5月15日に開催されたGlossy eコマースフォーラム(Glossy E-Commerce Forum)では、ファッションや美容業界のエグゼクティブらが、画像検索から拡張現実、話題のAIツールにいたるまで、テクノロジーがビジネスに与える影響について議論した。
講演者に共通したテーマのひとつとして、ブランドにとって重要なのは、あるテクノロジーが必要不可欠で高価な投資に値するものなのか、それともまだ初期段階にあり、より慎重で軽い対応が求められるものなのかを見きわめることだという点が挙げられた。
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「2020年に革新的だったものが、2023年には最低限必要なものとなっている」と述べたのは、Googleのグローバルコマースマーケティング・シニアディレクター、ステファニー・ホートン氏だ。「オムニチャネルは最低限必要なものだ。オンラインとオフラインの販売の間を摩擦なく移動できることが必要不可欠なのだ」。
画像検索とAR試着
ホートン氏によると、画像検索は、特にショッピングに使用する場合、何年も前からGoogleの検索機能として一般的に使用されてきた。だが、ここ2カ月でその利用が爆発的に増えている。1カ月に120億人以上がGoogleの画像検索で買い物をしており、2カ月前とくらべると4倍にもなっている。
Googleは、画像がAIで生成されたものかどうかをすぐに見わける機能など、Googleイメージに新機能を追加し、この傾向をサポートしている。昨年11月には、Googleショッピングに美容購入者向けのARツールを追加、オンラインショッピングの際に自分の肌の色に合わせることができるようにした。ファッションブランド向けには、VANS(バンズ)のスニーカーのように製品の3DのARレンダリングを追加している。
アルタ・ビューティ(Ulta Beauty)のデジタルイノベーション・バイスプレジデントであるミシェル・パチンスキー氏は、 ARは美容ブランドが保有する新しい技術ツールの中でもっとも人気があり、広く受け入れられていると話す。多くのAIやWeb3アプリケーションはいまだ発展途上にあるが、ARはブランドがショッピング体験にさらなる技術を導入するための確立された方法となっている。
「当社には、スマホを使って何かをスキャンして店内でバーチャルに持ち込むという店頭体験があるが、人々がそのようにスマホを使うのはまだそこまで自然ではない。だがAR試着は確実に機能している。昨年は(アルタのAR試着サイトの)グラムラボ(Glam Lab)に1150万人が訪れ、8200万色以上のシェードを試着した。もっと広く普及する可能性があるという意見もあるだろうが、もうすでに多くの人がこのツールを使っている」とパチンスキー氏は述べた。
新しいツールは商業化の前に認知度の確立を
さらに新しいツールで、まだ顧客が慣れておらず採用が広がっていない可能性があるものについては、ブランドは慎重に進めるよう講演者はアドバイスしている。資生堂のWeb3およびメタバース担当シニアバイスプレジデントのディナ・フィエロ氏は、早急にWeb3に飛びついて導入に失敗したブランドを目にしてきたと語る。
「ブランドが犯す大きな間違いとして、コミュニティや環境を尊重せずにその領域に参入するというのを現在目にしている。あるいは、認知度がきちんと確立する前に商業化を進めてしまっている」。
それとは対照的なアプローチとしてフィエロ氏が例に挙げたのは、資生堂のブランドで昨年Roblox(ロブロックス)にてメタバースイベントのカラークエスト(Color Quest)をローンチしたナーズコスメティックス(Nars Cosmetics)だ。そこでは積極的なマネタイズは行わなかったという。
「私たちは逆のアプローチを取り、探索するためのクールな空間を作って、それをブランドに定着させるという、認知度を高めるためだけのものを作ろうとした」とフィエロ氏は述べている。
[原文:Virtual try-on is table stakes for beauty brands, image search is growing]
DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)