食
食事というと味や見た目、カロリーや栄養などを連想しますが、分子生物学者によると食事は遺伝子にも大きく関連しているとのこと。食事が遺伝子に大きく影響を与えているという点について、ミシガン大学の分子生物学者であるMonica Dus氏が解説しています。
What you eat can reprogram your genes – an expert explains the emerging science of nutrigenomics
https://theconversation.com/what-you-eat-can-reprogram-your-genes-an-expert-explains-the-emerging-science-of-nutrigenomics-165867
食事が遺伝子に影響を与えるという点にピンとこなくとも、「女王蜂と働き蜂」の関係を見れば分かるはず。この2つは遺伝子的に同一の生物ですが、働き蜂が蜜や花粉を食べるのに対し、女王蜂は働き蜂の体内で合成されたローヤルゼリーを食べることで、特異固体として成長します。
Dus氏によると、食品に含まれるビタミンやミネラルといった微量栄養素が特定の遺伝子を発現させ、それにより生じる遺伝子産物が体に影響を与えることがあるとのこと。女王蜂であればローヤルゼリーが脳や臓器に影響を与えて生殖能力を活性化し、人間であればメチオニンなが細胞の成長や分裂に関連する遺伝子に、ビタミンCが抗酸化作用を促進する遺伝子に影響を与えることが知られています。
食事が遺伝子に与える影響は世代を越えて広がる可能性があり、食物連鎖という大きな概念に新しい意味を与えるとDus氏は指摘。例えば人間が牛乳を飲むとき、体は牛乳だけでなく、牛が食べた牧草の影響も受けている可能性があります。実際、牧草で飼育された牛の乳と穀物で飼育された牛の乳には脂肪酸やビタミンCなどの量に違いがあることが分かっています。
同様に人間の母親の食事が母乳の成分を変化させ、赤ちゃんの遺伝子スイッチに作用する可能性も考えられていますが、どのような影響が現れるかは研究が進んでいないため不明だとのこと。
また、人間が食べた食品は体の細胞だけでなく体内の細菌に影響を与えます。マウスでの実験で、腸内細菌が短鎖脂肪酸を分解することにより、幸せホルモンとも呼ばれるセロトニンの量が変化することが明らかになっています。食品だけでなく、食品包装に含まれる化学物質も体に影響を与える可能性も考えられているとのこと。
Dus氏は「科学者たちは食事が遺伝子にどのように作用するのかという研究を始めたばかりです。これらの研究の多くはこれまで動物モデルでのみ行われており、食事と遺伝子の相互作用が人間にとって何を意味するのかについてはまだ解明されていないことがたくさんあります」と記しました。
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