こちらは、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です
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D2Cの眼鏡ブランドであるワービーパーカー(Warby Parker)は、売上を伸ばすため郊外に目を向けている。
ワービーパーカーは5月16日朝、第1四半期の収益が前年比で10.3%増加し、1億5320万ドル(約195億円)に達したことを報告した。しかし、損失は前年の160万ドル(約2億300万円)から3410万ドル(約43億3000万円)に増加した。これはおもに、株式報酬費用の増加などが原因だ。
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同社は、顧客基盤を継続的に拡大するため、デジタルのD2Cビジネスからの転換を進め、代わりに実店舗数の拡大に動いている。小売業者である同社は第1四半期に8店舗を開設し、2022年には郊外を中心に合計40店舗を開設する計画だ。同社以外にもバロウ(Burrow)からブルックリネン(Brooklinen)まで多くのD2Cブランドが、さらに多くの人々が対面でのショッピングに戻るなかで、成長のために新規店舗の開設に動いている。
郊外店舗の方が生産性が高い
共同創設者で共同CEOを務めるニール・ブルーメンソール氏は、ワービーパーカーが169の実店舗によって「顧客が望む場所で、望む方法でショッピングを行えるようにする」という条件を満たすために注力していると述べる。この四半期に同社はネブラスカ州に最初の店舗を開設し、ヒューストンとタンパに店舗を広げた。
「小売の生産性について考えるとき、米国の消費者が通常の習慣に戻り、ショッピングセンターを訪問するようになってきていることだけでなく、当社の多くの店舗が都市部から郊外に移行してきたことも考慮している」と同氏は述べている。
同氏は、郊外の店舗は都市部の店舗よりも8ポイント生産性が高いと付け加えている。
同氏は次のように述べている。「当社はこの差が狭まっていくだろうと予測している。しかし、狭まらなかったとしても、当社の郊外の拠点数は1年前よりも増加している」。
この郊外での展開に加えて、ワービーパーカーは自社の多くの店舗を、視力検査に対応できるよう更新することにも力を注いでいる。規制の緩やかな州では、店舗で検査を行う現地の検眼医を雇っているだけである。医療行為の規制がさらに厳しい州では、州の基準を満たすため、店舗を一次医療の場所に変更しはじめている。
一方で同社は、これらの基準を満たすために40店舗を変更し、検査からの収益増を促進していくことに注力している。第1四半期には、この40店舗のうち17店舗を変更した。
ブルーメンソール氏は次のように述べている。「検査室での売上は増え続けている。第1四半期末の時点で、当社の169店舗のうち115店舗で視力検査を行っている」。
ワービーパーカーが成長できた理由
デジタルマーケティング戦略企業マーカシー(Markacy)の共同創設者であるクリス・ジョーンズ氏は、ワービーパーカーの実店舗戦略は、同ブランドが消費者とつながり、消費者の好みについての新しいデータを得るための重要な方法だと語っている。
同氏は次のように述べている。「ワービーパーカーが有名になったのは、同社が顧客とD2Cでつながり、勝利できたからだ。顧客と対面で関わり、リアルタイムでのフィードバックを得るために、小売は同社にとって常に自然な拡大方向であったと思う」。
同氏は、同ブランドが都市の中心部から郊外に拠点を移したことも、筋が通っていると付け加えている。デジタルネイティブなD2Cブランドの多くが、ニューヨークやサンフランシスコのような都市で操業を開始するが、成長とともにより郊外に拠点を広げていく。
同氏は次のように述べている。「イノベーションは若年層や大都市でのみで起きるものではなく、今やあらゆる層や場所で起きているものだ。ワービーが活用しようとしているのは、都市部に住んでいる人々だけではない。ワービーパーカーのような商品に関心を抱いている人々は、郊外の市場にも数多く存在する。これらの人々は自宅で勤務しているからだ」。
実際に、労働者たちが大都市から郊外や小都市に移住する「大移動」のなかで、多くの小売業者は郊外に戦略を移行しつつある。
たとえばAmazonは4月、郊外の買い物客をターゲットとする新しい店舗の形式としてAmazon Goを発表した。一方でダラーゼネラル(Dollar General)、ウェイフェアー(Wayfair)、マディソンリード(Madison Reed)などの企業は、郊外の周辺部に新しい店舗を作るために投資している。
しかし、ジョーンズ氏は、特に現在のインフレ環境のなかでは、ワービーパーカーが拡大を急がないように慎重になる必要があると警告している。
「同社は、収益の観点からは比較的健全に運営されているが、ほとんどの消費者向けブランドが現在直面している、多くのコストの圧力に直面している。これらは供給側の制約が理由で、一部はインフレによるものだ」と同氏は述べている。また、「同社は比較的早期段階の企業で、小売業やさまざまな形態の研究開発に多く投資している」。
[原文:Warby Parker turns to suburban brick-and-mortar expansion for sales growth]
Maile McCann(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Hyde Park Village (the store of Warby Parker at Hyde Park Village, Tampa)