【光Ethernetの歴史と発展】800Gb/sと同時に1.6Tb/s Ethernet仕様も策定へ 200Gb/sレーンの製品出荷は2027年頃?【ネット新技術】

INTERNET Watch

 Ethernetというか10GBASE-Tに関しては、2017年から【10GBASE-T、ついに普及?】と題し、全11回と番外編2回をお届けした。だが、ツイストペアによる銅配線のEthernetは10GBASE-Tまでで、25/40GBASE-Tはまだまだ実用化には至っていない。

 【アクセス回線10Gbpsへの道】とも一部は被るかもしれないが、ここでは光ファイバーを利用する“光Ethernet”を紹介していこう。

「光Ethernetの歴史と発展」記事一覧

 2021年5月のミーティングでは、ほかにも「Electrical Interface Objective Wording」や、「Considerations on beyond 100G per lane electrical objectives」といった電気層に関するいくつかの提案が行われた。

 一方、Huaweiからは「LN-on-Insulator Modulator Technology for B400G Ethernet Application」として、LNoI(Lithium Niobate on Insulator:ニオブ酸リチウム利用した光導波路型デバイス)を利用することによって、200G PAM4で有望な結果が得られるという簡単な調査結果なども示された。

1.6Tb/s Ethernetの仕様策定も800Gb/s Ethernetと同時に開始へ

 だが、これらはあまり大きな話ではないので、興味ある方はそれぞれのPDFをご覧いただきたい。それはともかく、2021年6月のミーティングでは、2021年5月のミーティングでの提案内容に対する投票が行われた。その結果が以下だ。

【Straw Poll #1】800Gb/sを4波長で1対のSMTで接続する(CWDM)方式に関し、2kmの最低到達距離を3kmへ延長するべきか?

  • Yes:39票
  • No:24票
  • もっと情報が必要:20票
  • 棄権:14票

【Straw Poll #2】Beyond 400Gb/s Ethernetの物理層の策定にあたってベースにすべきは

  • 200Gb/s Ethernet:73票
  • 400Gb/s Ethernet:61票

【Straw Poll #3】MAC層に1.6Tb/sのデータレートを加え、さらにオプションでChip-to-Chip/Chip-to-Moduleに8レーンで1.6Tb/sのオプションを加える。また、1.6Tb/s Ethernetの物理層に、8対SMFで最低500mと、8対SMFで最低2kmの仕様を追加するべきか?

  • Yes:69票
  • No:3票
  • もっと情報が必要:11票
  • 棄権:5票

【Straw Poll #4】800Gb/s Ethernetと1.6Tb/s EthernetでMAC層のパラメーターは同じにすべきか?

  • Yes:42票
  • No:9票
  • もっと情報が必要:4票
  • 棄権:13票

【Motion #1】8対のSMFを利用し、2km以上の到達距離を持つ800Gb/sの物理仕様を定める(75%)

  • 賛成:67票
  • 反対:8票
  • 棄権:17票
  • →動議は可決

【Motion #2】1.6Tb/sのMAC層の仕様を定める。このMAC層にはChip-to-Chip接続およびChip-to-Module接続用に、200Gb/s×8の構成を含める。さらに、8対のSMTで500m以上届く仕様、8対のSMTで2km以上届く1.6Tb/sの物理仕様も定める(75%)

  • 賛成:69票
  • 反対:2票
  • 棄権:12票
  • →動議は可決

【Motion #3】800Gb/s Ethernetと1.6Tb/s Ethernetで、MAC層のパラメーターを同じにする(75%)

  • 賛成:36票
  • 反対:13票
  • 棄権:14票
  • →動議は否決

 とりあえず、1.6Tb/sのEthernetに関する仕様についても、策定作業を同時に開始する(最終的に同じ中で策定されるかどうかはまだ分からない)ことは決まった格好だ。

AUIインターフェースに100G×16を追加すれば、標準化が早まる?

