これが「宇宙の地図」だ!

GIZMODO

2020年8月2日の記事を編集して再掲載しています。

宇宙ってどんな姿をしているんだろう。

古代インドでは自分の尾をくわえた大きなヘビが宇宙を表したそうですし、スカンジナビア人は宇宙の中心に大きなトネリコの木があると信じていました。

だから、これが本当の宇宙の姿だよ!って上記の画像を古代インド人やスカンジナビア人に見せたところで、いまいち信じてもらえないんじゃないでしょうか。それどころか、現代人にさえこれが宇宙の全貌だなんてにわかに信じがたいものがあります。

でもこの地図、知れば知るほどすごいんですよ

人類最強の宇宙地図、ついに完成

今まででもっとも広範囲に及ぶ宇宙の3D地図を作り上げたのは、20年間にわたってコツコツと遠方の銀河をマッピングしてきたスローン・デジタル・スカイサーベイ(Sloan Digital Sky Survey, SDSS)の国際研究チーム。

SDSSの最新フェーズでは、「拡張バリオン振動分光サーベイ(eBOSS)」と呼ばれる観測方法を用いて新たに100万個の銀河やクエーサーの位置と距離を測定。それまでSDSSが蓄積してきたデータと組み合わせることで、銀河の数400万個、110億光年離れた宇宙まで見わたせる地図ができあがったそうです。

ところで、宇宙の地図は地球上のどんな地図とも異なる点があります。それは、宇宙のスケールがあまりにも大きいために、遠くを見れば見るほど過去にさかのぼること

光が宇宙のかなたから地球に届くまでには、長い時間がかかります。1万光年先の恒星が出している光は、1万年かけて地球に届きます。ということは、今私たちが見ている恒星の姿はすでに1万年前のもの。この調子で1億光年、10億光年…と地球からの距離が遠くなれば遠くなるほど、過去の姿を見ていることになります。なので、広範囲の宇宙の地図は空間とともに時間の分布も表しているわけですね

ということは、この地図は110億年分の宇宙の歴史を表している。ついでに言えば、宇宙が誕生したのが138億年前ですから、宇宙の歴史の約80%がこの地図に集約されているわけです…!

前置きが長くなりましたが、こちらが人類最強の宇宙地図です。

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Video: LASTRO_EPFL/YouTube

この地図を見るかぎりではまるで地球が宇宙の中心に存在しているかのように見えますが、単に地球からの時空の距離を表しているだけ。ほかの星から宇宙を見渡しても、ほぼ同じような地図になることが予想されます。

一番外側のシャボン玉のような薄い膜には宇宙マイクロ波背景放射と呼ばれる宇宙初期の温度の揺らぎが投影されています。これより遠い宇宙の姿は、まだ地球に光が届いていないのでわかっていません。

くさび型に切り取られた闇は、天の川銀河の光によって遮断されて観測できない部分です。

そして、内側に進むにしたがって密度と明るさを増していく光の雲は、SDSSの調査フェーズによって色分けされていて、光の粒ひとつひとつが銀河です。

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Video credit: EPFL, Screenshot: C. Yamada

ズームインしていくと、宇宙の泡構造も明らかに。

地球の「今、ここ」を起点として、宇宙110億年の歴史を俯瞰できる地図は、これが世界初です。

宇宙の未知の時代が明らかに

これまでの宇宙の歴史には「穴」が空いている時代がいくつかあったそうです。

宇宙の始まりを見た人はいません。でも、宇宙物理学者はいくつかの手がかりをもとにビッグバン直後の宇宙の姿を推察してきました。まずヒントになるのが、宇宙に存在している元素の割合です。質量でいうと70%以上が水素、そして25%ぐらいがヘリウムで、ほかの元素はごくわずかしかありません。このことから、原始の宇宙が膨張するとともに次第に冷えていった様子が読み取れるそうです。宇宙マイクロ波背景放射もビッグバン当時の温度のゆらぎを示すヒントとなります。

一方で、現代の宇宙観測技術が発達するとともに、より遠くの星や銀河まで見わたせるようになり、宇宙の構造が明らかになってきています。

問題は、途中にいくつか未知の時代が残されていたこと。

そこでeBOSSプロジェクトでは、クエーサーや星を大量に生み出す活動銀河など、これまでのSDSSでは観測してこなかった遠方の天体の位置と距離を測定し、歴史の「穴」を埋めることに成功したそうです。

宇宙の膨張を読み解くカギ

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Video: EPFL/YouTube

そもそもなぜ宇宙の地図を作ったのでしょうか。

究極的には、宇宙が膨張し続けている理由を突き止めるためだそうです。

138億年前、宇宙は超高温で超高密度の点から始まり、それ以降ずっと膨張し続けています。ところが1998年には、宇宙が単に膨張しているだけでなく、膨張のスピードが加速してきていることがわかりました

厄介なことに、この膨張の加速は現在の物理の法則では説明できないそうです。アインシュタインの一般相対性理論を書き換えるか、もしくは正体不明のなにかが宇宙の膨張に関わっていると仮定するか。この二択を迫られた時に、宇宙の膨張の歴史を俯瞰できる地図が必要となったのです。

この正体不明の膨張剤は今では「暗黒エネルギー」と呼ばれていて、宇宙全体のエネルギーの70%を占めることもわかってきています。

暗黒エネルギーの正体を求めて

「このプロジェクトで解明したいことのひとつに、暗黒エネルギーの時間的な発展があります」とオハイオ州立大学でSDSSの研究に携わるAshley RossさんはOhio State Newsに説明しています。

この点で、eBOSS、そしてそれ以前のSDSSの観測から集められた膨大なデータは、美麗な宇宙の地図を描き出す以外にも宇宙の膨張率を計算するうえで重要となってきます。銀河間の距離を計算して、平均値を割り出す。そしてこの平均値をものさしとして他の時代の銀河間の距離と比較することにより、宇宙がいつどのぐらい膨らんだのかが計算可能になるというのです

それによれば、宇宙の膨張が加速し始めたのはおよそ60億年前。それ以降、膨張のスピードは上がりっぱなしです。

ちなみに、eBOSSデータから得られた知見には、暗黒エネルギーの謎を解明するどころか新たな謎を生んだケースも。宇宙の膨張率は「ハッブル定数」によって示されますが、現在の数値が過去に比べて10%も低いことがわかったそうです。宇宙の膨張率は加速しているはずなのに、なぜ?

eBOSSデータの精密性からして、この10%の食い違いはランダムな誤差ではないことだけは確実だそうですが…。

この食い違いこそが、今後暗黒エネルギーを読み解くカギとなるのでしょうか。

人間の探究心

冒頭のヘビの話。

古代インドの「ウロボロス」は、自分の尻尾を飲み込んでいる姿から、生と死の繰り返し、ひいては宇宙そのものを意味していたそうです。

そして現代の物理学では、このウロボロスが宇宙に存在するモノのスケールを表すのにもしばしば使われます

ウロボロスの頭は一番大きいモノ、すなわち宇宙そのものを表していて、銀河、太陽系、地球…とだんだんスケールダウンしていきます。そして尻尾に近づくほど細胞、原子、素粒子…と小さくなっていき、最後にはプランク距離という最小の単位にまで縮まります。

興味深いことに、人間はちょうど真ん中あたりにいるんだそうです

ちょうど真ん中サイズの人間だからこそ、宇宙のスケールも、素粒子のスケールのどちらも把握できて、探究心を発揮できるのかなって思うとなかなか感慨深いですね。

Reference: SDSS (1, 2), 素粒子原子核研究所

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