「メタバース」をめぐる各社の一手 ほか【中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」2022/4/7~4/14】

INTERNET Watch

1. 放送と通信の融合が大きく前進

 2000年代初頭から、放送と通信融合ということが議題に上がってきていたが、その後のインフラ普及、技術革新、そして法整備などを経て、具体化に近づいてきた経緯がある。もちろん、視聴者やスポンサー企業も含めたビジネスモデルについての理解も進んできた。こうしたことを踏まえ、2015年には民放各社により「TVer」のサービスが開始され、2020年には「NHK+」のサービスも開始された。

 そして、NHK+は今春、パソコンだけでなく、インターネットに接続されたテレビでも利用できるなど、大幅なサービス拡充を図った。さらに、今週、NHKは「テレビを見ない世帯を中心に、インターネットで番組を配信する社会実証を4月22日から5月7日まで実施する」としたことを受け、4月8日の閣議後記者会見において金子総務大臣は「同実証がネット受信料の徴収につながるのではないかという質問に対し、テレビを設置しない世帯への受信料徴収は、現時点では考えていない」と発言したことが報じられている(ITmedia)。これは、今後、既存の配送経路ではなく、インターネット網を使った配送が進むことで、受信料の制度に矛盾が生じるのではないかということに対するものといえよう。

 また、4月11日からは「在京民放キー局が、テレビ番組を放送と同時にインターネットでも見られるようにする『リアルタイム同時配信』をスタート」した(Impress Watch)。ただし、「すべての番組がいきなり同時配信されるわけではありません。当面は、夜6~7時以降に放送される“ゴールデンタイム”“プライムタイム”と呼ばれる時間帯の番組が対象」とされているが、これも大きな一歩を踏みだしたといえるサービスだ。

 また、視聴率調査会社のビデオリサーチ(VR)とニールセンデジタルは「両社が共同でクロスプラットフォームの広告視聴者測定ソリューションである『Total Ad Ratings』(TAR)の提供を行う」と発表をした(日経XTECH)。こうした指標がビジネスモデルにとって重要な要素であり、放送と通信を融合させたサービスが実現されつつある。

ニュースソース

  • NHKのネット配信実証 テレビない世帯への受信料徴収は「現時点では考えていない」と金子総務相[ITmedia
  • 日本のテレビが変わる。「リアルタイム同時配信」スタート[Impress Watch
  • VRとニールセン、テレビとデジタルのクロスでの広告視聴者測定を開始[日経XTECH

2. 「メタバース」をめぐる各社の一手

 フェイスブックが社名をメタに変更し、メタバースへの注力を表明して以来、日本の各社でもメタバースへの取り組みが表明されている。さらに、企画アイデアだけでなく、より大きな金額が動き始めていることを伺わせるニュースも報じられるようになってきた。

 ソニーはEpic Gamesに10億ドル(約1254億円)の追加出資を発表している。これによって、ソニーグループはEpic株の約4.9%を保有する株主となった(ITmedia)。

 また、バンダイナムコエンターテインメントは、メタバース領域を対象としたCVC「Bandai Namco Entertainment 021 Fund(021 Fund)」を設立し、「この領域のスタートアップに3年間で30億円(毎年10億円)を出資する」としている(The Bridge)。

 海外では、メタバースの技術・プラットフォームを提供するImprobable(インプロバブル)は「ソフトバンク・ビジョン・ファンド2と、アンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)の主導で1億5000万ドル(約190億円)を調達した」と発表している(coindesk)。

 新たなメタバースを応用するアイデアとしては、日本アイ・ビー・エムと順天堂大は共同研究として、「バーチャル空間に仮想の病院を構築する他、中期的にはバーチャル空間での活動がメンタルヘルスなどの疾患の改善に与える影響などを検証する」という計画を発表した(ITmedia)。

 一方で、メタバースというテーマについて、投資家やエッジな技術者の関心は高まっているものの、利用者となりうる層の関心はいまひとつ盛り上がり見せていないようにも感じる。多くの人が理解しやすいキラーコンテンツの登場が必要か。

ニュースソース

  • ソニー、Epic Gamesに10億ドル(約1254億円)の追加出資[ITmedia
  • バンダイナムコがメタバース特化のCVCファンドを設立、3年間で30億円を出資[The Bridge
  • メタバース・スタートアップが190億円調達──ソフトバンクとa16zが主導[coindesk
  • 日本IBMがメタバースに病院構築へ 順天堂大と共同研究[ITmedia

