高学歴であれば仕事の能力が高いとは限らない。ネット家庭教師「毎日学習会」代表で、『人間ぎらいのマーケティング 人と会わずに稼ぐ方法』(実業之日本社)を書いた林直人さんは「私は慶應受験向けの塾を経営しているが、講師を採用する際に、大学名よりも高校名に注目する。都内難関進学校から慶應に進学した『都落ち組』は、期待外れとなるおそれが強い」という――。
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経営者を苦しめる「期待はずれ高学歴組」という存在
コロナ禍は収束の気配もなく、唯一上り調子だった株式市場も大暴落を迎えている。
経営に関わるビジネスパーソンは様々な問題を抱えているが、もっとも大きな課題が「人手不足」だ。そのなかでも高い情報処理能力を期待され、引く手あまたとなっているのが「高学歴組」の人材である。
とはいえ、複数の上場企業幹部から話を聞いてみると、採用したもののパフォーマンスを発揮ではない「期待はずれ高学歴組」もまた多いという実態もあるという。
そこで、自身が経営しているネット家庭教師事業で実際に「高学歴組」の人材を採用している経験をもとに、「仕事ができない高学歴人材」の3つの特徴をまとめていきたい。
「都落ち組」は仕事ができない
まず、「都落ち組」は仕事ができない、ということだ。
私は、講師希望者の経歴を見る時に、大学名よりも実は高校名に注目する。これは、慶應義塾大学の入試が持つある特性に由来する。
慶應受験向けの塾を経営している経験から言えば、実は慶應義塾大学はただ入学するだけならそれほど難しくはない大学であるとも言える。少なくとも、都内の名門難関進学校(開成、麻布など)から入学するのはさほど難しくない。小学3年生~高校3年生まで真面目にコツコツ勉強してきた人であれば、慶應に入るのはさほど難しいことではないのである。多少、中だるみがあっても、どうにか間に合わせることができた、というケースも少なくない。
このような受験事情を知っているため、都内難関進学校から慶應に進学したタイプの学生は講師としては雇わないことにしている。むしろ、コツコツ取り組むのではなく短期間で受験勉強を走り抜けたことが分かる人材を講師として採用している。
たとえば、弊社の講師でもっとも優秀な講師は、新興宗教団体が設立した高校の卒業生である。この講師は宗教団体の“教え”をベースに授業を行うユニークな高校から、一年あまりの浪人期間を経て慶應義塾大学が進学した。このように、短期集中で受験勉強をくぐりぬけてきた志望者は信頼できる。
実際に時間あたりの仕事量が多く、授業も丁寧なので生徒からも評判が良い。また、膨大な過去問解説教材の制作なども一気呵成(かせい)に進めていくので、仕事を頼む相手としても安心感がある。
一方で、都内の名門校から慶應に「都落ち」した学生は、傲慢な印象を受ける。全力を出さなくても「慶應ぐらい」には合格できたという自負心がその後に人生にも影を及ぼすのである。
未経験で「この仕事やりたいです!」と言える時代は続くのか
2つ目の特徴として、「この仕事やりたいです!」と手をあげる人材が挙げられる。
特に就職活動などにおいて顕著に見られる傾向だが、たとえば「ファンドマネージャーになりたい」「コンサルタントになりたい」など、どんな仕事をするかはさっぱりわからないのに、なんとなく字面が良さそうな職種に就きたいと考える若者が後を絶たない。
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日本では以前から新卒採用慣行があったため、未経験者でも「新卒カード」を持っている場合は採用されてきたが、今後はこうした慣行も徐々に崩れると考えられる。それはなぜか?
DXが進んでいる社会においては、多くの若者が大学生活を送りながらある程度までの「経験者」となることができるようになったからだ。
なりたい職種の経験を積める機会はいくらでもある
たとえば、「ファンドマネージャーになりたい」という若者であれば、さっさと自分の資金を100万円でもいいから運用してみれば良い。個別株、ETF、商品先物、仮想通貨、ありとあらゆる金融商品が大暴落している昨今だが、それでも「日経ベア2倍」「TOPIXベア2倍」「VIX先物」など大暴落時に利益が出る金融商品は数多く、これらの商品は1000円程度から買うことができるため、どれだけお金がない学生でも「即席ファンドマネージャー」になることが可能だ。
実際、私も塾経営の傍(かたわ)ら、大学時代の先生にも相談しながらこれらの金融商品を運用し、月数十万円ほどの利益を得ている。私は使わないが、信用取引なども使えば学生時代から月百万円前後の収入を得ることは十分可能だろう。
また、「コンサルタント」になることもさほど難しくない。DXが進んだ社会では、今この瞬間からでもGoogle広告にアカウントを作れば、上場企業と肩を並べて自分の広告を配信し、利益を出すことができる。若者が上場企業よりも有利な点としては、日々の家賃や人件費などの固定費に圧迫されることもなく、かつ中途半端な上場企業の末端の社員や外注先よりはやる気に満ちあふれているという点である。
このように、今日の社会においては「経験者」になることはさほど難しくない。だからこそ、未経験者のまま、「この仕事やりたいです!」と手を挙げているような人は仕事ができないと言えるのだ。
「給料を上げてくれたらやる気が出るのに!」と言う人の正体
最近、後輩たちから転職相談を受けていると「給料を上げてくれたらやる気が出るのに!」とぼやく人が多いことに驚かされる。そういう後輩たちに「では、あなたはいまいくら会社に利益貢献していて、そのうちいくらをもらっているの?」という話をすると黙ってしまうことも多い。
そもそも、給料を上げたら良い仕事ができ、逆に給料がそのままだと良い仕事がされないのであれば給料を上げる合理性があるが残念ながらそうではない。給料を上げてくれという人の給料を上げても、だいたい仕事のクオリティーは上がらない。一方、そんなことを言わない人がちゃんと仕事をしていたりする。
林直人『人間ぎらいのマーケティング 人と会わずに稼ぐ方法』(実業之日本社)
基本的には、会社は生産性の伸びよりも早く従業員の給料を上げてはならない。そうすることで競争力を失うからだ。だからこそ、給料を上げてほしいと願う人がまずすべきことは自分の生産性を高めることなのだが、残念ながらそれをしようとはしない。
そういう人は、頭の先から足の爪の先まで他力本願で自己中心的だからだ。給料は他人に上げてもらうものではなく、自分で上げるものだ。いまの時代、稼ごうと思えばいくらでも自分で稼ぐ方法はある。にもかかわらず自分の人生を他人任せにする人に任せる仕事はない。
このような理由からわかるように、「給料を上げてくれたらやる気が出るのに!」という人は仕事ができない。
以上、「仕事ができない高学歴人材」の3つの特徴をまとめた。コロナ禍における人材不足において、「高学歴人材」に飛びついてしまう経営者もいるだろう。だが、実際に仕事ができる人材は限られている。上記で紹介した紹介した3つの特徴を参考にして、使える人材を見抜いて欲しい。
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林 直人(はやし・なおと)
「毎日学習会」代表
1991年宮城県生まれ。仙台第二高等学校出身。独学で慶應義塾大学環境情報学部に入学(一般入試・英語受験)。在学中に勉強アプリをつくり起業するも大失敗する。その後、毎日10分指導するネット家庭教師「毎日学習会」を設立し、現在に至る。毎年100人以上の生徒を指導し、早稲田・慶應・上智を中心に合格者を多数輩出している。著書に『人間ぎらいのマーケティング 人と会わずに稼ぐ方法』(実業之日本社)、『うつでも起業で生きていく』(河出書房新社)などがある。
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(「毎日学習会」代表 林 直人)