大麻産業界で進む、 消費者データ 洗練化の狙いとは:「ビールの支出と同規模の消費者がいる」

DIGIDAY

メディアとマーケティングの世界には、いまやあらゆるところにデータが存在する。この現実を前にして、大麻関連のマーケティングに携わる企業や、大麻コンテンツを配信するメディアがデータハウスの構築に乗り出すのはもはや必然だった。

大麻市場の事業機会が広がる反面、これを阻む障害は依然として存在する。国の基準の不備や世論の反発はもとより、大麻供給者のあいだには、やはり大麻はアンダーグラウンドなビジネスであるという拭いがたい意識がある。データの洗練化を進める目的は、消費財メーカー(CPG)やクィックサービスレストラン(QSR)らを含むより広範な広告主に、大麻消費者はマーケティングの対象たりうる人々だと認めさせることなのだ。実際、彼らを単なる「大麻の消費者」と見るのは誤りかもしれない。

ビールへの支出額とほぼ同額

米DIGIDAYが掴んだ情報によると、大麻業界に特化した分析技術企業のニューフロンティデータ(New Frontier Data:NFD)が、大麻コンテンツを扱うメディアを含め、多様なパブリッシャーと連携するプログラマティックプラットフォームのスマート(Smart)とパートナーシップ契約を結んだ。この提携により、スマートは、大麻使用者のデータを集めたNFDのデータマネジメントプラットフォーム「ネクステック(NXTeck)」を通じて、1億6000万人の消費者データにアクセスできるようになる。

現在、NFDはこのセグメントのデータ生成を急ピッチで進めている。同社が(北米の大麻使用者がマリファナの日と呼ぶ)4月20日に発表した報告書「米国における大麻消費者:2022年にノーマライゼーションを促す力学(Cannabis Consumers in America: Dynamics Shaping Normalization in 2022)」によると、2021年の大麻消費は合法・非合法を合わせて970億ドル(約12兆円)にのぼる。NFDはこの金額がビールに支出される1000億ドル(約13兆円)とほぼ同額であることに注目し、大麻消費者が、大麻を使用しない人々と何ら変わるところのない、メインストリームのマーケターにとって魅力的な存在であるという実像を描こうと試みている。

NFDのゲイリー・アレン最高経営責任者(CEO)はこう話す。「大麻消費者は、大麻を使用しないCPG消費者と何ら変わるところはない。メディアバイヤーが適切なオーディエンスを理解するのと同じ手法で、彼らをセグメント化することができる。そして高度なテクノロジーを活用することにより、大麻を扱うマーケターのみならず、成熟産業のマーケターも確実に保護しながら、有効なターゲティングを実行できる。そして両者の線引きはあっというあいだになくなるだろう。QSR業界のメディアバイヤーなどが、この種のデータを大量に購入している」。

NFDとスマートの提携によって、メディアバイヤーたちはネクステックのセグメントを有効化し、パフォーマンスやビューアビリティなど、ほかのターゲティング条件と組み合わせながら、スマートのプラットフォーム上でカスタムのオーディエンスパッケージを生成できる。

「検討に値する選択肢だろう」

「まさに好機到来だ。クリティカルマスにも到達している」。そう話すのは、独立系メディアエージェンシーのアポロパートナーズ(Apollo Partners)でCEOを務めるエリック・ペルコ氏だ。「大麻を許容する空気は広がりつつある。デジタルでの購入も可能だ。大麻消費に関連するデータは、一部のブランドにとっては非常に高い価値を持ちうる。たとえば、食事と大麻の使用は自然と重なる。昔ほど悪いイメージもない。大麻に忌避感のない、積極果敢なブランドにとっては検討に値する選択肢だろう」。

スマートでデマンドパートナーシップの責任者を務めるテッド・モンタヌス氏は、「容易に結果の出せるカテゴリーに限定しない」と話す。「QSRは当然として、日曜大工を趣味とするホームデポの利用者や、サステナビリティを重視する人々、あるいは一般的な医薬品はあまり使いたくない健康志向の消費者なども検討対象だ」。

NFDのアレン氏は、「長期的な目標は、これまでのように訴求対象を狭めないことだ」と述べている。「大麻の消費者は大麻を消費するだけの人々ではない。このことを世間に理解してもらいたい。我々は米国内の90万超の小売店舗を通じて彼らを追跡している」。

大麻分野のほかのプレイヤーたちも、データの洗練化やアドテクの活用といった進歩が、この分野に新たな収入を呼び込むと考えている。「大麻が主流化するに伴い、いわゆる『典型的な大麻使用者』がいなくなるのは当然のことだ」と、アクセラレーション・コミュニティ・オブ・カンパニーズ(Acceleration Community of Companies)という独立系の持株会社で最高クライアント責任者を務めるモニカ・チュン氏は述べている。「いまでは、製品の形状、求める効果、使用の動機、ライフスタイルなどに基づくターゲティングが可能となっている。メッセージやソリューションの個人化も可能だ。これらすべてが合わさり、大麻使用の正規化と汚名返上が進むだろう」。

「ほかに類を見ない貴重な存在」

大麻を扱うプログラマティック/データプラットフォームのフィロ(Fyllo)で、最高パートナーシップ責任者を務めるスティーヴ・ケイトルマン氏は次のように述べている。「大麻消費者は急速に主流化している。そしてデータの示唆するところでは、彼らは大麻ブランドのみならず、メインストリームのブランドにとっても、もっとも影響力のあるオーディエンスのひとつであるようだ」。

さらに同氏は、MRIシモンズ(MRI Simmons)のデータを示しながら、「大麻またはCBD使用者の90%近くが過去30日間にQSRを外食またはデリバリーで利用している」と指摘した。「CPGブランドにとって、彼らがターゲットとなりうることは明らかだろう。新規のオーディエンスへのリーチは、マーケターなら誰でも希求する聖杯だ。そしてデータを見る限り、アーリーアダプターや好奇心の強い冒険的な消費者にリーチしたいメインストリームのブランドにとって、大麻消費者はほかに類を見ない貴重な存在だといえる」。

実際、ケイトルマン氏によると、フィロはクロロックス(Clorox)やウーバー(Uber)といったより広範なブランドから新規の契約を集めている。「大麻業界以外のブランドから入る広告費が大きく伸びているのもそのためだ」。

[原文:Media Buying Briefing: Sparked up by data, new advertisers buy into cannabis marketing

Michael Bürgi(翻訳:英じゅんこ、編集:黒田千聖)

Source

タイトルとURLをコピーしました