アジア系「ネットスーパー」の起業家たち、米国で増殖する:アジア系人口の増加とパンデミックを背景に

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アジアのスナックや、ほかの食料品を米国全体の消費者に販売するニッチなオンラインマーケットプレイスは、現在ゴールドラッシュを体験している。

アジアの食品やほかの商品を扱うD2Cマーケットプレイスのヤミ(Yami)は3月30日、シリーズB資金調達で5000万ドル(約62億円)を調達したことを発表した。アジアおよびヒスパニックのe食料品店であるウィー(Weee)は2月に、シリーズEラウンドで4億2500万ドル(約527億円)を調達したと語った。ウマミカート(Umamicart)は12月に終了したファンドレイジングで600万ドル(約7億5376万円)を集めた。

アリックスパートナーズ(AlixPartners)のマネージングディレクターを務めるジョエル・ランポールト氏は次のように述べている。「この分野は現在、全体として魅力的なものだ。人口のなかでアジア系アメリカ人の割合は増えつつあり、それらの人々の消費は大きな額になる。そして、本物の食品を体験してみたいアジア人以外の人々も数多く存在する」。

アジアの食料品は歴史的に市場で扱われることが少なく、多くの場合は従来型の店舗の小さなセクションでしか扱われていなかった。アジア人の消費者の数が増え、パンデミックのあいだにオンライン食料品店の需要も増加したことが、投資家の注目を集めるきっかけになったと、ランポールト氏は語る。

戦略アドバイス企業のブリックミーツクリック(Brick Meets Click)と、食料品のeコマースソリューションプロバイダのマーカタス(Mercatus)によれば、米国の2021年におけるオンラインでの食料品売上高は合計で977億ドル(約12兆1000億円)に達した。米国の家庭の70%以上は、1年間に最低1回の注文を行った。

「これらのビジネスでは、根本的に利益の構造が魅力的であると信じられている」と同氏は述べる。販売される商品の多くは輸入品で、長距離の輸送が必要だが、これらの小売業者はプレミアム価格で商品を販売できる。「対象となる層の人口が増加していくことから、将来の成長の可能性も有望だ」。

需要が十分に満たされていない市場

ピューリサーチセンター(Pew Research Center)が2021年に公開したレポートによれば、米国のアジア系人口は、2000年から2019年にかけて81%増加した。アジア系アメリカ人は、同国のすべての人種および民族のグループと比べても、もっとも急速に人口が増加した。

しかし、小さな都市ではアジアの食料品を入手するのは依然として難しいことを、ヤミの創設者でCEOを務めるアレックス・ジョウ氏は、カンザス州立大学(Kansas State University)の学生だったころに実感した。普通のアジアの食材を買いに行くため、「大げさでなく、車で2時間くらい走る必要があった」と同氏は述べている。「そこで私は、アジアの商品を取り扱うeコマース企業をはじめることを考えた」。

同氏は2013年にヤミを立ち上げ、2021年には前年より90%も増加した数億ドルの収益を報告した。同社のSKU数は26万を超え、それ以後にアジアの化粧品、家庭用品、パーソナルケア用品などのカテゴリーに取り扱いを拡大した。

同社は今日までに、6000万ドル(約74億4000万円)の資金を調達してきた。同社の最新の資金調達ラウンドは、ジェイ・ピー・モルガン(J.P. Morgan)とジージーブイ・キャピタル(GGV Capital)が参加し、アルトス・ベンチャーズ(Altos Ventures)とバルサム・ベイ・パートナーズ(Balsam Bay Partners)により主導された。同社は最近のラウンドを使用して東海岸に倉庫を開設し、配達に必要な期間を約4日から2日に短縮するとともに、取扱商品を引き続き拡大していく予定だ。

ジョウ氏は次のように述べている。「当社は常に、顧客中心の企業だ。当社は常にカスタマーエクスペリエンスの改善に取り組んでいる。この市場は現在のところ、食料、スナック、化粧品などあらゆるカテゴリーで、需要が十分に満たされていない」。

同社は業者が増え続けるカテゴリーにいるため、すでに保有している数百万の顧客から得られたデータを活用し、他社から抜きん出ることを計画していると、ジョウ氏は語る。また同氏は、同社が保存の利くブランド付きの商品に特化し、配送の複雑性の一部を除去していくと語る。

ニッチな分野もオンライン食料品に

アジアの特定の民族グループの増大により、よりニッチなオンラインマーケットプレイスも誕生した。たとえばサラップナウ(Sarap Now)は、伝統的なフィリピンのスナック、菓子、食材に加えて、工芸品に特化している。キムシー・マーケット(Kim C Market)は韓国の高級食品や台所用品を販売している。

一方でボックス(Bokksu)は、日本の食品やライフスタイル商品を販売している。同社は1月に、1億ドル(約124億円)の評価額で、シリーズAの資金調達で2200万ドル(約27億3000万円)を集めたことを発表した。同社はこの資金を活用し、サブスクリプション、市場、および食料品ビジネスのラインを増強することを計画している。

ウマミカートは新しい資金で、自社商品とその販売範囲の拡大を計画している。同社の共同創設者でCEOを務めるアンドレア・シュウ氏は、「当社はおそらく、今後数カ月にカタログの品目を最低でも2倍に増やすだろう」と、以前米モダンリテールに語った

アリックスパートナーズのランポールト氏は次のように述べている。「これらの投資企業の多くは、同じ基礎分析を行い、同じ結論、すなわちこれらが魅力的な分野だという結論に達する。そして当然、投資が増えるほど起業家も増えていく」。

膨大な資金の調達を経験したほかのカテゴリーと同様に、最良の資金、運用、顧客ベースを持つオンラインのアジア食料品販売店が、やがては大きく成長し、小規模な競合他社を買収する可能性があると、ランポールト氏は語る。

実際のところ、統合はすでにはじまっている。10月にウィーは、非公開の金額でオンラインのアジア食品配送会社のリセポ(Ricepo)を買収した。ウィーはその時点で、この買収により同社はレストラン配達サービスを拡大可能になると語っていた。

ランポールト氏は次のように述べている。「この種のビジネスでは、相当に大きな規模に成長しない限り、競合することは急速に不経済となっていく。統合を行ってより大規模になることを求める圧力は強くなるだろう」。

[原文:Why Asian online grocery startups are nabbing funding]
Maria Monteros(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:黒田千聖)
Image via Yami

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