 この結果、続く7月のミーティングにおいてObjectiveが改定されたほか、前回の最後で少しだけ触れた、OSPF-XDを利用した「頭の悪いソリューション」が早速提案されたのはさすがに笑えた。提案者はVIAVI solutionsのPaul Brooks氏とHuaweiのXinyuan Wang氏である。

 両氏の提案は、要するにAUIインターフェースに100G×16を追加すれば標準化が早まる、というものだ。過去の歴史で言えば、1つのEthernet規格に複数のAUIオプションが含まれるのは普通であり、例えば800Gにしても100G×8と200G×4があるのだから、1.6Tは100G×16と200G×8があってもいいはずだ、というわけだ。

 そもそも、AUIに200Gレーンが実現できるのはいつになるかを、過去のCMOSロードマップから推定すると、2026~2027年になるとされている。いずれは200Gに移行するとしても、そこまでの間は100Gレーンでつないでもいいだろう、と氏は主張している。

筋から言えば、200G×8と400G×4という気もしなくはないが、200Gですら四苦八苦している現状で、400G×4なんてオプションが用意できるはずがないのも自明だ

プロセスノードで言えば3ないし2.1nm(これはTSMCのプロセスノードが前提だと思われる)あたりで200Gが可能になると見ており、3nmは早ければ2022年末から2023年初頭に可能となるが、2nmは2024~2025年あたりとみられる(この世代、TSMCもGAAFETを導入する関係で、どこまでスムーズに行くかはっきりしない)

 また、100G×16の場合、早期にテストツールの着手に取り掛かれることもメリットとしている。

 当たり前だが、ベンダー各社は標準化が完了すれば(可能ならその前に)、これに準拠する製品をリリースしたいと考えている。こうした先端製品の場合、企画から製品化まで2年ほどということも珍しくない。

 もちろんここでASICを起こすとなると、1~2年余分に掛かるが、テスト用の機材や第1世代の製品の場合、FPGAベースでの開発は珍しくなく、これだとTape out(物理的な配置配線を含む設計完了)後、即量産に入れることになる。問題は、そのFPGAが200Gに対応するのは相当先、ということだ。

実際は、SerDes以外にもさまざまな要素が絡むが、いずれにしても現行のFPGAでは足りないことだけははっきりしている。次世代製品の投入時期も、現状では不明なままだ

既にテスト機器メーカーは200G/Lane世代を見据えたテスト機器の開発に着手しているのだろうが、これが現実に提供できるのは相当先になりそうだ

 この手の先端製品という意味では、Xilinxの「Virtex/Versal」シリーズや、Intel(旧Altera)の「Stratix/Agilex」シリーズになるが、XilinxのVersal PremiumにしてもIntelのAgilexにしても、現状搭載されている汎用高速SerDesはNRZで58G(PAM4で112G、Agilexだと116G)が最大速度であり、200Gに対応する製品は存在しない。

 となると、FPGAの外部に何らかの方法で1:2のGearboxを入れるしかなく、これを用意するまで開発も検証も止まることになる。ところが、先に触れたOSFP-XDが利用できるとなれば、100G×16が現実的に可能になる、というわけだ。

 もちろん、16レーンのAUIとなれば、これをまたがるFECを用意する必要があるので、手直しが不要というわけではない。ただが、これに要するコストはわずかで、実現可能性は高い、としている。

OSFP-XDの実現可能性をまずチェックすべきだと個人的には思うが、OSFP内部での作業でもあり外からは伺い知れない。というか参考文献がLightwave Onlineというあたりが……

200/400G Ethernetで16レーンという仕様は既に存在しているから、この延長だと言えばその通りなのだが……

 そして、100Gb/sレーンが利用可能なら、少なくともAUIに関して言えば既に開発を始められる(対応したFPGAが存在する)ので、さまざまなコンポーネントやテスト機器の開発を開始できることになる。

 さらに、プロセスの微細化が進行すれば2025年頃からは200Gb/sレーンへの対応が始められると予測され、2027年頃にはこれを利用した200Gb/sレーンの製品が出荷できる見通しだ。

100Gレーンベースの測定機器(T&M:Test & Measurement)が先行すれば、これを200Gにするのはそう難しくないというのも、その通りだ

これが通ったら、なし崩しにSMF×16の仕様も追加されそう……

 これは、1.6T Ethernetの早期の立ち上げにつながることになり、決して悪い話ではない。ということで、1.6Tb/s EthernetのAUIに16レーン構成を追加する、というプロポーザルでプレゼンテーションを終わっているのだが、これはあくまでもAUI、つまり機器とモジュール(またはモジュール内部)のみの仕様であり、光インターフェースの方は考慮されていない。

 現行の200Gb/s×8レーンという構成を前提にすれば、モジュール内部には2:1のGearboxを入れないといけないわけだ。そのGearboxの測定器はどうする? という話になりそうだ。そのあたりを含めると、言っていることは理解できるものの、やっぱり「頭の悪いソリューション」な感じは拭えない。いや、これにあわせてSMF×16とかの仕様が定まるなら、それはそれで辻褄は合うのだが。

「10GBASE-T、ついに普及へ?」記事一覧

【アクセス回線10Gbpsへの道】記事一覧

Source

タイトルとURLをコピーしました