Amazon 、「物理的」広告への野心を拡大:競合他社が追随するなか

DIGIDAY

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Amazonの広告への野心は、ますます物理的な分野に拡大しつつある。

ビジネスインサイダー(Business Insider)は先月、Amazonが自社のAmazonフレッシュ(Amazon Fresh)店舗のブランドに、店舗内のデジタル広告のインベントリの販売を計画していると報告した。また、筆者はAmazonのプログラムと、同社がそれを各ブランドへどのように提供しようとしているのかを直接知っている人々と対談した。

まとめると、次のようなことが明らかになっている。

  • ビジネスインサイダーにリークされた文書によれば、Amazonは今年の第2四半期から、同社の食料品を扱う実店舗のデジタルサイネージの広告スペースを販売することを計画している。
  • また、同社はスマートショッピングカート、チェックアウトブース、冷蔵庫のドアのデジタルスモークスクリーンなど、ショッピング環境のほかの部分にインベントリを拡張することを検討中と報告されている。
  • Amazonの売りの大きな部分はそのデータである。同社のプログラムについて知識がある人々は、Amazonは各ブランドに対して、広告の再生回数、推定されるインプレッション、地域ごとのインプレッション、およびトラッキングされたASIN販売データなどの指標を提供することを売りにしていると語った。
  • このプログラムは現在のところ、すでに店舗に在庫があり、新しいASINが存在する一部のブランドのみが使用可能。

Amazonが実店舗でのデジタル広告サービスを作り上げようとしていることは驚くにあたらない。しかし、ほかの小売メディアのエグゼクティブの心胆を寒からしめるには十分なものだ。大手小売業者のほぼすべては、ブランドマーケティング用の出資をたくさん引きつけようという期待から、広告プラットフォームを作り上げつつある。ウォルマート(Walmart)、ターゲット(Target)、クローガー(Kroger)は何年にもわたって各種の広告サービスを構築してきたが、ゴーパッフ(GoPuff)、インスタカート(Instacart)、ウォルグリーン(Walgreens)、メイシーズ(Macy’s)、シーブイエス(CVS)などの他社がさらに多くの小売メディアサービスの構築を開始している。イーマーケター(eMarketer)の推定によれば、小売メディアは2023年にマーケティング経費が500億ドル(約5兆9500億円)となり、デジタル広告の経費すべてのうち20%近くを占めるようになる。

このような最近の猛攻勢にもかかわらず、Amazonは依然としてこの分野の首位を占めている。そして、それには十分な理由がある。同社と比肩するほど強固なファーストパーティデータの収集プログラムや、店舗内のトラッキング技術を保有している小売業者はほとんど存在しないことだ。

Amazonが一歩先んじる理由

ティヌイティ(Tinuiti)でマーケットプレイス戦略サービス担当シニアディレクターを務めるエリザベス・マーステン氏は、Amazonが「他社がすべて行っていることから抜け出そうとしており、ある意味一般的なこと」だと述べている。すなわち、ウォルマートやターゲットのような小売業者は自社の小売メディアネットワークを構築し、広告主がデジタルサイネージのような店舗内のスペースを購入するよう勧誘を試みてきた。これらの小売業者は各ブランドに対して、自社のファーストパーティーデータに結び付けられたDSPにより、各ブランドのデジタル対象設定を強化できると売り込みをかけている。

たとえばウォルマートは、ザ・トレード・デスク(The Trade Desk)と提携し、自社独自のDSPを昨年開始した。しかし最近の「見込み客の追跡の観点や、動き回っている人々の観点から」の進出にもかかわらず、いずれもAmazonのものほど高度なものとは思われないと、マーステン氏は語る。実際に、あるメディア購入者は昨年、当時は初期段階だったウォルマートのプログラムは、同社が広告主とのあいだで、対象設定および測定の情報をどれだけ共有可能かにかかっていると、米モダンリテールに語った

この分野で、Amazonはすでに一歩先んじている。これは、Amazon独自のジャストウォークアウト(Just Walk Out)技術によるものだ。同社のレジなし技術では、顧客にアプリをダウンロードさせ、そのアプリを使用して店舗内で顧客を追跡する。顧客は、これによって便利に買い物ができ、Amazonは貴重なマーケティングデータを得られる。マーステン氏は次のように述べている。「当社は売上とリピーターの売上に関するデータを獲得できる。これはさらに興味深いもの、すなわちLTVの一部となる」。

そして、このデータはより優れた種類の広告ユニットを作成するために役立つ。たとえば、Amazonの顧客はアプリにリストを作成し、特定の商品の横を通過したときに通知を受け取ることが可能だ。

競合他社たちの及ばない現状

一方で、ほかの小売業者には同様なことを行う能力がない。クァンメディアグループ(Quan Media Group)でCEOを務めるブライアン・ラッパポート氏は「ベストバイ(Best Buy)では、店舗内の広告用スペースを購入できる」が、「店舗内のテレビのブロックにすぎない」と述べている。

実際のところ、高度な技術を応用した店舗内の広告用商品、たとえば小売業者との提携により冷蔵庫のドアにデジタル広告を表示するクーラースクリーンズ(Cooler Screens)にも問題点があった。Redditで人気のある動画のひとつでは、誰かがウォルグリーンのクーラースクリーンズに通りかかり、デジタルスクリーンには飲み物でいっぱいの冷蔵庫の画像が映し出されているのに、冷蔵庫を開けてみると実際にはソーダの一本さえも入っていないという光景が映し出されていた。

それでも、小売メディアはわずか数年間で大幅に進歩してきた。それにより、これらのネットワークのほとんどでCPMは増加し、広告主はより優れたデータを使用して広告の対象設定を行えることを期待できるようになった。「当社はあと6から9カ月で、小売業者のファーストパーティーデータの品質を比較できるところまで達するだろう」と、ティヌイティのマーステン氏は述べている。

各ブランドは質問を投げかけるようになるだろう。「当社がターゲットやウォルマートに支払っているプレミアムは、すでに開始されているAmazonの広告と比べてどの程度のものなのか?」。

[原文:Amazon Briefing: Amazon’s physical advertising ambitions grow as other retailers play catch up]

Cale Guthrie Weissman(翻訳:ジェスコーポレーション 編集:長田真)

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