「フード業界そのものが、大きく変わりつつある」:有機紅茶オネストティー創業者 S・ゴールドマン氏

DIGIDAY

セス・ゴールドマン氏が有機紅茶のオネストティー(Honest Tea)を起業した1998年当時、食品や飲料のナショナルブランドに代わるものは、ほとんど存在していなかった。だがそれ以来、業界は大きく様変わりしているーーそして、ゴールドマン氏はその世界のエキスパートになった。オネストティーが2011年に飲料最大手コカコーラ(Coca Cola)に買収されると、同氏は2015年、プラントベース(植物由来)の人工肉を製造販売する米企業ビヨンドミート(Beyond Meat)の取締役会長に就任。小売業界における同社のプレゼンス向上に寄与した。

そして現在、ゴールドマン氏は別のプラントベースのスタートアップに携わっている。それが、キノコを燻製にしたジャーキーを製造販売する企業イート・ザ・チェンジ(Eat the Change)で、有名シェフのスパイク・メンデルゾーン氏とともに立ち上げた。同社創業の背景には、この分野の爆発的成長があると、ゴールドマン氏は語る。オーツ麦製品ブランドのオートリー(Oatly)が最近IPO(新規上場)を果たし、植物由来の人工肉・乳製品ブランドのインポッシブル・フーズ(Impossible Foods)も同じくIPOを間近に控えていることからも明らかなように、動物由来食品の代替品はすでに、定番の食料品として広く流通している。

さらに、コロナ禍で派生した自宅料理ブームが、プラントベース食品分野の成長をさらに加速させている。消費者情報企業ニールセンIQ(NielsenIQ)によると、2020年5月から2021年5月における代替肉の売上は9億3200万ドル(約1030億円)と、25%増を記録した――これに対し、従来の肉製品の売上は9.5%増に留まった。

ゴールドマン氏はこのたび、米DIGIDAYの姉妹サイト、モダンリテール(Modern Retail)のインタビューに応え、プラントベース食品の人気と同分野におけるリテーラーの需要増をもたらした文化的要因について語ってくれた。なお、長さとわかりやすさを考慮し、発言には多少編集を加えてある。

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──オネストティーを創業した90年代以来、消費者の好みはどのように変化している?

この種のプラントベース食品を好む顧客は常に少数派と見られていたが、最近はビーガン食品の購買層を上回る成長を見せている。いまや多くの消費者が、動物由来食品を、選択肢から完全にもしくは時と場合によって外すようになった。

この流れは消費者の動向だけでなくフードカルチャーのなかにも見られるし、実際、フード業界そのものが大きく変わりつつある――たとえば最近では、フード・料理関連のトピックに特化した米レシピサイトのエピキュリアス(Epicurious)が、牛肉を含むレシピを完全に除外した。レストラン業界でも同様の動きが起きている。イレヴン・マディソン・パーク(Eleven Madison Park)が先頃、顧客の好みの変化に積極的に対応すると宣言したのもそのひとつだ。クリエイティブな挑戦として、肉を使わない料理に本格的に取り組むシェフがますます多くなっている。いまではもう、そうした顧客にサラダやパスタを出すだけでは足りない。もっと多くの選択肢を用意する必要がある。

──近年、プラントベースやデイリーフリー(乳製品不使用)を謳うブランドが次々に登場している。早くも飽和状態になりつつある?

Bビヨンドミートやオートリーをはじめ、多くのスタートアップによる成功物語を目にしたのは、ほんの数年前のことだった。だが、いまやリテーラーにはこの分野の商品を的確にマーチャンダイズするためのより鋭い感覚が求められている。たとえば、私たちが代替肉商品であるビヨンド・バーガー(Beyond Burger)を売り出したときは、冷凍食品の棚ではなく、食肉コーナーに並べてもらうように、リテーラーの食肉部門に働きかけるしかなかった。

しかし、いまは違う。代替商品は従来商品と一緒に陳列したほうが売れると、リテーラー側もわかってくれているし、だから、プラントベースのチーズが乳製品のチーズと肩を並べて普通に売られている。いまはまさにターニングポイントであり、消費者とバイヤー双方の意識の変化がはっきりと現れている。境界線を越えて従来商品の食品棚に入り込めれば、そうした代替食品ブランドはより多くの人に目に触れられる。そして、この変化が確実なものとなったいま、企業側にはさまざまなバリエーションを導入して、商品の幅を広げていくこともできる。

──コロナ禍もプラントベース食品に対する消費者の興味をそそったと言われている。

そのとおりだ。昨年は、多くの人が自身の食生活を見直して、自分が食べるものや飲むものについて真剣に考えるようになった。人類と動物界との関係も要因のひとつだと思う。また、多くの人が環境問題や食肉工場の労働環境についても考えている。

それともうひとつ、三度三度の食事をきちんととる人が減り、ロックダウンや隔離期間中に、食事よりも間食が増えてきた、という流れもある──つまり、軽い食事やスナック(間食)的なものを求める傾向が高まっている。こうした一連の動きは、その多くがコロナ禍に関連するものであり、プラントベース食品への傾倒をさらに加速させたのは間違いない。

──スナック的なものといえば、あなたは最近プラントベースのCPG(消費者向けパッケージ商品)ブランド、イート・ザ・チェンジを立ち上げた。その経緯は?

土台となったのは私たちのレストラン、PLNTバーガー(PLNT Burger)で、ヒントをくれたのは、そこで出しているマッシュルームベーコンバーガーだ。その前からスナックブランドを立ち上げる話をしていて、ある時、キノコ類はいいベースになることに気がついた。栄養はあるし、そもそもの味にクセがないから、真っ白いキャンバスのように、添加したフレーバーをそのまま出せる。今年前半に投入して、いまはオンラインと、ホールフーズ(Whole Foods)の中部大西洋沿岸地域の店や、エレウォン(Erewhon)、ストップ&ショップ(Stop & Shop)、 ジャイアント(Giant)といったオーガニックスーパーをはじめ、1000軒の店舗で販売している。その販促に引き続き力を入れるとともに、ほかのスナック分野でも、もちろん自然素材という枠のなかでだが、革新的な商品の開発に取り組んでいく。今秋には新製品を発売する予定だ。

私がオネストティーを始めたのは、自分の好きなものが見つからなくて、もっと違うものが飲みたいと純粋に思ったからだ。それがいまや、自分もその道を進んでみようと奮起する創業者がたくさん現れている。つまり、オネストティーはこの分野が発するメッセージを広め、農業界のさまざまな課題を打ち破る手助けをしたといえる――そして、サプライヤーはいま、そうしたスタートアップの革新的な商品を喜んで提供してくれている。

[原文:‘The food world is shifting’: Honest Tea founder Seth Goldman on the state of plant-based products

Gabriela Barkho(翻訳:SI Japan、編集:戸田美子)

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