リーバイスの クリエイターハウス へ注力の意味、ビヨンセ、リアーナといった投資家に迎えたデストレーの狙い【ファッションブリーフィング】

DIGIDAY

今回のブリーフィングでは次のテーマを取り上げる。

・リーバイスが5店舗目となるクリエイターハウス、ハウス・オブ・ストラウスをオープン
・オールドネイビーが価格凍結
・高速配送サービスとサーキュラーファッションブランドがコラボレーション
・デストレーがAリストの投資家を多数確保
・ブランドは供給不足を避けるべく大量購入を行っている

リーバイスが新CMOのもとで5店舗目となるハウス・オブ・ストラウスをオープン

リボルブソーシャルクラブ(Revolve Social Club)や「クリエイターハウス」なるものが誕生するよりも以前に、リーバイス(Levi’s)のハウス・オブ・ストラウス(Haus of Strauss)という存在があった。

2012年初頭、ロサンゼルスに最初のハウス・オブ・ストラウスをオープンしたのは、「インスタグラムがまだ世に出たばかりの頃だった」と、リーバイスのCMOカレン・ライリー=グラント氏は振り返る。169年の歴史がある同社は、現在は5つの「ハウス」を運営している。消費者は入ることのできないその空間は、影響力のあるクリエイターのためのデニムに特化した遊び場のような場所だ。ハウスはロサンゼルスのほか、東京、ヨハネスブルグ、ロンドンを拠点とする。そして3月には最新のハウスがメキシコシティにオープンした。来年には、新たにもう一軒がオープンする予定だ。

厳選された招待客しか入れない特別な空間

この空間のコンセプトとアクセシビリティについては、ハウス・オブ・ストラウス・アフリカの従業員が、地元インフルエンサーのサンドルウェス・ツェキソ氏(インスタグラムのフォロワー数10万人)によるYouTube動画の冒頭で説明している。2022年2月に公開された28分間のその動画は、パワーアップしたフィッティングルームでの試着の様子や、現場のテーラーと一緒に自分独自のスタイルのセレクションをカスタマイズするといった、ハウスにおける体験をツェキソ氏が記録したものだ。

「私たちは何も売っていないし、あなたは何も買えない。それに招待客限定なので、この空間に入る権利を購入することもできない」とその従業員は説明した後で、デジタルネイティブなインフルエンサー以外の人々も招待していると話した。「流行に敏感で、発想が面白く、すばらしいことを成し遂げていて、コミュニティと協力しているクリエイターたちと私たちは連携している。人々がやっていることに注目し、それに応じてその人たちを招待している」。

ライリー=グラント氏いわく、ラッパーのキッド・カディ氏はメキシコシティで撮影をしているときにこの場所を知り、すでにハウス・オブ・ストラウス・メキシコシティを訪れている。カディ氏は、その数週間前にもハウス・オブ・ストラウスLAに立ち寄っていた。

人脈を形成してブランド認知度を高める

ハウスは文化的拠点における文化の中心地としての役割を果たし、世界でもっとも影響力のある都市の領域で音楽や食、アートを融合させる、とライリー=グラント氏は説明している。その目的は、1対1のサービスや限定パーティーを通じて「安全な空間」を提供し、アートやエンターテインメント業界の人々との関係を育むことにある。その結果としてリーバイスにもたらされるものは、ブランドの認知度向上と、それによって売上を伸ばすことだ。

ハウスを通じて本物の絆を形成し、価値あるコンテンツ制作の土台を作ることでリーバイスは多くのオーガニックなリーチを獲得しており、プロダクトプレイスメントに金を払うことはほとんどないという。たとえば、2017年、LAのハウスは同ブランドのタイプIII トラッカージャケット(Type III Trucker Jacket)の50周年記念イベントを開催しており、スヌープ・ドッグ氏やソランジュ氏といったパフォーマーが参加した。イベントにはジャスティン・ティンバーレイク氏を含む50人の影響力のある人々が出席し、ジャケットをカスタマイズしたことが報道され、高いソーシャルエンゲージメントを生んでいる。

ハウスで得たことを実店舗やイベント、製品開発に活かす

ライリー=グラント氏は、ハウスで学んだことが店舗でのプロセスやイベント、オフサイトでのアクティベーションに活かされているという。店内テーラーサービスは、ハウスでスタートしたコンセプトだが、いまではブランドの旗艦店における特徴的な要素となっている。先週末、リーバイスはセレブが集うネオン・カーニバル(Neon Carnival)のスポンサーとしてコーチェラ(Coachella)に戻ってきた。そのホストはパリス・ヒルトン氏が務めた。

ハウスは「私たちが手にしているもっとも効果的なマーケティング手段」とライリー=グラント氏は述べ、対応する市場やそれ以外でのビジネスにハウスがハロー効果を及ぼしていることを強調した。

