ビジネスインフルエンサー 、ダルマ・アルタン氏による戦略はTikTokで熱狂を生むのか?

DIGIDAY

現在進行中の「雰囲気の変化」については、すでにだれもが気づいている。

この美意識の変化はInstagramからTikTokへの移行と密接に関係しており、米Glossyやその他の媒体で解説され、議論されてきた(いくつかの例としてまずはこちらこちらこちらの記事など)。

美意識の変化には、トーンの変化が伴う。そしていま、それは徹底的な透明性を意味しており、かつてD2Cブランドが定義しようとした方法とは異なっている。

ビジネスインフルエンサーの台頭

人々はさまざまな理由でインフルエンサーをフォローするが、多くの視聴者はだれかのハイライトリールを見るような華やかさに飽き飽きしている。人々はもっと透明性を求めているのだ(多くのインフルエンサーがいまブランドを立ち上げているのも、それが理由のひとつだ)。

たわごとでごまかさずにストレートに伝えるコンテンツが求められていることが、新しいタイプのインフルエンサーが台頭している理由なのだろう。たとえば、従来の美の基準を満たしてないことを気にしない、あるいは散らかったベッドルームで恥ずかしがらずに撮影しているファッションインフルエンサーも存在する。

しかしおそらくもっとも興味深い兆候なのが、「ビジネスインフルエンサー」の台頭だ。TikTokを活用して継続的にマスタークラスのようなものを主催している人たちの総称として、私はそう呼んでいる。個人的に気に入っているのは、TikTokで@IAmDulmaと名乗っているダルマ・アルタン氏だ。彼女のプロフィールには次のように記されている。「女性のためのTikTokビジネススクール🎓」。彼女には5万1000人のフォロワーがいて、コンテンツには140万以上の「いいね!」がついている。

純粋に楽しむために投稿を始めたという彼女の動画は、創業者とCEOの違い、グロッシアー(Glossier)やプリージング・バイ・ハリースタイルズ(Pleasing by Harry Styles)といったブランドの徹底分析、「そのうち消える8つのセレブブランド」といった大胆発言など、さまざまなテーマを扱っている。

TikTokでキャリアとパーソナルブランドを加速

アルタン氏はブラウン大学を卒業した29歳の起業家だ。彼女は最初のスタートアップであるポーション(Potion)というフレグランスディスカバリー企業を閉鎖し、現在は女性起業家のためのオンラインマスタークラスであるメイクレーン(Makelane)に注力している。彼女のTikTokは、彼女自身のキャリアとパーソナルブランドを一気に加速させた。TikTokというソーシャルメディアプラットフォームの成長に伴い、アルタン氏には起業家仲間から、アドバイスがほしい、あるいはコンサルタントとして雇いたいという問い合わせが来るようになった。

彼女は自分のことを美容の専門家とは思っていないが、その代わりD2Cには精通している。「ブランド作りやストーリーテリングにより魅力を感じている」と彼女は言う。「美容という産業は、その点がとてもぴったりだ」。

セレブリティを注目ネタにビジネスについて語る

Zoomで比較的短い時間チャットしただけでも、アルタン氏は非常に自分に正直な人だと感じられるが、まさに彼女はそうした方法でスタートを切った。TikTokでは100日間コンテンツを作ることに挑戦し、フォロワーを増やした。当初、彼女は流行に乗ったはいいが、TikTokのオーディエンスの数は停滞していた。そんな彼女に、YouTubeクリエイターのマネジメントを仕事にしているルームメイトが、シンプルな質問という形で貴重なアドバイスをしたのだ。それは「実際に投稿したいことは何?」という問いだった。アルタン氏の答えは「ビジネスやブランドについて熱く語りたい」だったが、TikTokにそのようなコンテンツのオーディエンスがいるとは彼女には思えなかった。「TikTokでうまくいきそうなことと自分が話したいことの接点をどうやって見つけたらよいのだろうか、と悩んだ。大手のアカウントの多くがカーダシアン家について話していたのをみて、『OK、じゃあ私もカーダシアンブランドについて話してみよう』と思った」。

2021年10月、アルタン氏がクリス・ジェンナー氏の人生について作った動画は6万回再生されている。その後、多くの動画をすべて同じ日に投稿し、「あなたが知らないかもしれない、カーダシアンビジネスの7つの恥ずかしい大失敗」を展開、240万ビューを獲得した。それからすぐにアカウントが成長したとアルタン氏は振り返る。「TikTokでビジネスについて話すためのおとりとしてセレブリティを利用した」。そこからさらに「スキムス(Skims)やスパンクス(Spanx)、女性創業のブランド全般」へと広げていった。グロッシアーに関するコンテンツも特に好調だったとアルタン氏は述べている。彼女が作成した2021年11月の「なぜグロッシアーは企業としてはポシャるかもしれないのか」というタイトルの動画は、61万5000回以上再生されている。アルタン氏は「消費者ブランドのエグゼクティブや投資家は、グロッシアーの動画で私を見つけたと言っている」と語った。

将来的にはTikTokにビジネスコンテンツが増える

アルタン氏のオーディエンスは業界人と消費者に分かれている。一方で、もっとも話題になっている新しいテレビ番組をいくつか見ればわかるように、起業家精神(特にちょっとしたスキャンダルに関するもの)もメインストリームとなっている。ドラマミニシリーズ「ドロップアウト~シリコンバレーを騙した女(The Dropout)」は、セラノス(Theranos)の創業者エリザベス・ホームズが起業家から詐欺師へと転落した様を追い、「スーパーパンプト(Super Pumped)」はウーバー(Uber)に注目、「WeCrashed~スタートアップ狂騒曲~(WeCrashed)」はウィーワーク(WeWork)の凋落を描いている。アルタン氏は「ビジネスをしていない、あるいはビジネスを始めたいという願望すらないたくさんの普通の人たちが、私のコンテンツにとても興味を持っている。人々は、誇大広告に力を入れて実質が伴わない多くの企業に疲弊し始めている」と話す。たとえば、アルタン氏が高価で質が悪いと感じると名指しでセレブリティの製品を取り上げる動画は、確実にヒットしている。この投稿には「金を巻き上げるようなビジネスはもうやめて😩」というキャプションが付いている。

その反面、彼女はTikTokがB2Bリソースとしての可能性をほとんど活用していないとも考えているが、TikTokでは10分間の動画を導入する準備を進めているため、これは急速に変化するかもしれない。この動きは物議を醸しているが、アルタン氏は「言いたいことがたくさんある」ので大いに支持しているという。

「ほとんどの人は、『(Tiktokは)ライフスタイルインフルエンサーが面白いことを話したり、ダンスをしたりしているだけ』と思っている。でも実際には、このプラットフォームは年々成熟しているため、TikTokでより多くのビジネスコンテンツが見られるようになるだろう」。

[原文:Glossy Pop Newsletter: Dulma Altan makes business strategy TikTok addictive]

SARA SPRUCH-FEINER(翻訳:Maya Kishida 編集:猿渡さとみ)

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