どこにでもありそうで、どこにもない。それが『自由軒』のカレーだ。ときどき無性に食べたくなるのだが、関西にお住いのみなさんであればこの気持ち、ご理解いただけるだろう。
そんな自由軒欲を満たすべく、同店のレトルトカレーに手を出した記者。味わってみると店とは違う美味しさが、そこにはあった。また、家でじっくり食べたからこそ気付いたこともあるので聞いてほしい。
・名物カレーを自宅で楽しもう
『自由軒』については、説明するまでもない有名店だ。オダサクこと織田作之助が愛したカレーとしても知られる。大阪は難波の一等地で営業する店内には、確か今もオダサクの写真が掲げられていたはずだ。
同店は、明治43年に大阪初の西洋料理店として創業したとのこと。途中、第二次世界大戦によって焼失したりしながらも、今に至るまで続いているのだからアッパレである。
名物のカレーは、一度目にすれば忘れられないビジュアルだ。カレールーとご飯をゴチャっと混ぜて、中央には生卵。そしてソースをかけて食べるのが、自由軒流。
レトルトカレーについては2007年より販売しているらしく、なにも今になって始まったことではない。ただし発売から10年以上たったということで、ここ最近パッケージを新しくしたようだ。
販路も少しずつ広がっているのか、記者は家の近くのコンビニで遭遇した。そう言えばここしばらく食べてないなと思い出し、購入(税込486円)した次第だ。さっそく、お家自由軒を楽しもうではないか。
・家ならではの楽しみ方もできる
最初に覚悟しておいてほしいのは、温めて終わりではないということ。かといって特に難しいことはない。カレーベースをフライパンに入れ、分量の白ご飯を入れて炒め、混ぜれば完成だ。
仕上げにぽちょんと卵を落とし、付属のオイスターソースをかければ、まさしく自由軒のカレーである。ぐちゃぐちゃっと、すべてを混ぜて食べると、どえらく美味しい。
出汁の効いたコクのあるルーがソースを加えることで、より深みが増す。卵がしっかり絡みつくことでまろやかさも生まれ、後味はほんのりピリ辛だ。家で調理するからこそ、火の通し加減を調整できるところも良い。
個人的には、少し米に焦げ目が付くくらいしっかり炒めたものが好きだ。同じ味でも店で食べるには店ならではの、家で食べるには家ならではの楽しみ方があるに違いない。
・特別なウスターソース
そしてふと気づいたのだが、ソースに “四代目ウスターソース” と記されている。わざわざ明記されているということは、四代目肝入りの特別なソースなのだろうか。
ちょっとばかり気になったので、問い合わせてみたところ、以下のような返答をいただいた。
「現在の店主が四代目にあたりますが、創業当時からテーブルにウスターソースはおいていました。
そして今のソースは、四代目が名物カレーに合うようにと、専用に新しく作り上げたウスターソースです。」
関西人はなんにでもソースをかけるイメージであるが、やはり創業当初からこちらのカレーにソースは必須だったようだ。そして、より美味しくカレーが食べられるよう開発された、いわば特別なソースが現在のモノだということだろう。
確かに自由軒のカレーは、ソースをかけてこそ完成する。この味なくして自由軒の味はなし、と思う程だ。話を伺って、なるほど納得だ。今後はより一層、敬意を払ってソースをかけたい。
店舗でいただく際は、人気店なだけに、早く次の人に席を譲らねば……という気持ちが少なからずある。レトルトでは家で落ち着いて食べることができるので、今まで気付かなかった一端にも気づけた次第。
店ならではのにぎやかな雰囲気も恋しいが、たまにはこうやって我が家で楽しむのもアリだ。常連さんはもちろん、自由軒未経験者も、まずはレトルトでその味を知るのもひとつの手だと思うぞ。
参考リンク:大阪・難波 自由軒 お家で食べれる名物カレー
執筆:K.Masami
Photo:Rocketnews24.