東京五輪は視聴率最悪? 米に疑問 – 島田範正

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東京オリンピックが終わってもう9日になるのですね。この間、米国の主要メディアは「東京五輪のテレビ視聴者は過去最小だった」(NYタイムズ)だの「東京大会は夏の大会としては過去最低のテレビ視聴率だった」(WallStreetJournal)といった、あたかも東京大会が大不人気だったように報じていました。

しかし、私はコロナ禍での開催に疑問を持っていたものの、始まってしまえば、過去のオリンピック以上に、いろんな競技を見まくりました。まあ、自国開催ということもあるのですが、ストリーミングが充実していたので、時にはテレビ視聴に加えて、MACコンピューター、iPhoneで別々の競技をストリーミングで同時に見たことさえありました。

ですから、米国でテレビ視聴者が少なかったり、視聴率が低かったから、東京大会が不人気だったとは言えず、それをニュースにするのはどんなものかと思っていました。そこで違う角度からの分析はないものかと探していましたら、ありました。

一つはVariety誌の「ストリーミングオリンピック:東京大会のYoutube視聴はリオ大会の7倍」、もう一つはForbes誌の「東京大会の視聴率は落ち込んだ。でもNBCはプライムタイムを支配した」です。まずはVarietyの記事から。

こんな書き出しでした。「東京五輪の視聴率がポシャったって聞いたことがあるだろう。しかし、どう考えても、これまでで最もストリーミングされたオリンピックだった」

以下、<東京五輪ゴールデンタイムの視聴率は1988年にNBCが放映権を得て以来、最悪の結果になった><一晩あたりの視聴者の平均は1560万人でリオ大会に比べて42%も少なかった>

<しかしデジタル視聴者の間では、東京大会はかってない人気だった><大会期間中のYouYube視聴は2億時間以上に達し、これは2016年リオ大会時の7倍になった。1日あたりの視聴回数も1億9千万回で、これもリオの5倍だった>

では、どうしてそうなったかを明快に分析したのがForbesです。

こう断言します。<テレビ視聴率が落ちた最大の理由は、リオ大会から5年間でのストリーミングビデオの勃興のためだ>

<2016年リオ大会当時、Netflix、Amazonprime、Huluはあったが、オリジナル番組は限られていて、Disney+、AppleTV+、Discovery+、HBOMax、(NBCの)Peacockは存在しなかった>

さらにパンデミックによる映画会社の戦略変更も大きかったとします。

<従来、夏のオリンピック大会中、映画会社はヒットしそうな大作はリリースしなかった。オリンピックのテレビ視聴と競合するからだ。しかし、パンデミックでいくつかのスタジオが劇場とオンラインで同時に公開し始めたので、東京大会のテレビ視聴に影響を及ぼした>として、話題作の数々がDisney+、HBOMax、 AppleTV+などで配信された実例を挙げています。

こうした強力なストリーミングプラットフォームの存在が、<リオ大会以来5年間でテレビ放送のゴールデンタイムの視聴者を侵食していて、それが東京大会の視聴者減になったのだ>とします。

具体的に、ニールセンの月刊テレビ・ストリーミング情報誌Gauge Reportに言及し、<6月の総視聴者数に占めるテレビ放送のシェアは23%で、ストリーミングは27%だった>と指摘します。ニールセンのサイトを検索したらこういうグラフがありました。

ここでいう、Broadcastとは、CBS、NBC、ABC、Fox、CWの5大ネットワーク放送のことです。それを、5年前のリオ大会当時と比べると、こうなっているそう。

プライムタイムの平均視聴者数(単位100万人)が、5年間で、こんなにも激減しているのですね。

5大ネットワークのトータルで37%も減っています。Varietyの記事でも紹介しましたが、東京大会はリオ大会に比べて41%も視聴者が減ったと言っても、それはテレビ局の視聴者の大幅減に見合ったもののようです。

しかし、オリンピックのような大イベントでは違うのではないかという見方もあるでしょうが、それにもForbesは答えていました。

5年前に比べての米国の大イベントの視聴者数の減少数です。

米国で超人気のアメリカンフットボールの頂上決戦、スーパーボウルが14%減にとどまっている外は、オスカー賞、グラミー賞授賞式、野球のワールドシリーズ、バスケットのNBAファイナルなど、全てが50%以上も減っています。その中で、東京オリンピックが41%減に止まったのは、むしろ善戦と言っていいかもしれないのです。

そしてNBCのオリンピックサイト、Facebook、Twitter、Instagramでは29億回のインプレッションがあり、Facebook、Twitter、TicTok、YouTube、Snapでは3億3870万回のエンゲージメントがあったということです。

かくて、Forbesの見出しにあったように「NBCはプライムタイムを支配した」ことになったのです。もちろんNBCは儲かりました。でも、新聞に続いてネットワークテレビもデジタルに追い詰められていることが窺える一件でした。

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