もちろん、もっと効率的な販売促進の方法はほかにもある。だが、リーバイスはパンデミックが始まった頃から、ローワーファネルのマーケティング戦術を優先しても利益をもたらさないということを学んだ。同社は、2020年第2四半期から4四半期連続で前年比2桁の減収を記録している。

ローカライズのおかげで中南米市場が好調

だが例外は、中南米市場だった。ローカライズしたタッチポイントをいくつか導入したことで、2021年第1四半期、リーバイスは中南米で前年同期比70%の売上増を記録した。ローカライズには、メキシコ、アンデス地方、ブラジルにおけるさまざまな形態での新店舗オープンやリニューアルが含まれている。

リーバイスの最新の収益報告となる2022年第1四半期は、前年同期比で全体的な収益は22%増を示している。

「アッパーファネル戦術だけでなく、ローワーファネル(戦術)も取り入れる必要がある」とライリー=グラント氏は言う。「Covidの後、私たちは大規模なブランド構築の時期から目をそらし、活動の領域のもう一端に向かう方向に多くの時間を費やした。それは短絡的な動きだったため、株価が下落し、資産も失った。だからいまはバランスの取れたアプローチを取るように心がけており、ハウスへの注力もその一環だ」。

ハウスがマーケティングツールであることは間違いないが、リーバイスの製品開発においてもハウスは参考になっている。さまざまな業界のクリエイターたちにデニムスタイルを(思いのままに)デザインさせることで、「どんなトレンドが生まれ、何が共感を呼び、人々がどのようにデニムを履いているのかを学んでいる」。

それぞれのハウスはローカルマーケットを反映する

2021年2月にCMOに任命されたライリー=グラント氏はリーバイスには長く在籍しており、ハウス・オブ・ストラウスを最初に実現したチームの一員でもある。当初のコンセプトは「デジタルというよりもアナログ」だったというが、最近のハウスはインスタグラムを意識してデザインされている部分もあることを認めている。

ハウスのアクティベーションを指揮するのは、LAを拠点とするエンターテインメントマーケティングのグローバルヘッドと、各市場にいるチームメンバーだ。エージェンシーパートナーはサポートを提供する。またハウスは、消費者に公開されるポップアップを時々主催している。

音楽、製品のキュレーション、招待客など、それぞれのハウスには、その地域の市場を反映した独自性のある要素を持っている。また同時に、イノベーションを優先するが、常にリーバイスのDNAを北極星指標としている。ローカライズされたアプローチにも関わらず、各ハウスはリーバイスブランドを最大限に表現していると、ライリー=グラント氏は語る。

ハウス・オブ・ストラウス・メキシコシティには、リーバイスの製品に装飾を付け加えたり、カスタマイズを行ったりするためのテーラーが6人常駐しており、世界にひとつしかないアイテムを作ることができる。また、ビンテージショールームも併設しており、そこでしか買えない限定アイテムもある。フィッティングルームには、調節可能な照明、カスタムプレイリストを再生できるサウンド機器、iPhone用の三脚が設置されている。ゲストは併設のフォトスタジオで、プロにルックの撮影をしてもらうことも可能だ。さらにミュージックルームでレコードを回し、ドリンクを飲みながらくつろぐこともできる。

パンデミックの影響でオープンが遅れたハウス・オブ・ストラウス・メキシコシティが本拠地とするのは、1880年代に建てられた3階建ての邸宅である。地元のキャンドルメーカーがこの空間のための香りを作り、基調となるブルーの色彩はリーバイスとメキシコの両方を反映して選ばれている。

オールドネイビーは新学期のあいだ、価格を凍結

4月20日、ナンシー・グリーン氏のCEO退任を発表する2日前の水曜日、オールドネイビー(Old Navy)は新学期のショッピングシーズン終了まで、キッズ商品の価格を凍結するという新たな取り組みを明らかにした。2022年3月のNPDデータによると、オールドネイビーはキッズ市場でもっとも多くのシェアを占めている。同社は、カテゴリー別に事業を展開していない。

この動きについて、オールドネイビーのバイスプレジデントでジェネラルマネージャーのアンドレス・ドロンソロ氏は「我々は皆、インフレ上昇の統計を見聞きし、それについての記事を読んでいる」とGlossyに語った。「このような環境が家族に与えるプレッシャーを理解しており、いまこそ(我々の)信頼できる価値方程式を実現する重要な時期だと考えている」。

ドロンソロ氏は、同社がこれまでに実施した値上げについてはコメントせず、「我々は価値ある分野のリーダーであり続けることを目標に、業界の逆風を考慮して常に価格設定を評価している」と述べるにとどめた。

