「乾きもの」といえば完全にお酒のつまみのイメージですが、しょっぱくてお酒がすすむってことは、ごはんに合わない道理もありません。日持ちもするし、もしかしてお弁当のおかずのストックにちょうどいいんじゃないだろうか。
というわけで以前からなんとなく、乾きものがメインおかずのお弁当を作ってみたいという気持ちがあったんです。で、先日買ったお弁当箱がものすごくその気分にちょうどよく、しばらくの間、あれこれ作ってみたのでそのご報告を。
かわいいお弁当箱をきっかけに
先日、ものすっごくかわいいデッドストック的お弁当箱を衝動買いしてしまいまして。
アルミ製の、バリバリ昭和な、そしてかなりコンパクトサイズの。
とはいえ、普段からお弁当生活をしているわけじゃないからあまり使う機会がない。なら買うなって話なんですが、欲しくなっちゃったんだからしょうがない。じゃあ使えばいいんじゃん! と、
こうやって全体に敷き詰めて、小ぶりのお茶碗一杯ぶん、だいだい1/3合くらいかな。40代を過ぎて食が細くなる一方の自分にはちょうどいい。
ただ、おかずが入るスペースもかなり限られています。からあげを入れて、玉子焼きを入れて、ゆでたブロッコリーを入れて、プチトマトを入れて、なんて余裕はない。
そこで冒頭の話に繋がるわけです。そうだ、乾きもの弁当を作ってみよう! と。しかもこの土台に合わせて、1日につきおかず一種類と決めて。そのストイックさが、なんだかいい気がする。
そんなわけで、もちろん外食をする日もあるので毎日ではないですが、ここ最近、家で昼ごはんを食べる日はしばしば、この「乾きもの一点弁当」を作ってみていました。そしたらこう、そこに広がっていたのは“侘び寂び”の世界というか。
それがなんだか良かったので、いくつかを見てやってください。
「焼きするめ弁当」
まずは真っ先に思いついた、するめ。こいつをごはんの上にのせてみましょう。
すると、ごはんの蒸気でするめがほんのりとそり返りだしました。実は今回の裏テーマに、この「ごはんの蒸気で乾きものに多少なりとも水気が戻らないか?」の検証があります。それも楽しみ。
というわけで、朝に作って約3時間後のお昼時、いざ実食タイム。
ちなみに、するめが税込み158円。それから、お米が10kgで約5000円で、そこから分量である1/3合の値段をざっくり計算してみたところ、約25円。というわけで、おおよその材料費も記しておきます。
まずは気になる、水分は戻ったか? 問題ですが、残念ながらほぼ戻ってませんね……。若干しっけたかな? 程度。
ただ、するめを箸でつまみ、がんばってかじる。もぐもぐもぐとよく噛む。そして冷えた白メシを食べる。すると、漫然とつまみにしていたときとはあきらかに違い、いかの味と香り、ピリ辛醤油味、ごはんの美味しさ。それぞれがしっかりと感じられて、ぜんぜんお弁当として成り立ってますよこれ!
あごが疲れるくらいよ〜く噛む必要があるからか、一食を食べた満足感もじゅうぶんだし、ありじゃないですか。乾きもの一点弁当。
「ビーフジャーキー弁当」
相変わらず戻らないな〜、肉。見た目から想像するとおりの固さだ。ただ、するめ同様よ〜く噛んで口のなかに肉の味を満たしてからごはんを食べると、ちゃんとうまい。味はお店の高級焼肉弁当に劣ってないかもしれない。
そんでもって、うま! と勢いにのって次をいこうとすると、「あ、そうだ固いんだった」とふりだしに戻る。あわてて食べると破綻するお弁当って珍しいですよね。
「イカフライ弁当」
続いては、
5枚入りで108円だったうちの1枚しか使っていないので脅威のコストパフォーマンスをはじき出してますね。それに見た目もかわいいし、こいつは推したくなる弁当だ。
やっぱり、ちょっとしっけたくらいでバリバリ感は健在です。
味のほうは、そりゃ〜もう間違いなし! いかの風味と油のインパクトで、白メシがもりもり進む。これまでのなかではいちばん食べやすいし。
ただ、ごはんのおかずとしてはかなり甘めなので、おかかしょうゆ味ののり弁の上にこれをのせるとかするといいかも。あ、のりの下にこれを敷いとくサプライズ演出のほうがいいか! 絶対ありだと思う! 今回はやらんけど。なぜなら、現在のモードはあくまで、ストイック「一点弁当」なので。
「フィッシュ&アーモンド弁当」
最近妙に好きなんですよね。
若かりしころは、地味! とか、あまつさえ、意味不明! とさえ思ってしまっていたんですが、ごめんよ、フィッシュくん、アーモンドくん。安心して。君ら、定番だけあって、相性最高だよ。
口に入れると、小魚がまとったみりん系の甘みのあと、じわじわと塩気、それから魚の旨味、アーモンドの香ばしいコクという順で、複雑な味が展開されていきます。それから、意外にもいい仕事をしているごまの風味。サクサク、カリカリ、プチプチと食感も複雑で、文句なしにごはんに合う!
