実はカバディ、痩せて見える、おごらせる…アイディアTシャツ大会

デイリーポータルZ

[これまでのあらすじ]復活を果たした伝説のおもしろセレクトショップこと王様のアイディアに対して、珍妙なアイデア工作をプレゼンし、みごと製品化を達成した我々デイリーポータルZチーム。

しかし次なる課題として挙げられたのは、夏場にマストとなる“ウケの取れそうなTシャツ”だった……。

果たしてデイリーポータルZライターの考えたおもしろTシャツは、製品化されるのか?

(記事の最後に好きなデザインを選ぶ投票があります。投票していって!)
 

なんでも好きにしていいTシャツプレゼン勃発

ちなみに今回、事前に聞かされたTシャツに関するレギュレーションは、「面白いもの・ユニークなもの・おっ!と思うもの・インパクトのあるものでお願いします」ぐらい。
なるほど。要するに、なんでも好きにせい、という程度の話であろう。
なんなら「これどうやって量産すんの?」みたいな多少の無茶も黙認します、ぐらいに受け止めていいやつだ。

マスク越しでも分かる不敵な笑みでTシャツを迎え撃つは、王様のアイディアチーム。

審査員は前回と同じ、王様のアイディア店長の大澤さん・バイヤー桃原さん・斎藤さんと、おもちゃクリエイターの高橋さん。

対してデイリーポータルZ側は、6名のライターが1着ずつ、オリジナルTシャツのサンプルをアイロンプリントで制作してきている。これをTwitterで読者投票にかけて、最も人気のものを製品化しようという流れ。

都合でプレゼンに参加できなかったナミノリさん含め6人のTシャツ勇者が挑む。

ただ、Twitterの投票システムは項目が4つまでしか設定できない。
なので、3人を1グループとして一次予選を行い、そこで勝った同士で決選投票を行うという方式した。
グループ分けは、たまたま会議室に座った順番そのままで

Aグループ トルー・きだて・林
Bグループ 伊藤・とりもち・ナミノリ

……となっている。

一見するとボーダーだけど、実は○○なトルーT

トルー:
遠くから一見すると“こう”なんだけど、近くからも改めて見て欲しいTシャツです。 

別室でTシャツに着替えてる間はみんな雑談で盛り上がってるので、入ってくるときにやや気まずい。
トルー考案「ボーダーカバディ Tシャツ」は、これぐらい離れて見ると普通のボーダー。

大澤:
普通のボーダーですよね?
桃原:
この時点ではわりとオシャレですけど、これが近づいて見ると…?
トルー:
「カバディカバディカバディカバディ……」って書いてあります。

ここまで近づくと、カバディカバディカバディ……と続くキャント(詠唱)が読み取れる。

とりもち:
かすれてるボーダーっぽい。かっこいいかも
高橋:
「芸能人格付けチェック」なんかで出てきたら、高い側で出てきてもおかしくないですよ。完成度高いです。
林:
コムデギャルソンで「こういうの出ました」って言われたら信じるかも。

大人になるとこの距離感ってなかなか無いな…という取り囲まれっぷり。大人気だ。

トルー:
これを着ることで、俺はまだ途切れてないぞ、試合は続いてるぞ、というアピールができます。
桃原:
あ、これ着てたらコロナ禍の中でも声を出さずにカバディができるかも。
大澤:
そうか! 飛沫防止カバディだ!
高橋:
それは普通に反則では。
トルー:
心意気の問題ですね。

着るだけで相手を警戒させないきだてT

きだて:
僕のは、着ることによって「この人は仕事ができないな?」というのが伝わるように考えました。周りが緊張せず、安心できるような。
大澤:
じゃあ、ちょっとコワモテの人が着るといいかなという感じ?
きだて:
まさに! 警戒心を解くことができるはずです。

着て戻ってきた瞬間、全員から「ん?」といういぶかしげなリアクションが。
きだて考案「着られる後ろ前」。目立ちづらいが、縫い合わせ部にはTシャツを裏返してスキャンした縫い目をプリントしている。

きだて:
首元にタグ、表側の肩口から脇にかけて縫い目をアイロンプリントしてあるので、裏返し且つ後ろ前になって見えるTシャツです。ここまでウッカリした格好なら、周りも油断してくれると思うんですよ。
斎藤:
むしろ警戒されません?
高橋:
いや、この残念感で安心させるというのはありそうですよ。なにひとつ成功させなさそうな雰囲気がすごい。

のど元には、お馴染みの無地Tシャツブランド「United Athle」っぽいタグが。
肩周りの縫い目は、曲線に沿ってアイロンプリントを馴染ませる高等テクが施されている。