高速配送サービスは、ファッションの循環性を解き放つカギとなるか

リサイクル可能なスニーカーを製造するサウザンドフェル(Thousand Fell)と、ニューヨークを拠点とする高速配送サービスのゴリラズ(Gorillas)は、4月21日木曜日からリサイクル可能な繊維廃棄物の無料引き取りを開始する。サウザンドフェルの創業者であるスチュアート・アーラム氏とクロエ・ソンガー氏によると、通常、顧客は1足のスニーカーを8~10カ月間履くという。サウザンドフェルのリサイクルパートナーはスーパーサークル(SuperCircle)だ。同社は、1足の靴をリサイクルするごとに20ドル(約2600円)のクレジットを顧客に提供する。

「ゴリラズのチームと協力して、できる限りプロセスを合理化した」とアーラム氏は言う。顧客はバッグを注文して、ゴリラズのドライバーが待っている間にそのバッグにアイテムを投入するか、ゴリラズのドライバーが次の靴を配達した際に古い靴を手渡すかのいずれかの選択肢があると彼は説明した。また、ゴリラズのニューヨーク市内の店舗で靴を渡すこともできる。

「大多数の人々が、そういう選択肢があるなら古着やスニーカーをリサイクルしたいと思っていることがわかった。そうするにはどこに行けばいいのかわからないだけなのだ」とソンガー氏は言う。「特にニューヨークでは、利便性という要素が最大の障壁となっている。私たちのコミュニティは、以前からこのようなものを求めていた」。

これはゴリラズにとって初のピックアップの提携となる。だがゴリラズの米国事業の責任者であるアダム・ワセンスキー氏は、同社はUPSと連携し、4月18日から顧客がドライバーに商品を送り返してもらえるようにしたばかりだと述べている。

ファッションブランドのデストレーはどのようにしてビヨンセ氏とリアーナ氏を投資家として迎えたか

4月20日水曜日、パリを拠点とする既製服ブランドのデストレー(Destree)は、シリーズA資金調達の発表で、ポップカルチャーの有力者が参加することを表明し、話題を呼んだ。ベンチャーキャピタル会社のセコイア・キャピタル・チャイナ(Sequoia Capital China)に加わったのは、ビヨンセ氏、リアーナ氏、ジゼル・ブンチェン氏、ジェシカ・アルバ氏、リース・ウィザースプーン氏など、多くの人物だ。

創業6年となる同社は、TikTokを席巻する「静かなラグジュアリー」のトレンドを代弁する企業で、今回の資金調達を、新たな人材の雇用、デジタルマーケティングの強化、海外の大都市での実店舗の展開拡大に用いることを計画している。現在、売上の60%はダイレクトチャネルによるものだ。

共同創業者のジェラルディーヌ・ギヨ氏は、出資者の多くがすでにブランドアンバサダーであることに言及し「その成功を高く評価できる、力のある意欲的な女性たちに囲まれることは、私にとって重要なこと。(そしてビジネスの)あらゆる側面で女性たちを確実にエンパワメントしていきたい」とGlossyに語った。

彼女はまた「これほど多くの刺激的な女性たちが、私たちのビジョンを信じてくれていることに対して非常に頭が下がる思いだ」とも述べている。

ブランドと小売業者は、大量購入することで在庫問題への予防対策を取っている

これは、卸売プラットフォームのブレティン(Bulletin)の新しいレポート「小売のニューノーマルをナビゲートする(Navigating Retail’s New Normal)」によるものである。

「大量に注文することへの恐怖を克服しなくてはならなかった」とレポートで述べていたのは、小売業者ボン・ファム(Bon Femmes)のオーナーであるトーラ・アキンビイ氏だ。「この時点では、もっとも必要とするときに十分に在庫がないよりは、多すぎるくらい抱えていたほうがいい。先行投資の費用は楽しいものではないが、長い目で見るととても助かる」。

「2020年と2021年、多くのブランドがもはや在庫を生産できなくなったり、海外からの生地や素材が不足したり、特定の製品に対する需要の急増を予想できなかったりした」とブレティンの共同創業者でCOOのアリ・クリーグスマン氏はGlossyに語った。

小売業者は、大量購入と同時にドロップシッピングモデルに移行することで、経営の予防対策を取っている。そうすることでサプライチェーンの「不都合」を軽減し、品揃えを容易に拡大することができるという。

ブレティンは、プラットフォーム上のブランドの「マーチャンダイジングの解除」をより厳格に行うようになった。

「もしブランドが注文を失効させたり、何度も注文を取り下げたりするようなことがあれば、我々は小売業者がそれらのブランドを発見しにくくなるようにする」と彼女は述べた。「また、先月初めて在庫トラッカーを導入したので、ブランドが実際に手元にある在庫や早急に出荷できる在庫を、小売業者に対してよりうまく紹介できるようになっている」。

[原文:Fashion Briefing: The original creator house, Levi’s Haus of Strauss opens in Mexico]

JILL MANOFF(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)

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