上司の言うことは絶対である。たとえ底抜けのアホだとしても絶対である。いきなりどうしたのかと言うと、先日、当サイトの偉い人・Yoshioが「10メートルのスチールラックを作りたい」と言い出したのだ。スチールラックとは、スチール(鉄)のラック(棚)のこと。
言われたからには作らなくてはならない。意味はまったく分からないが、上司が「10メートルのスチールラックを作りたい」と言ったら「作りたいですね」と即答するしかないのだ。そんなわけで実際に作ってみたら、屋根よりも高いラックが完成したでござる……!!
・10メートルのスチールラック作り
舞台となるのは、埼玉奥地の山中にあるロケット荘。誰もいない山奥で10メートルのスチールラック作りが始まろうとしている!
Yoshioが大量に用意したのは、ダイソーの「ジョイントラック用棚(300円)」「ジョイントラック用延長ポール(100円)」「ジョイントラック用固定部品(100円)」。Yoshio曰く、約3万円分購入したらしい……業者でも買わない量だろう。さすがアホな上司。
ちなみにキッチンや洗面台などの空きスペースにジョイントラックを設置することで、調味料や洗剤等をすっきり収納できるという。デスク周りにも使えそう。そんなことを考えながら、まずは商品タグをひたすら回収していく……長い1日になりそうだ。
・組み立て開始
タグをすべて回収したらジョイントラックを組み立てていく。固定部品をポールに付けてから棚板をはめ、棚板をハンマーでカンカン叩いて押し込んだら最下段が完成する。
さらに延長ポールを接続して
棚板を設置して、ポールを継ぎ足す。
という作業を永遠にくり返すのだ。
あっという間に2メートル近い高さになった。さすがにこれ以上ラックを立てたまま作業はできないので、ラックを倒した状態で作業を続けることに……Yoshioがふと「くだらないことをまじめにやるのがロケットニュース」とつぶやいた。もう疲れているのかもしれない。
ひたすら棚を伸ばしていく。すぐに「これ完成したらどうやって立てんの?」という長さ(高さ)になったが……「こうなったら好きなだけ伸ばして立たなければ立たないでいい」と思うようになった。作業は1時間以上続いた。
さらに棚を伸ばしていく。そう、これは棚なのだ。
そして……
ついに……
…………
10メートルのラック完成ィィィイイイイイ!
・どうやって立たせるか
しかし先にも述べたとおり、このラックを立たせなければ意味がない。立っていなければラックとは呼べないのだ。
いや、もう3メートルを超えたあたりでラックらしさなんてものは失われてしまった気もするが、それでも立たせることでラックらしさを取り戻せるかもしれない。そう思うことで「何があってもラックを立たせるんだ」という気持ちがわいてきた。
作戦はこうだ。ラックをある程度の高さまでどうにか持ち上げてから、もう1人が上から引っ張り上げるというもの。さっそくラックにヒモをくくりつけて、屋根の上にいるYoshioにヒモを投げた。
果たしてラックは無事に立つことができるのか!
全然無理だった。
少し吊り上げただけでグイーンとそり曲がるラックは「これ以上あげたら折れます」と悲鳴を上げていた。もしかしたら弱いのかも……いや、こんなに長いものを吊り上げたら何でも曲がるに決まっている。こんな状況を想定してラックは作られていないのだ。
ラックを下ろして注意深く状態を確認すると、ポールが抜けている箇所があった。やはり無理をさせてしまったらしい。無理やり持ち上げるのは危険かも。一応、ヒモできつく縛っておく。何があってもラックを立たせるのだ。もうこうなったら意地である。
・Yosioの提案
「持ち上げて、いったんタンクに乗せよう」とYoshioが言った。段階的に持ち上げるという作戦だ。タンクの目の前までラックを持って行き……
ラックをタンクの上に乗せる。
あとは気合いで……!
…………
マジで死ぬかと思った。
しかし「いったんタンクに乗せる」という作戦は悪くなかった。片側から吊り上げるよりも、全体を斜めにして持ち上げる方が安定感があるような。そこで……
今度はラックを家の前の崖の下におろし……
斜めの角度を保ったまま持ち上げてみる!
イッケエエエエエエエエエエエエエ!
オリャアアアアアアアアアアアアア!
…………
いけたあああああああああああっ!
デケエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!
ついに、ついに10メートルのラックが完成した。屋根より高いスチールラックが完成した。とうとうやったぞ!
…………
使い方次第で収納の幅も広がるぞコラァアアアア!
おそらく、これ以上高いスチールラックは世の中に存在しないだろう。あらためて見ると芸術作品のようなオーラが漂っている。まさかアートなのか……ラックを作る前は、ラックがアートになるなんて思ってもいなかった。しかしこれは明らかにアート。神々しささえ感じる。
つまりまとめると、アホな上司の願いを叶えたら「神々しいアート」が誕生してしまった。タイトルは「アホなラック」でどうでしょうか。欲しい方がいたらプレゼントしますので。埼玉の山奥からは以上です。
執筆:砂子間正貫
Photo:RocketNews24.