林:
でも、実際タグが前に来るように着たら、のど元が苦しいですよね。後ろ前だから。
きだて:
そこは普通に着られるように。苦しい思いはしなくてもいいようになってます。

中年男性の夢を手軽に達成する林T

林:
僕ぐらいの世代が喜ぶデザインにしようということで、作ってきました。

ちょっと待ってくださいね、と場所を移動。

脇腹だけがくっきり黒いTシャツを着てきた林さん、なぜかスタスタと、不自然に壁に貼られた黒い紙に近付いていく。 

林考案「着やせTシャツ」は、プレゼン会場を自社会議室に設定することで、地の利を最大限に発揮!

林:
どうすか。細マッチョに見えないですか、これ。

なるほど。脇腹の黒が背景の黒に溶け込んで、労せずにマッシブな体型っぽくなるという仕組みだ。
これはまさに中高年男性のドリームと言えなくもない。

全員なんとなく気を遣って、かなり離れた位置から見てる。

高橋:
痩せて見える…!
伊藤:
痩せて…というか、減って見えますね。
大澤:
えぐれてますよね。 

「常にこのポーズを取り続けないと、ちょっと不自然に見えちゃうんですよね…」

伊藤:
こういう風に見えるバッタいますよ。後翅が黒くなってるの。
高橋:
潜在意識の中で「スマートな人なんだな」というのはすり込まれそうな気もします。
きだて:
それはそれとして、あの黒いバック紙はズルくないですか。

あの有名ブランド公認!伊藤T

ここからは、予選グループBへと突入する。

伊藤 僕のTシャツは、みなさんも記憶のどこかにあるはずのデザインです。もう遺伝子の片隅に刻まれてるんじゃないかという。

ハードル上がりきった状態で披露されたTシャツに対して、反応しかねる審査員勢。

王様のアイディア一同:
……?
伊藤:
学校の下駄箱の前とかで見たことあるんじゃないですか、泥を落とすマット。
桃原:
タワシみたいなやつ…!
伊藤:
そう、それです。あのマットが僕は大好きで、それをいつかグラフィックにしてみたいと思ってまして……この機会に実現しました。

伊藤考案「あのマットT」。確かによく見るとあのマット…!

 こちらは、伊藤さんが以前に取材した泥除けマットの老舗メーカー、ジポンが作っている「COMBI MAT」をモチーフにしたもの。
なるほど、言われてみればあのマットだ。

画面にジポンを取材した際の画像を出しつつのプレゼン。

伊藤:
もちろん他にも泥除けマットを作っているメーカーさんはいくつかあるんですが、唯一ジポンのマットだけが、フレームのカドの部分を直角にできるんですよ! 他は丸まってるのに! なので、その金属加工技術の高さもデザインに落とし込んでみました。 

「フレームのここが直角なのはCOMBI MATだけ」と積極的にアピールする伊藤さん。

語気強めで「COMBI MAT」についてプレゼンする伊藤さん。もはやTシャツではなくて「COMBI MAT」のすごさを語るターンに入っている。
しかもこれ、制作に際してちゃんとジポンさんにTシャツ化の了承を得ているとのことで、つまりはブランド公式Tというわけだ。すごいし、愛が強い。

「お金が無い」をアピールするためのとりもちT

とりもち:
学生時代、お金が無いときに「お金無くて…」って言えないタイプだったんですよ。お金が無い、というワードの哀愁に耐えられなくて。

いきなり切ない告白から入るとりもちさんのプレゼン。
ここから何がどう展開されるのかを測りきれず、審査員勢もややザワッとした雰囲気になる。

Tシャツを披露する前のプレゼン段階で早くもザワつきを生むとりもちさん。

とりもち:
なので、着てるだけで周囲が「ははーん、あいつお金無いな?」と理解してくれて、例えばファミレス行くにしても、フォルクスじゃなくてサイゼにしてくれるような……そんなTシャツを作ってみました。

とりもち考案「月末の胃Tシャツ」。胃の位置にこだわって刷り直しもしたそう。

林:
……胃だ!
きだて:
もやしとギョニソ?
とりもち:
金欠でもやしとギョニソしか食べてないよ、というアピールができる仕組みです。
大澤:
メッセージ性が強いですね。

