「必要なのは『自分をさらけ出せるリーダー』」: マース のニキ・ブッシュ氏が、柔軟な働き方について語る

DIGIDAY

食料品と菓子、ペットケア製品をあつかう年商400億ドル(約4兆4400億円)の家族経営企業、マース(Mars)は、13万5000人の従業員(うち3万2000人はオフィス勤務)を対象に、フレキシブルワークモデルを全面的に導入することを考えている。

先頃マースは、大きな変更をふたつ発表した。それは出張の半減と、従業員がカレンダーを調整して、半分の時間をオフィスで過ごし、残りの時間をリモートで仕事をするという、フレキシブルな働き方の導入だ。同社の試算によると、この出張半減により年間14万5000回のフライト、1億4400万マイルの減少に相当するという。ただマースは、今回の出張削減に伴うコスト削減額については言及を避けている。

マースの働き方改革担当グローバルバイスプレジデントで、新モデルの責任者でもあるニキ・ブッシュ氏は、米DIGIDAYのインタビューに応じ、こうした戦略の開発に関する課題と、リーダーが自分自身やスタッフの脆弱性を受け入れることの価値について話してくれた。以下はその抜粋となる。なお、読みやすさを考慮して編集を加えてある。

──フレキシブルワークモデルを開発した背景は?

我々は、1000人以上のスタッフへの聞き取り調査のなかで、世代も人種も国籍も異なるシニアリーダーたちと話をした。その際、生産性を最大化するためには仕事をする場所だけではなく、仕事をする方法、場所、時間を見直す必要があると気付いたのだ。おかげで、オフィスで過ごす日と家で過ごす日の数以上のこと考えるようになった。たとえば、子を持つ若い女性スタッフが、優先順位の異なる複数の仕事をこなしている場合、非同期でできる仕事をする、あるいは連続した会議に拘束されずにすむように、我々は柔軟性を持たなければならない。

また、我が家のような共働き家庭では、夫婦のどちらかが出張に行った際に、誰が子どもを迎えに行くか、学校の保護者会に参加するかといった点に関して配慮をする必要がある。このような優先事項に合わせ、仕事のスケジュールを組む柔軟性が必要だ。企業はいまや、単にハイブリッドワークを推進するだけでなく、幅広い観点から働き方の変化に向き合わなければならない。

──つまり、出社する日とリモートで仕事をする日を、スタッフ自身に決めさせると?

我々はスタッフに対し、どうすればもっとも生産的になれるか、仕事について考え、チームと話し合ってほしいと思っている。そこで我々は、チームのメンバーたちが個人的にやりたいことと、チームで実行する作業について話し合う機会を設けるよう、リーダーやマネージャーをトレーニングしてきた。バランスを取りながら、個人のニーズとチームのニーズを調整しながら会話をするのだ。また、近接性バイアスについてなど、インクルーシビティ(包括性)を高めるのに必要な分野についての、さまざまなトレーニングも行っている。

──出張を半分にすることで、ウェルビーイングや健康、仕事の効率にどのような変化が生まれ、そこで捻出されたリソースはどのように再投資されるのか?

我々はこれまで、現地の市場に出向き、何が起きているかを把握することを大切にしてきた。これはいまや、バーチャルで実現できるし、出張するスタッフの健康とウェルビーイングを高めるのに効果的だ。私自身、2~3日ごとにタイムゾーンを変えるような仕事をしたことがあるが、身体にはとても負担がかかったのを覚えている。

また、サステナビリティの観点からもこれは重要なことだ。加えて我々は、つながりの文化を醸成することも重要だと考えている。1日や2日の会議のために遠出をするのではなく、同じ仲間とフォーカスグループで会話をする時間を作るにはどうしたらいいか、地域のコミュニティに話を聞きに行くにはどうしたらいいかを考えたい。なお、出張の削減はコストを減らす作用があると思うが、それを公表することはない。だが、我々はその一部を、強力なバーチャル体験やハイブリッド(技術)体験に再投資したいと考えている。

──このような戦略を打ち出す際の難しさは?

大きな課題は、80カ国、140のオフィスに勤務する3万2000人の従業員が力を発揮できるようなフレームワークを、どのようにして提供するかだ。チームやユニットを落ち着かせるために、必要以上に確実なものを提供したくなることがあるが、それでは実行しにくいものになってしまう。

もっとも重要なのは、どんな状況下にあってもフレームワークを機能させつつも、個別の事例に対応できるような柔軟性を持つことだ。我々のような、グローバルにビジネスを展開している企業は、なおさらこの点を念頭に置かなければならない。というのも今回のパンデミックのような状況下では、国によって対応がさまざまに異なる。実行性のあるフレームワークを提供することと、自分が知らないことに寄り添い、心を開いて、敏感に感じとる柔軟性を、いかにスタッフに持ってもらうかを考えたい。

──今後多くの人が、悲しみやさまざまな感情を抱えたままオフィスに戻ってくるだろう。どう対応するか?

パンデミックの前から、社内には健康とウェルビーイングに関するチームがあった。従業員自身や従業員の家族が精神的な疲労や燃え尽き、うつなどの健康問題を抱え、それに対処する際に、無料で相談できるようなサポート体制をいまも整えてある。

さらに、オフィスに戻って顔を合わせる時間を増やすことを考えたとき、我々が常に大切にしていることのひとつが、自分をさらけ出せる強さだ。つまり、誰もが抱えている問題について人々と話し合い、その懸念を表明することが第一歩になる。自分だけが悩んでいると思ったり、周りの人が自分のこと(気持ち)を理解してくれていないと思ったりすると、余計に悪くなると思う。誰もが弱音を吐いてもいいという感覚の醸成は、非常に重要だ。ときには、リーダーが最初の一歩を踏み出し、弱音を吐くことも必要だ。

[原文:‘Vulnerable leadership’: Mars’ global vp of workplace transformation Nici Bush on what’s driving a new flexible working model

JESSICA DAVIES(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:村上莞)

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