大麻は睡眠促進目的で使われているが実際のところ睡眠を乱す可能性があると判明

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オランダやアメリカの複数の州で合法化されている大麻には「睡眠を促進する効果がある」と言われており、実際に大麻使用者を対象とした調査では、睡眠促進や不眠症治療のために大麻を使用している人が多いこともわかっています。ところが、3000人以上の大麻使用者を被験者とした大規模調査を行った研究チームが、「大麻を吸うと睡眠が乱れやすくなる」との研究結果を報告しています。

Recent cannabis use and nightly sleep duration in adults: a population analysis of the NHANES from 2005 to 2018 | Regional Anesthesia & Pain Medicine
https://rapm.bmj.com/content/early/2021/11/24/rapm-2021-103161

Large Study Links Cannabis Use to Sleep Disruption, Especially Among Heavy Users
https://www.sciencealert.com/large-study-links-cannabis-smoking-to-sleep-disruption-especially-among-heavy-users

人間に必要な睡眠時間は1日7~9時間と言われており、これより睡眠時間が短くても長くてもさまざまな問題が生じます。うまく睡眠ができない人の中には、医師から処方された睡眠導入剤を使用する人もいますが、一部の人々は睡眠を促進するために大麻を服用することがあるとのこと。

不眠症は大麻やその有効成分であるカンナビノイドの服用を始める最もありふれたきっかけの1つですが、既存の研究で指摘されたように「大麻が睡眠を促進する」という主張に関する証拠が全体的に矛盾しており、品質も低いという理由から、アメリカの研究チームは本当に大麻が睡眠を促進するのかどうか、2005年~2018年にかけて収集された国民健康・栄養診察調査(NHANES)のデータを用いて調査しました。

NHANESの調査では、参加者は年齢・人種・性別・学歴・週の平均労働時間・睡眠時間・睡眠の質・大麻の使用頻度などを回答しました。睡眠時間は全て平日の睡眠時間が対象で、「短い(6時間未満)」「適度(6時間以上9時間未満)」「長い(9時間以上)」で区分されたほか、「眠りに落ちる困難さ」「中途覚醒の有無」「過去2週間で眠りすぎてしまったことはあるか」「睡眠について医師に相談したことがあるか」など、睡眠の質についても調査されました。

また、大麻の使用に関しては、過去30日間に大麻の服用歴がある場合は「大麻使用者」として定義され、合計2万1729人の被験者中3132人(約14.5%)が大麻使用者でした。その後、大麻使用者は過去30日間の使用回数に応じて、「軽度使用者(30日で20回未満)」または「重度使用者(30日で20回以上)」に分類されたとのこと。


睡眠と大麻の関連を分析したところ、軽度使用者は潜在的に関係する要因を考慮した上でも、6時間未満の短い睡眠を報告する可能性が非使用者より34%高く、9時間以上の長い睡眠を報告する割合も56%高いことが判明しました。また、大麻使用者は「眠るのが難しい」「眠りが中断されてしまう」「過去2週間で眠りすぎてしまうことがあった」「睡眠について医師に相談した」と報告する割合も高かったそうです。

さらに研究チームは、「大麻の重度使用者は使用者と比較して、夜間の睡眠時間が極端になるリスクが最も高いとわかりました。このことから、大麻の使用頻度と睡眠時間の間には用量反応関係があると判断しました」と述べています。今回の結果から、大麻を繰り返し使用すると体が慣れてしまい、さらに睡眠が乱れる可能性があると研究チームは推測しています。

今回の研究では、大麻使用が睡眠に悪影響を与える可能性が示された一方で、大麻や化学物質が睡眠に及ぼす正確な影響については不明な点が残るとしています。また、今回の研究は観察的なものであり、他の根本的な人口統計学的要因や健康要因が結果に関連している可能性もあるとのこと。


なお、アメリカでは睡眠不足が公衆衛生上の大きな懸念事項となっており、成人のほぼ半数が日中の眠気を報告しているそうです。研究チームは、「現代における睡眠不足は公衆衛生上の問題を増加させ、睡眠不足が大麻使用を引き起こす大きなリスク因子になり得ます。これは『大麻使用の増加』と『睡眠障害の進行』というサイクルを永続させるというだけでなく、急に大麻をやめたとしても睡眠の構造と質にさらなる悪影響が出る可能性すらあり得ます」と述べました。

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2022年01月23日 22時00分00秒 in サイエンス, Posted by log1h_ik

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