綾瀬はるかの入院叩きに医師指摘 – NEWSポストセブン

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綾瀬はるかが病院に入院し、さまざまな面で話題になった

 女優の綾瀬はるか(36)が新型コロナウイルスに感染して都内の大学病院に入院中であることがわかり、ファンからは多くの心配の声があがった。感染対策には注意していたものの、仕事が立て込んでワクチンを接種できずにいたところ、発症してしまった。

【写真20枚】黒Tシャツ姿で前から風を受ける綾瀬はるか。正面から撮影、全身姿。他、白ブラウス姿で街を歩く姿なども

 8月31日、所属事務所から詳しい入院の経緯も発表された。綾瀬は8月20日に発熱し、翌21日のPCR検査では陰性だった。しかし、26日にあらためて抗原検査を受けて、陽性反応が出たという。

 この発表に対して、ネット上を中心に大きな反響が巻き起こっている。

 現在、コロナ病床のひっ迫が深刻化して、自宅療養せざるを得ない感染者が激増。自宅療養中に死亡する事例も続く中、綾瀬が入院したことについて、一部の人々は「なぜ入院できたのか?」と疑問を抱いたらしい。「『上級国民』(社会的地位の高い人間を指すネットスラング)は優先的に入院できるのか」といった声が上がり、Twitterでは「上級国民」がトレンド入りする事態となった。

 自宅療養者の増加が問題となるのにともない、「入院叩き」とでも言える動きが生まれつつあるのだ。まず「上級国民はすぐ入院できる」といったネット上の書き込みは本当なのか? 医師でジャーナリストの森田洋之氏は、「社会的地位というよりも、病院側とのコネクションがあると優先的に入院できる可能性はあります」と語る。

「公的機関であれば、上層部の人間が個人的な付き合いのある相手を優遇したとなると大問題です。しかし、日本の病院は民間が8割。そのため、お偉いさんの思惑が通りやすい環境になっており、それを禁じるルールが明文化されて存在するわけでもありません。あくまで民間の施設なので、経営などの判断は各々に任されている。つまり日本の医療とは、そもそも公共性の乏しいものなのです」(森田氏)

 ただ、森田氏も「入院叩き」のような風潮は問題視しているし、こうした状況下で有名人が入院することは、すなわち「コネ」とは言い切れない。

「誰かが入院したということは、全く批判されるべきことではありません。入院できることがバッシングの対象となっては、入院自体を遠慮してしまう人も出てきかねません。もしも日本の医療について考えるのであれば、ただ入院した個人を叩くのではなく、『医療の分野が民間に任されている』という根本的な問題に目を向けていただきたいと思います」(森田氏)

 綾瀬を含め個々人の入院の経緯はわからないし、症状を見た医師の判断で入院の必要があるかどうかが大きな基準となっているのは間違いないだろう。

 一方で、森田氏が指摘する通り、コネ入院というもの自体は存在するし、お金を積めば特別な個室に入院できるのが現実だ。まるでホテルのスイートルームのような高級病室を持つ某病院には“政治家優先枠”も存在している。コロナ前から、特に体調が悪いとされていなかった政治家が、スキャンダルを報じられるや否や“体調不良”で入院して雲隠れするケースは何度となくあった。

 世界を見渡せば、日本の「一般人」への医療体制は、各国と比較して手厚いものであると言える。国民皆保険で、コロナ陽性者の治療費は無料。コロナ禍以前は、有力者と一般人の間にあるのは「入院部屋が豪華な個室か否か」「食事が豪勢か否か」程度の差で、受けられる医療に関して大きな違いはなかった。しかし、医療崩壊によって、今の日本では「医療を受けられるか否か」の差が生まれてしまった。

 現在の医療ひっ迫の原因のひとつには、民間病院でのコロナ患者の受け入れが少ないことが挙げられており、その背景には、政府や日本医師会による不作為がある。

 つまり、有名人や権力者が入院したという個別ケースに「ずるい」と騒いでも仕方がない問題なのだ。本質は、民間病院も含めて医療界全体でコロナ禍を乗り越える体制を作ることにこそあると言えるだろう。批判の矛先は、“カネ”や“コネ”が命の分かれ目になってしまう事態を招いた政府や医師会に向かうべきなのではないか。

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