3. 今週の「ウクライナ情勢」と情報通信業界の動向

 すでに、衛星インターネットサービス「Starlink」を利用するための通信用機器をSpaceXがウクライナに提供したと報じられているが、「その費用の一部を米国政府が補助した可能性がある」と米国メディアによって報じられている。なお、この件について、SpaceXは「政府から資金提供があったことは認識していない」とも報じられている(CNET Japan)。

ニュースソース

  • SpaceXによるウクライナへの「Starlink」提供、米政府が4億円弱を負担か[CNET Japan

4. 今週の「NFTに関わる新サービス」

 今週もNFTに関わる新サービスの発表が相次いだ。ファンやコレクターにとっては関心を刺激するものとなりそうだが、こうしたデジタル商品の「価値」をどのように捉えられているかはまだこれから理解の深まりが必要か。

 NFTプラットフォームとしては、LINEがNFT総合マーケットプレイス「LINE NFT」を4月13日に開始した。吉本興業の限定動画「よしもとNFTシアター」、アニメ「機動警察パトレイバー」のジオラマアート、人気キャラクターの動画など約4万点を販売する計画だ(Web担当者フォーラム)。

 また、ソニーネットワークコミュニケーションズとSun Asteriskは、NFT関する開発の受託、コンサルティングを事業とする新会社としてSony Network Communications Singaporeをシンガポールに設立した(CNET Japan)。

 NFT作品としては、グランドデザインが「デコトラ」のNFTアートを発表した。「デコトラ」を「走る芸術」と位置付けて後世に残すべく、全国哥麿会と共同で「ファンによってデコトラを支援してもらう仕組みをNFTによって実現しよう」ということを趣旨としている(ガジェット通信)。

 養蜂と都市緑化を手掛けるBeeslowはミツバチの群れに見立てたNFTコレクションをリリースした。「ミツバチの群れに見立てた1万数千ピースで構成されていて、働き蜂、オス蜂、女王蜂など蜂のタイプに応じ、価格やレアリティ(希少度)を変えている」ことが特徴。「環境問題に特化したNFTをリリースすることで、NFTに関心を持っていない層にも訴求していきたい」としている(ITmedia)。

 そして、松竹は「源氏物語を題材とした歌舞伎『META歌舞伎 Genji Memories』(1月25日生配信終了)の分割したシーンを『META歌舞伎 NFT』として商品化」した。NFTマーケットプレイス「Adam byGMO」へ出品する(Impress Watch)。

ニュースソース

  • LINEグループのLVCがNFTの総合マーケットプレイス「LINE NFT」開始、限定動画など4万点販売[Web担当者フォーラム
  • NFT×デコトラ!世界が注目する走る芸術「デコトラ」のNFTアートが発売[ガジェット通信
  • ミツバチの群れに見立てたNFTコレクションをリリース 環境に関心を持つコミュニティーを活性化[ITmedia
  • 松竹「META歌舞伎」をNFTに メタバース空間で蘇る源氏物語[Impress Watch
  • ソニーネットワークコミュニケーションズとSun Asterisk、NFT事業会社をシンガポールに設立へ[CNET Japan

5. イーロン・マスク氏がTwitterの取締役就任を撤回し、買収提案をする

 テスラの最高経営責任者(CEO)であるイーロン・マスク氏がTwitter社の株式を取得し、同社の大株主となり、取締役に就任すると報じられたが、直後に取締役就任を撤回した(ケータイWatch)。その上で、Twitter社に対して「現金430億ドル(約5兆4000億円)での買収提案」を発表したと報じられている(CNET Japan)。

 記事によると、イーロン・マスク氏がTwitter社に望むこととして、アルゴリズムの公開を挙げた。記事によれば、「Twitterが行うべきだと私が考えることの1つは、アルゴリズムのオープンソース化だ」と述べ、「ユーザーのツイートに対するすべての変更は、それがツイートを強調するものか、目立たなくするものかにかかわらず、白日の下で処理するべきだ(中略)つまり、アルゴリズムによるものであれ、手作業によるものであれ、舞台裏の操作のようなものはあってはならない」という主張をしている。社会的な基盤ともなっているTwitterの自由な発言の場としてのの存在価値を高めるという意図があるとみられる。

ニュースソース

  • イーロン・マスク氏、Twitter取締役就任を撤回[ケータイWatch
  • イーロン・マスク氏、Twitterに買収提案–その意図をTEDで語る[CNET Japan

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