ソニア・オブリティー氏は皆と一緒に向上していくタイプだ。チームワークを大切にしており、地位や肩書に関係なく、チーム全員の声に価値があると考えている。
これはオブリティー氏の性格の一部を成している。同僚たちは同氏の性格を協力的でインクルーシブ(包摂的)と表現する。このふたつの特性は、オブリティー氏の現在の役割と合っているように見える。オブリティー氏は現在、OkCupid(オーケーキューピッド)のシニアグローバルマーケティングディレクターを務めている。
43歳のオブリティー氏は2年半前に現職に就任。ともに働いてきた人々によれば、就任以来、ドイツ、トルコ、イスラエルなどの新市場に出会い系プラットフォームを拡大し、OkCupidに多大な影響を与えているという。
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「出会い系業界の空白を埋める」
シニアPRマネージャーのクリステン・カリー氏はメール取材に対し、「ソニアはマーケティングチームの古参として、これまで軽視されてきたコミュニティの代弁者となり、多くの人に疎外感を与えてきたオンラインデーティング業界の空白を埋めようとしている」と説明する。
LinkedIn(リンクトイン)のコーポレートコミュニケーションマネージャーで、かつてOkCupidのシニアグローバルPRマネージャーを務めていたマイケル・ケイ氏によれば、OkCupidは2021年夏、ヨーロッパで初めてドイツ語版の展開を発表した。ケイ氏はオブリティー氏の元同僚として、このキャンペーンはオブリティー氏のもっとも注目すべき実績のひとつだと述べている。ジェンダーを意味するドイツ語をハートマークに置き換えるなど、ジェンダーニュートラルな言葉を採用したためだ。
その結果、オブリティー氏は2021年、インサイダー(Insider)のライジングブランドスターに選出された。
また、OkCupidがドイツのLGBTQ+擁護団体CSDドイチュラント(CSD Deutschland)とパートナーシップを結び、ベルリンのプライド月間に参加したときも、オブリティー氏が指揮を執っていた。さらに、米国では、黒人歴史月間の取り組みとして、オブリティー氏の思慮深いリーダーシップによって、黒人が経営する企業のリストが作成された。
「オブリティー氏はOkCupidのインクルーシビティへのコミットメントを前進させ、黒人やLGBTQ+だけでなく、文字通りすべての人を受け入れたことで知られるようになるだろう」とケイ氏は予言する。
インサイダーによれば、オブリティー氏の努力は実を結び、OkCupidは2021年、トルコとドイツで前年比2~3桁成長を記録した。
よりインクルーシブであるために
オブリティー氏は自身の役割のユニークな部分として、国、さらには、文化によって異なる現地のデート文化の理解を挙げている。「学ぶことがたくさんある。世界における我々の位置付けは、よりインクルーシブであること。この位置付けに合わせなければならないことが山ほどある」。
オブリティー氏が優れているのは好奇心、インクルーシビティへのコミットメント、そして、ジェンダー、セクシュアリティ、文化、宗教、国籍など、さまざまな市場をまたいで実行できるコラボレーションのアイデアを推進する能力だ。チームメイトたちによれば、オブリティー氏は通路を横断し、異なる視点が反映されるようにすることで知られる。オブリティー氏自身も、同僚を会議に招待するときは、それぞれの考えを共有してもらうつもりで、声を掛けることを恐れないと述べている。
「私が人を雇うのは、私に足りないものを補ってもらうためだ。私は自分自身の体験から、素晴らしいアイデアを思い付いたとき、黙って座っていることがどういうことかをよく知っている」とオブリティー氏は話す。「私は皆に発言権があることを実感してほしい」。
人がついてくるリーダーになるには
オブリティー氏が初めて世界規模のマーケティングに携わったのは2000年代前半。エスティ・ローダー(Estée Lauder)の一員として、トミー・ヒルフィガー(Tommy Hilfiger)、ダナ・キャラン(Donna Karan)といったデザイナーのグローバルブランド戦略を作成した。オブリティー氏はエスティ・ローダーで、さまざまな市場のキャンペーン展開やストーリーテリングについて学んだ。一度に4つのブランドを担当し、威厳のあるリーダーになる方法を学んだと振り返る。
「どのような立場でもリーダーになることはできる。シニアバイスプレジデントである必要はない。特に、我々がいるようなマーケティングの世界では、戦略を示せば人々は付いてくる」。
オブリティー氏は自身のビジネス感覚について、ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス(Walgreens Boots Alliance)で身に付けたものだと述べている。オブリティー氏はまずシニアブランドストラテジストを務め、2015年、北米のシニアブランドおよびマーケティングマネージャーに就任した。そこでKPIの設定方法や損益の測定方法を学んだ。
そうした経験のおかげで、限界を押し広げ、大きく考えることができるようになり、マーケター、チームリーダーとして成長したとオブリティー氏は語る。
「私は今、ユーモアと個性、共感を持ってチームを率いることができている。我々には信頼がある。その信頼関係があれば、チームはうまく機能する」。
KIMEKO MCCOY(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:猿渡さとみ)