私の地元(鳥取)は日本海に面していて海の幸が豊富。よって魚にうるさい県民が多く、私自身も「東京の安い店の刺身は食べない」というプライドを持っている。もちろんチェーン店の回転寿司なんて論外だ。鳥取県民は山陰のご当地回転寿司『北海道』しか認めないゾ!!!
と、息巻いていたのだが……実はここ10年ほどで鳥取にもチェーン店の回転寿司が続々とオープンし、これがなかなか繁盛しているらしい。今回久々に実家へ帰省したところ、なんとウチの家族にも「スシローしか食わん」と宣言する者がいた……父である。
・どういうことなのか
釣り好きの父はことのほか魚介類の味にうるさかったハズ。私は子供のころ「生で食えない魚は焼くな」と言われた覚えもあるほどだ。そんな男がいつのまにスシローの常連になっていたのだろう? 何か思うところがあったのか?
心配になってきたので、父と一緒に人生初のスシローへ行ってみることにした。ときにお父さん……スシローの一体何がそんなに魅力的なのでしょう?
父「それはな…………とにかくネタがイイんだよ」
・ほう
マジか。あれほど寿司ネタにうるさい父が「イイ」と言うなら、それなりに期待が持てる。しかし “寿司の味も分からないほどトシを取ってしまった” という可能性もあるワケで、こうなったら父がオススメするスシローの寿司ネタを食べてジャッジするしかない。
と……その前に驚いたのは “テーブルに醤油皿が置かれていない” という問題だ。これは別に置き忘れではなく、スシローにはそもそも醤油皿がないのだという。おまけに寿司は全てがサビ抜き。セルフでワサビを乗せなくてはならない。
ウ〜ム。いくら回転寿司とはいえ、簡略化しすぎなのではないだろうか? これには父、さすがに納得いってへんのやろな……ね、お父さん?
父「ワサビは好きな量が付けられるし、余計な皿がないから洗い物も少ない。テーブルも広々と使える。フフフ……スシローって合理的だろう?」
・完全に信者化してた
アカン。しばらく会わないうちに、父は筋金入りのスシロー信者と化していたようだ。あまりスシローを悪く言うと親子関係に亀裂が生じかねないため、ここは大人しく父オススメのネタをいただこう。
父いわく、スシローでは同じネタでも日によって鮮度や厚さが異なるとのこと。海原雄山のごとく鋭い目つきでレーンを見つめる父。ややあって「アレは間違いなくウマイ」と教えてくれたのは『たい』だ。言われるままに食べてみると……
たいウマーーーーー!!!
また父いわく、この日は『つぶ貝』もイイ感じに輝いているとのこと。
つぶ貝もウマーーーーー!!!!!!!!!
チェーン系の回転寿司って「ネタがペラペラ」「いつ行っても同じ」というイメージがあったが、このレベルになってくると普通の寿司屋と変わらない。
それから目利きの腕がない場合は『あじ』や『いか』がオススメだ。「いつ来ても安定した味が楽しめる」と父。
中でも私が最も気に入ったのは溶けそうなほど甘い『こういか』。イカとシャリの間に挟まった大葉がとてもイイ仕事している。とても1皿100円(税込110円)のクオリティではない。
驚く私を見て「フフフ……回転寿司でコレをやられちゃ寿司屋は困るよなァ」と嬉しそうな父。まさにスシロー信者の鑑である。
・父のとっておき
ところで父は入店前から「実はダントツで一番美味いネタがある」と宣言していたのだが、それはなぜかメニューには載っていないらしい。「偶然の出会いを待つしかない」とのことだが……本当だろうか? 回転寿司にそのような裏メニューがあるとは信じ難い。
残念ながらそれっぽい皿が回ってこなかったので、諦めて会計しようとしたその瞬間……
60代とは思えぬ俊敏な動きでサッと皿を取る父! 奇跡的に1枚だけ『ウチの父イチオシのヤツ』が回ってきたのである!!!
スシローマニアの中澤記者によると、これは『倍盛り海鮮漬け』というもの。ほぼ毎週スシローに通う中澤記者ですらほとんど見たことが無いというレアな一品で、父の言う通り正真正銘の裏メニューだったらしい。
まさか60歳を過ぎた父が自力で裏メニューにまで辿り着いていたとは……ツウにもほどがあるだろ。
母「オホホ……スシローって本当にスゴイでしょう」
ちなみにウチの両親は「お客さんを連れて行く時などは『北海道』、1人でランチならスシロー」といったふうに、回転寿司屋を使い分けているそうだ。魚にうるさい地方民にも愛されているスシローって、今さらだけどけっこうスゴイのかもしんない。
執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.