エビデンス軽視の岸田内閣に苦言 – 階猛

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先進国の政府では、「証拠に基づく政策決定(エビデンス・ベースド・ポリシー・メイキング、略してEBPM)」が常識です。日本政府でも、デジタル庁が中心となってEBPMを推進しようとしています。ところが、岸田内閣では、同じEから始まる単語でも、エビデンスより、エモーション(感情)やエピソード(逸話)の類の方が重視されるようです。

18日の予算委員会では、まず二之湯国家公安委員長に対し、平成28年の参議院選挙の2か月半前に960万円という多額の資金を自民党京都府連に拠出した理由を尋ねました。14日の質疑の際、同じ質問に「自分の思いで寄付した」と答弁していましたが、調べてみると、その直後に自民党京都府連から自民党所属の京都府議・市議48人の政治団体に20万円ずつ合計960万円が移されています。また、選挙の10か月前には、二之湯氏から1440万円が、同様の手口によって48人宛てに30万円ずつ移されています。

どう見ても「自分の思い」ではなく、京都府連と共謀して地方議員に資金を配ったとしか思えません。報道によれば、京都の国政選挙では同様の行為が度々行われており、候補者が直接地方議員に資金を配ると選挙買収の疑いがかかるため、自民党京都府連を経由させる「マネーロンダリング(資金洗浄)」をしていたことを示す関係者の文書もあるようです。

こうした数々の証拠を突き付けても、二之湯国家公安委員長は、「自分の思い」だったという答弁を変えようとはしませんでした。警察組織を管理し、公共の秩序を守るべき国家公安委員長が「証拠」を軽視し、「感情」だけで説明を済ませようとする態度は許せません。

一方、岸田首相は17日の記者会見で、「まん延防止等重点措置」は飲食店でのクラスターを減少させる効果があったと述べました。しかし、「重点措置」が適用されていない岩手のような地域でも飲食店でのクラスターは減っています。本当に「重点措置」の効果で飲食店クラスターが減少したというのであれば、適用地域のほうが非適用地域よりも減少率が大きくなっていなくてはなりません。

そのような証拠はあるのかと岸田首相に尋ねると、「重点措置を適用したところでクラスターが減っている」のがエビデンスだという趣旨の答弁。減っていたとしても、非適用地域でも同じように減っていたとしたら、「重点措置」の効果だとは直ちに言えないはずです。「重点措置」とは無関係に、住民が自己防衛的に飲食店の利用を控えたためだという可能性もあるからです。首相の言っているのは「証拠」ではなく「逸話」の類です。こうした「証拠」を軽視する岸田政権の態度が、3回目のワクチンや検査キット、経口薬の供給の遅れや、厳しくするのか緩めるのかはっきりしない中途半端な水際対策をもたらしていると思います。

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