もやしと魚肉ソーセージしか入ってない胃袋。切なさもありつつ、ドット柄でかわいさも演出する。

高橋:
どこからつっこんでいいのかよく分からないんですが、ひとまず、もやしと魚肉ソーセージ、パッケージのまま食べてますよね。
とりもち:
パッケージのままのほうが分かりやすいかなと思って。あと、ギョニソをよく見てもらうと、ちゃんと「20%オフ」のシールが貼ってあるんです。 

全員の視線がとりもちさんの胃の辺りに集中している、妙な空間。

桃原:
なるほど、確かにこれを着てるところを見たら、「今日、飲み会だけど……トリキにしようか?」みたいに誘導されますね。
高橋:
そうですよね。「かわいそう」と思わずにいられない。なんなら、おごっちゃうかもしれない。
とりもち:
その辺りも狙ってます。

プリクラ落書き世代に響くナミノリT

グループBのラストは、都合で審査会場には来れなかったものの、事前にプレゼン動画まで制作して送ってきたナミノリさんのTシャツだ。

林:
この動画がちょっとすごいんで、まずはこっちを見てもらうのが早いかもです。

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ナミノリさんが久しぶりにプリクラを撮ったところ、10年前にはいっぱいあったデコる用のスタンプがほとんど無くなっていた、とのこと。令和の学生さんはプリクラに落書きをする文化がそもそも無いらしい。
いまの20代は逆に隙間無くびっしりと落書きで埋めていたデコり世代なので、そういう方向で映えるTシャツを作ったそうだ。

ナミノリ考案「デコハートTシャツ」は、寄せ書きして友達に贈ったり、写真を入れて飾るなどしても楽しい。

 

アイロンプリントした部分は、マーカーで書いてもにじまずクッキリ見える。

そもそもこういった落書き文化に馴染みの薄い中高年のライター・審査員勢からは、「ここにマジ卍とか書くんですかね」とか「友達多くないとつらいですよね」みたいな感想しか出てこない。

どちらかというと、娘をなんとか理解しようと必死なお父さんの様相である。 

馴染みのないアイデア以上に、ピチTのサイズ感に「これ、着られるんですか…?」と戸惑う。

そんな中で「わー、この書き方とか懐かしいな」と喜んでいるのが、ナミノリさんと世代が近いバイヤー斎藤さんと、とりもちさん。

とりもち:
最近はオシャレを追求するので、プリクラもこういうゴチャッとした書き込みはしなくなってるんですよね。
斎藤:
そうですよね。無駄なものは入れない、みたいなところありますよね。

そもそも、そのゴチャッとした書き込み文化にすら触れていない中高年層は、ただ「へー、そうなんだ」と頷くのみである。 

決戦開始!勝つのはどのTシャツか

さて、これでついにノミネート6着が出揃った。
改めて説明しておくと、ここからはデイリーポータルZのTwitterアカウントにてグループごとに投票を行う。

そして各グループ勝者の2着で決選投票し、最後に残ったTシャツが「王様のアイディア」にて商品化・販売されるということになっている。

グループAは、トルー「ボーダーカバディ」・きだて「着られる後ろ前」・林「着やせTシャツ」

たまたまだけど、視覚トリックを用いた系のデザインが揃ってしまったグループA。

グループBは、伊藤「あのマットT」・とりもち「月末の胃Tシャツ」・ナミノリ「デコハートTシャツ」 

一方、全体的におしゃれチームといった雰囲気のグループB。

大澤:
グループBは全体的に売れそうなやつが続きましたね。
桃原:
グループA、ほぼモノトーンで地味でしたから。
大澤:
ただ、今回の企画として最初にイメージしていたのは、グループAの雰囲気なんですけども。
林:
デイリーポータルっぽい感じで。
大澤:
これ、投票時の訊き方も難しい気がしてきました。「どれが着たいですか?」だと、デザイン的にかっこよくて着やすいものが有利になっちゃうし、「どれが面白いですか?」も同じく票が偏りそうだし。
高橋:
いちばんフェアなのは「どれが好きですか?」って訊き方かもしれないですね。
林:
なるほど、シンプルに好きかどうかを問うのが公平ですかね。

ということで、まずは各グループから1着、好きだと思うTシャツに投票をお願いします。

今回は投票形式で商品化を決めるため、いくつかの製品化しづらい要素(きだて案の縫い目や、ナミノリ案の透明ポケットなど)に関しては「勝ってから考えよう」となっている。

完全な先送り施策と言えるが、まぁこの時点でとやかく言っても仕方ないし。とにかくお気に入りのTシャツに何も考えずポーンと票を投じてやってほしい。ぜひぜひ。

審査会場では、ナミノリさんの動画をなぜか3回ぐらいリピートして見てた。常習性が強い。

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