2021年8月3日に発売された漫画雑誌『りぼん』9月号に、漫画を描くためのペンや原稿用紙などの「10大ふろく!! まんが家セット」なるものがついてくるようだ。これまで他誌も含め似た付録は度々登場していたが、今回はデジタル派向けのカラーイラスト小冊子もあるらしい。
1年ほど前から絵を描き始めた「お絵描き初心者」かつ完全デジタル派である筆者は興味津々。実際に使ってみたので「デジタルでりぼん風カラーイラスト描いちゃおう!」という魅力的なタイトルの小冊子を中心に正直なレビューをしたい。
・痒いところへ微妙に届かない
『りぼん』9月号には「10大ふろく!! まんが家セット」の名の通り、線画用のペン・髪などのベタ塗り用ペン・なぞり描き用の美麗原画本・漫画制作用の本・投稿用封筒・原稿・トーン2種・デジタルデビュー向け小冊子・付録を使用した木下ほのか先生描きおろし漫画、の計10アイテムがついてくる。税込640円で漫画が読めて付録がこれだけついてくると、お得感が凄い。
中でも筆者が一番楽しみにしていたのは、とじ込み別冊付録である「デジタルでりぼん風カラーイラスト描いちゃおう!」という小冊子。りぼん公式HPでは「デジタルデビュー、してみない? 簡単&わかりやすい解説つき!」と紹介されており、初心者向けであることが期待できる。
さっそく小冊子の説明に従い、りぼんっぽいカラーイラストを描いていくよ。筆者はお絵描きを始めて1年弱、ほぼ推しの男性キャラしか描いてこなかった。なので女性キャラの描き方は、付録とりぼん本誌のイラスト講座を参考にしていく。りぼん9月号のフル活用だ。
小冊子ではお絵描きアプリ「CLIP STUDIO PAINT(クリスタ)」でカラーイラストを描くことが想定されており、柚原瑞香先生の作画のポイントを使用ツールや線の太さとともに知ることが出来る。手順が細かく区切られて丁寧に説明されているため、とても分かりやすい。
構図や色選びの考え方などだけでなく、作例イラストの肌や髪などへ実際に使われている色の数値(HSV値 色相・彩度・明度)も記載されている。そのため色選びに迷った際、箇所によっては柚原先生をはじめとした人気漫画家さんと同じ色を使用して色塗りが出来るのも良かった。
小冊子に登場するツールや色のみを使用し、講座に従って描いていくと……筆者のようなド素人でも、何となく「りぼん風」なカラーイラストが描けた気がする。筆者の絵の拙さはどうすることも出来ないが、少女漫画っぽい雰囲気ぐらいはお伝え出来るのではないだろうか。
ただ、この小冊子は「デジタルデビューする人」には向いてないと言い切れるだろう。完全に「デジタルで既に絵を描いている人」向けだった。というのも、検索すれば分かるクリスタの使い方が載っていないのはともかく、使用しているレイヤーの種類が載っていないからだ。
デジタルでのお絵描きでは1枚の紙に対して透明なシート(レイヤー)を何枚も重ねて描くことが出来る。そしてそのレイヤーにはただ不透明な色を重ねるだけでなく、様々な効果を付加して重ねることが出来るのだ。その効果の種類によって、同じ色を塗っても見え方が異なってくる。
小冊子内で解説されていた柚原先生のイラストには、恐らく通常レイヤーだけでなく、他の効果を持つレイヤーも複数使用されていたと思う。初心者にとってレイヤーの効果はどれを使えば良いのかさっぱり分からないものの1つだと思うので、レイヤーの種類は記載して欲しかった。
だが前述の通り、人気漫画家さんたちが実際に使用している色やツールなどを知ることが出来るのは初心者だけでなく、ある程度絵を描き慣れた方にも嬉しい情報なのではないだろうか。痒いところに微妙に手が届かなかったが、有益な小冊子だったことは間違いない。
・夏休みのおともに
小冊子以外だと、人気漫画家さんの原画をなぞり描き出来る「なぞって完成! 美麗原画BOOK」と、20日間で8ページ漫画の制作を目指せる描き込み式ドリル「まんが家ノート」が特に良かった。ノートはシンプルだが、全く分からないコマ割りの考え方などもギュッと詰まっていた。
付録のペンで美麗原画BOOKのなぞり描きにも挑戦してみたが、強弱があまりつかない線画用ペンはまだしも、筆ペンのようなベタ塗り用ペンで髪を塗るのがめちゃくちゃ難しい。とはいえアナログ派の方は筆ペンなどで綺麗な髪を塗るようなので、これは「ガチ仕様」なのだろう。
まんが家ノートと美麗原画BOOKで画力と漫画力を養い、20日後に付録の原稿用紙や封筒を活用する「未来の人気漫画家さん」が誕生するかもしれない。付録を使用して投稿できる賞が複数あったので、作品を完成させた方は是非。