と、前四半期に続いての増収減益決算となった。

決算説明会に登壇するKDDIの高橋氏
決算説明会に登壇するKDDIの高橋氏

 同日に実施された決算説明会に登壇した代表取締役社長の高橋誠氏によると、減益の要因は7月に発生させた大規模通信障害の影響、そして燃料の高騰による影響が大きいとのこと。通信障害による返金対応で75億円、販売代理店などに対する支援や整備、保守対策で23億円、燃料高騰による影響が50億円、合計で148億円の利益が減少したとのこと。これらの影響がなければ金融やビジネスなどの成長領域が順調に伸びて「微々たるものだが、3億円の増収になっていた」と高橋氏は話している。

営業利益の増減要因。事業自体は順調に伸びているが、通信障害の影響と、基地局などの電力にかかる燃料費の高騰で減益となった
営業利益の増減要因。事業自体は順調に伸びているが、通信障害の影響と、基地局などの電力にかかる燃料費の高騰で減益となった

 高橋氏は先の通信障害を受け、決算説明会と同日に、総務省に通信障害の再発防止に向けた報告書を提出したことを明らかにしたほか、今後の通信基盤強化に向け強化している取り組みについても説明。通信障害再発防止のために組織を横断して連携する体制を強化したことに加え、9月には全社での定期的な災害訓練だけでなく、通信障害の対策に向けた訓練も実施。通信障害を引き起こした時何が起きるか、どう行動すべきかの検証を実施したという。

 さらにより抜本的な通信障害への対策として、仮想化技術を中心として、中期で500億円の追加投資を前倒しで実施するとしている。既に5Gのコアネットワークは仮想化技術の導入が済んでいるというが、今回の通信障害が大きく影響した4GのVoLTE交換機などは仮想化が済んでおらず、これを前倒しすることを主体にネットワーク強靭化への対処を進めるという。ほかにも、データやAI技術の活用によってオペレーションを高度化することにもコストをかけていきたいと高橋氏は話している。

通信障害への対策として500億円の追加投資を発表。4Gコアネットワークへの仮想化技術導入などを従来計画から前倒しで進めていくとのことだ
通信障害への対策として500億円の追加投資を発表。4Gコアネットワークへの仮想化技術導入などを従来計画から前倒しで進めていくとのことだ

 高橋氏は「私たちの事業は5Gを中心に新事業を提供する『サテライトグロース戦略』を展開してきたが、元々のネットワークの信頼性確保に取り組むことをベースにしないといけないことを改めて感じた」と説明。今後はより信頼性のあるネットワーク構築に重点を置いていく考えを示している。

KDDIは5Gの通信を軸に、さまざまなソリューションを提供する「サテライトグロース戦略」を取っているが、今回の通信障害でその基盤となるネットワークの信頼性が重要であることを改めて認識したという
KDDIは5Gの通信を軸に、さまざまなソリューションを提供する「サテライトグロース戦略」を取っているが、今回の通信障害でその基盤となるネットワークの信頼性が重要であることを改めて認識したという

 ただ今回の通信障害は業界全体にも大きな影響を与えており、通信障害の対応について総務省では引き続き周知や広報のあり方、並びに非常時にほかの事業者にローミングするための仕組み作りに関する議論が継続している状況だ。

 なかでも注目されているのは非常時ローミングに関する議論なのだが、警察や消防などの緊急通報受理機関側が、非常時ローミングでも通報者に折り返し電話ができる「呼び返し」を強く求めており、それがローミングを早期実現する上で非常に大きな課題となっている。

 この点について高橋氏は、緊急通報受理機関側が呼び戻しなどを求めていることは把握しており、通信障害時に緊急通報以外の音声通話ニーズが少なからずあったことから、通信障害発生時の音声通話にも対応していく必要があるとの認識を示す。ただ一方で、「そうするとコア側(での対応)が必要になるので、一定の時間がかかる」など、実現には時間を要することからほかの仕組みで代替することも検討していく必要があるとした。

 実際、法人向けには傘下のソラコムのSIMを用いて他社回線を代替する取り組みを進めているが、コンシューマー向け回線にもほかの事業者に声をかけ、2枚のSIMを同時に利用できる「デュアルSIM」の仕組みを用いるなど、既に存在する仕組みを用いて実現する方法を模索しているとのことだ。ちなみに高橋氏らKDDI幹部は7月の通信障害を受け、現在は他社回線のSIMも導入して通信障害時に対応できる体制を整えているという。

契約数への影響は軽微、続く楽天モバイルからの流入

 一方、通信障害による契約数への影響も気になる所だが、高橋氏は「7月の通信障害で新規契約は落ち込んだが、『UQ mobile』を中心に8月以降は回復傾向にある」と説明。実際、「au/UQ mobile/povo」の3ブランドの契約数を示す「マルチブランドID」の数は、9月には6月と同じ3093万という水準にまで回復。10月も順調に拡大しているとのことだ。

KDDIのマルチブランドID数の推移。通信障害のあった7月には一時的に落ち込んだものの、それ以降は回復し順調な伸びが続いているという
KDDIのマルチブランドID数の推移。通信障害のあった7月には一時的に落ち込んだものの、それ以降は回復し順調な伸びが続いているという

 なお各ブランドのID数について高橋氏は「auのIDが8割弱」と説明。それに加えてUQ mobileのID数が600万超、povoが以前の「1.0」と現在の「2.0」を含めて150万程度になるとのことだ。

 好調が続いている要因の1つは、月額0円で利用できる仕組みを廃止した楽天モバイルからの流入であるようだ。高橋氏によると楽天モバイルからの流入は、7月に一時的に減少したものの8月以降は流入が戻ってきており、緩和措置として楽天モバイルが実施していた、実質0円で利用できるキャンペーンが終了する10月にも「また増えている」とのこと。とりわけpovoは楽天モバイルから流入するユーザーが多いという。

 ちなみにその楽天モバイルは、現在総務省で進められている周波数の再割り当てに関する議論でプラチナバンドの割り当てを要望しているのだが、費用負担なしで1年以内での割り当てを要求するなどの非常に強気の姿勢を打ち出しており、既存3社との溝が埋まらない状況が続いている。この件について高橋氏は、「現在有効利用中の周波数を再割り当てするには慎重な議論が必要」とし、楽天モバイルの発言に「やはり言いすぎな所があると思う」と話している。

 一方で高橋氏は楽天モバイルに対し、プラチナバンドの獲得ではなくローミングの継続利用を提案している。その理由について、プラチナバンドを活用する場所は地方が主体で採算性が低く、競合同士が協力して整備する必要があることから「競争するレイヤーでは競争し、競争にならない所は設備を一緒に作るなど、もう少し柔軟に考えるのがいいのではないか」と話している。

 また高橋氏は、ここ最近の物価高の影響についても言及。減益要因となった燃料費の高騰が「一番効いている」とのことだが、ほかにも海外メーカーの端末が高騰しており「(政府による)2万円の値引き規制があるので、どうしても5Gの端末を届けるのが高くなる。工夫をしないと5G(の普及率)を上げるのに支障があると思っている」と話している。

 一方で、物価高を受けて料金を値上げする可能性については「軽はずみには触れられない」と回答を控えた。

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