若者が選挙に行くと何が変わるか – 非国民通信

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「衆議院選挙」とは?超基本情報をわかりやすく説明(All About)

日本は2007年に超高齢社会に突入し、さらに勢いを増してますます高齢化が進んでいます。そうなると、選挙に立候補した人は、人口の割合が大きい高齢者に選んでもらうために、高齢者が喜びそうな政策を掲げます。実際、高齢者の年金や介護の予算は年々増えています。するとその予算を確保するため、働く人が負担する税金が高くなっていきます。

 さて来週には早くも衆院総選挙が行われるわけです。そして選挙が近くなる度に目にする定型文が上記の引用ですが、いかがなものでしょうか。こういう言説を無批判に信じている人もいるのかも知れません。しかし本当に今の日本の政策は高齢者寄りなのか、各政党は高齢者の方を向いているのか、少しくらいは考えてみる必要があるように思います。

 こちらはリサーチ会社による世論調査結果です。これを見ると自民党は年代の上昇に伴い支持が落ちていく一方、公明党も含めた他党の支持が概ね伸びていくことが分かります。どの政党も世代による差は見られるのですが、特に立憲民主党は顕著で18/19/20代の投票先として僅かに7.9%しか挙らないにもかかわらず、70歳以上ともなると24.1%と、3倍を超える開きを確認できます。

 もちろん世論調査で「選挙に行く」と回答しても実際には投票しない人が多いように、回答と投票先が一致する保証はありません。とはいえ真逆の結果になるとも考えづらいところで、世論調査結果をベースに見るのであれば、若年層の低い投票率の結果として得をしている政党(立憲民主党)と、損をしている政党(自民党)があることは推測できます。

 ただ「若者が選挙に行かないから高齢者寄りの政治になっている」と主張している人は、与党支持者と野党支持者の双方に偏ることなく存在している印象です。若年層の投票率向上によって自民の票は増え、立憲民主の票は相対的に目減りすると予想されますが、不思議とどちらの党の支持者も若年層の投票率が上がることで自分の思想信条に近い方に世の中が動くと夢見ている節が見受けられるところだったりします。

 こちらも同じリサーチ会社による調査結果ですが、総じて若い世代は「経済政策」への関心が高く、高齢層になると「年金などの社会保障」への期待が高まっていることが分かります。この辺りは世間一般の感覚と一致するところでしょうか。ただ、だからといって投票率が高く人数の多い世代の関心事に各政党がフォーカスしているかと言えば、そこは別問題に見えます。

 もちろん社会保障関連を全くスルーしている主要政党はありませんが、同様に経済政策を語らない主要政党もまた存在しないわけです。各政党が高齢者に選んでもらうために、高齢者が喜びそうな政策を掲げていると、そう信じている人はより大胆な高齢層向けの福祉の切り捨てを政治に期待しているのかも知れません。ただ客観的に見れば、主立った党はどれも若者の関心事に一定の重きは置いていると言えます。

 仮に有権者に占める若者の比率と投票率の双方が高かったとして、それで主要政党が軒並み年金政策は脇に置いて経済政策をメインに語ったとしましょう。しかし現実問題として社会保障費の増額は高齢者の票を目当てに年金を手厚くしたからではなく、単に年金受給者が増えただけ、純然たる自然増の結果でしかありません。むしろ無関心であればこそ、増額が続くことにも繋がります。

 そもそも社会保障政策や経済政策と言っても方向性は様々です。より高所得層の負担を減らす方向の社会保障政策や、ひたすら企業が内部留保を積み増す方向の経済政策だってあるわけです。むしろ高齢者にも、自分が受け取る年金額より年金の財源を気にする人は多い、未就労の若年層だからこそ、労働者側ではなく経営側の利益に感情移入している人もまた多いことでしょう。

 結局のところ、今の政治が高齢者の方を向いている──と言い募るのは、自身の思想信条と政府与党のやることが一致しないことへの苛立ちを、高齢者を犯人に仕立て上げることで晴らそうとしているだけでしかありません。自分が異性にモテないのは異性の側に問題があるからだ、そう考えるような類と似たようなものです。

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