クリミア併合の二の舞になるか – 舛添要一

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 アメリカのバイデン大統領ロシアのウクライナ侵攻が目前に迫っているという認識を示した。プーチン大統領がウクライナ侵攻を決定したという判断である。

 クリミア併合に状況が似てきた。2014年3月にロシアはクリミア半島を併合するが、それは、住民投票でロシア帰属が決められたとことを根拠にしている。

クリミア半島は、1954年にフルシチョフによってロシア共和国からウクライナ共和国への「友好の証」として譲られたが、それは水道管の敷設のための便宜でもあった。37年後にソ連邦が崩壊することなど夢にも思わなかったフルシチョフにとっては、クリミアがどの共和国にあろうが、ソ連邦の一地方であることには変わりはなく、たいした問題ではなかったのである。

 しかし、もともとはロシア共和国に属し、ロシア人も多いこの地域は住民投票をすればロシア帰属が決まるのは当然である。しかし、クリミアの住民投票は、ウクライナ全国民が行ったものではなく、「領土変更は国民投票によってのみ議決することができる」と規定するウクライナ憲法73条違反である。しかし、ロシアは、クリミアに独立宣言をさせ、独立国家としてロシアと併合させたのである。

 まさに、「ロシア民族を救え」という民族自決主義のスローガンを実行に移したのである。

 そして、次なるプーチンの標的はウクライナ東部のロシア人居住地域である。その地域をロシアに併合するために、すでに多数のロシア工作員が侵入し、親露派の分離独立主義者を支援している。

 2月19日には、ロシアが支援するウクライナ東部のロシア系分離独立派の「ドネツィク人民共和国(DPR)」は、全成人男性に総動員令をかけ、ウクライナ政府軍との戦闘の準備を加速化させた。またDPRは、50万〜70万人の住民を避難させる態勢を構築している。これらの動きは、ロシア軍の侵攻が迫っていることを示唆している。

 プーチンは、失われたソ連帝国の再興を図っているが、かつての衛星国であった東欧諸国が次々とNATOに加盟し、ロシア包囲網を形成するという許しがたい状況が生まれているのである。1999年3月にチェコ、ハンガリー、ポーランドが、2004年3月にエストニア、ラトビア、リトアニア、スロバキア、スロベニア、ブルガリア、ルーマニアが、2009年4月にアルバニア、クロアチアが、2017年6月にモンテネグロが、2020年3月に北マケドニアがNATOに加盟している。

 ロシアとNATOの間にある中級国家はベラルーシとウクライナのみであり、プーチンにとっては、この2国まで敵陣に追いやるわけにはいかないのである。前者はルカシェンコ大統領の親露政権であるが、後者のゼレンスキー大統領はNATO加盟を模索しており、それが今回の紛争の原因となっている。

 NATO不拡大を求めるロシアと加盟するかしないかはウクライナの自由だと言うアメリカとの間で何らかの妥協が可能なのか。これが今回の最重要ポイントである。

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