銃の所持が一般的な国や地域では、イベントや記念日において祝意を示すために「祝砲」を空へ向かって撃つことがありますが、この際に空砲ではなく実弾を発砲する場合があります。しかし、たびたび祝砲の流れ弾が人に当たって死傷する事故が発生しているように、実のところ祝砲はかなり危険な行為だとオンラインメディアの1 Point 21 Interactiveがわかりやすい図と共に説明しています。
The Reality of Celebratory Gunfire
https://www.1point21interactive.com/celebratory-gunfire/
中央アジアやアメリカでは結婚式や新年のお祝い、独立記念日といったイベントに合わせて空に向かって祝砲を撃つ習慣があります。しかし、祝砲の流れ弾には人間を死傷させる威力が残っていることが多く、2021年にはアフガニスタンで権力を掌握したタリバンが撃った祝砲で70人が死傷する事故が起きたほか、結婚式の参列者が祝砲で死亡するといった事故も多発しています。
非営利団体のGun Violence Archiveによると、アメリカにおける銃撃事故の95％は1月1日(新年)・7月4日(アメリカ独立記念日)・12月31日(大みそか)に発生しているとのこと。すべての事故が祝砲によるものとは限りませんが、おめでたいイベントの日に銃の事故が増加する傾向が見て取れます。
祝砲で空に撃たれた銃弾がやがて地面へ落ちてくるのは当然ですが、その速度や威力は重力や銃弾の種類、空気抵抗、発射角度などさまざまな要因に左右されます。そこで1 Point 21 Interactiveは弾道学の専門家と協力して、複数の銃弾や角度で落下時の速度および威力を計算しました。
まず、狩猟やスポーツ射撃に用いられる「.22ロングライフル弾」という弾丸を、垂直に近い88度の角度で撃った場合について考えてみます。銃弾は毎秒1280フィート(約390m)の速度で発射され、わずか0.5秒後にはギザの大ピラミッドとほぼ同じ456フィート(約139m)の高度に達します。
弾丸の速度は重力と空気抵抗によって次第に落ちていき、2秒後には毎秒360フィート(約110m)まで低下しています。この時点の高度はエンパイアステートビルディングに匹敵する1450フィート(約442m)です。
9秒後には最高地点の2362フィート(約720m)に到達。人工建造物として世界最高のブルジュ・ハリファの820mにはかなわないものの、ちょっとした山よりも高いと考えると驚きです。この時点で弾丸の速度はほぼゼロであり、あとは重力に従って落下します。
高さ1885フィート(約575m)まで落下した弾丸の速度は秒速148フィート(約45m)。これは人間の皮膚を貫通することが可能な速度であり、当たり所によっては死亡する危険すらあるとのこと。
そのまま落下する弾丸は高さ600フィート(約182m)地点で秒速200フィート(約61m)に達します。これは人間の頭蓋骨を貫通するほどの速度で、もし頭部に当たってしまえばひとたまりもありません。
弾丸は24秒後に地面へ到達しますが、着弾地点は発射地点から173フィート(約53m)も離れた場所です。これはサッカー場の半分に匹敵する距離であり、ほぼ垂直に近い角度でもかなり遠くまで飛ぶことがわかります。
もし.22ロングライフル弾を45度の角度で打ち上げた場合、発射地点から2805フィート(約855m)も離れた場所に着弾するとのこと。この場合、頭蓋骨を貫通するほどの威力はありませんが、皮膚を貫通する程度の威力は残っているそうです。
世界で最も広く使われている弾丸の1つ、9x19mmパラベラム弾の軌道を重ね合わせてみた図がこれ。発射速度は秒速1119フィート(約341m)ですが、発射体が大きいため88度の角度で撃つと2789フィート(約850m)の高さに達します。さらに、45度の角度で撃った際の到達地点は3000フィート(約914m)を超えるとのこと。
他にもさまざまな銃弾と角度でシミュレーションを行い、軌道を重ね合わせた図がこれ。特に.30-06スプリングフィールド弾は、88度の角度で撃った時の高度が9845フィート(約3000m)に達し、秒速400フィート(約121m)の速度で地面に衝突するそうです。
1 Point 21 Interactiveは、「私たちのシミュレーションによると、あらゆる角度から発射されたすべての弾丸は致死性を秘めており、皮膚を破壊するのに十分な速度で戻ってきました」と述べ、祝砲が弾丸の種類や角度に関係なく危険なのは明らかだと主張。都市部ではもちろん、農村部でも祝砲は避けるべきであり、人々はリスクを理解する必要があると訴えました。
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