もう、大好物ですこれ。
「鮭皮チップス弁当」
実はこのお弁当だけは、以前に思いついて作ったことがあるんですよね。
あの水戸黄門さんも大好物だったという鮭の皮を、サクサクに揚げてあるスナック。
1袋の約半分を使用してこの値段。
これがなんというか、焼き鮭弁当の概念を脳に直接インプットするような食べものとでもいいますか、とにかくおもしろ美味しいんです。
が、ちょっとお米の量に対して鮭皮が多かったな。このお弁当はもっと大きな土台で作り、最後に全体に醤油をちょろがけするなどの調整をすると、さらに完成度が上がるかと。
「チーズ鱈弁当」
どんどんいきましょう。
うわ〜、こ、これはごちそうだ〜! チーズの塩気とまろやかな乳製品っぽさでごはんがもりもりすすむ! というかむしろ、このチータラの量は過剰。このくらいのごはんに対してなら、チータラ3本でじゅうぶんかも。
あんまり聞いたことないけど、お弁当のおかずにチータラ、もっと気軽に入れちゃっていい気がします。あ! 細巻きにするのも絶対良さそう! あくまで今回はやらんけど。
「ミックスナッツ弁当」
豆ごはんをイメージし、混ぜごはんにしてみましょうか。
あ〜これまた、文句なしにうまいわ。なんだかお米を異様に甘く感じるんだけど、ナッツの甘さと混ざってそう感じるのかな? だとすると、お米を美味しく食べる方法としてのナッツ混ぜごはん、めちゃくちゃありですね。全体的に塩気は薄めながら、たまにくるジャイアントコーンのしょっぱさとカリカリ感が嬉しい。
「焼めざし弁当」
しみじみと噛みしめるいわしの旨味、塩気、そしてほろ苦さ。それをおかずに食べる冷えごはんの甘み。
なんだか、今自分がどんな時代に生きているのか一瞬わからなくなり、「とにかくこういうものが食べられてありがたい……」そうお天道様に感謝したくなる一食でした。今後も月一で食べよう。
「干し梅弁当」
最後はめざしと並ぶ大本命。
1枚1枚がペラッペラなので、ひとつで足りるかが不安になり、日の丸弁当ならぬ“乱視弁当”みたいになってしまいましたが。
おつまみや間食用にちょっと甘めに調整はされているものの、ごはんがすすまないはずもありませんでした。
おまけ:保温容器で作るとどうなる?
といったところで、全体的に楽しくて美味しい「乾きもの一点弁当」生活だったわけですが、最後にひとつだけ、どうしても確認しておきたいことがあります。
今回使ったお弁当箱には、保温性は皆無でした。もちろん、その存在感ゆえにこういうお弁当を作ろうと思い立ったわけで、そんなことは承知のうえなわけですが、とはいえ気になる。もし、最新技術の詰まった、真空断熱式の保温容器で作ったら、もうちょっと乾きものにしっとり感が出ないかな?
あー、なんか見た目からしてしっとりしてる! それにさすが。まだまだ温かい!
期待を胸に肉を持ち上げてみると、
これはすごい。保温容器を使わなかった場合の10倍は食べやすいですよ。というか、もはやこれ、肉が多少固いだけの焼肉弁当だ(焼いてはいないか)。いや実際、超〜うまい!
しまった……これまで長々と書いてきてしまったけど、実験検証するならこっちだったか……。いやまぁ、それはまた別の機会に。
以上、相変わらず僕は、一度思いついてしまうとやりすぎてしまうたちなんですが、週に1日「乾きもの一点弁当」を導入するだけでも、なんだか普段の食事に感謝したくなるような、日常に侘び寂び感が加わって気持ちが落ち着くような、いい効果がある気がします。
あと、「イカフライやチータラが弁当のサブおかずに便利」「保温容器があればビーフジャーキーがおかずになる」あたりは、普通に使える小技だと思うので、お弁当生活を送っている方はぜひお試しあれ。