TikTokインフルエンサー をアカウント運営者として、ブランドが採用中

DIGIDAY

ソーシャルメディアの初期のころ、インフルエンサーとして有名になることは企業勤めを辞めるための魅力的な片道切符だった。だがいまやTikTokインフルエンサーは、憧れて目指す存在となった。

TikTokで広く拡散する動画の制作に詳しいマーケティング担当者を探すブランドは、直接インフルエンサーを採用するようになった。ナーフ(Nerf)やオリポップ(Olipop)などさまざまな分野の企業と同様、美容レーベルもアカウントを管理するTikTokインフルエンサーを募集中だ。

この夏、スキンケアブランド「ワイルドキャット(WLDKAT)」がTikTokインフルエンサーであるマイケル・ディオン氏(@michaeldoesmakeup、フォロワー数37,600人)を、ブランドアカウントの運営のために採用した。同ブランドの創設者であるエイミー・ズズネギ氏が「For You」ページで、ディオン氏によるワイルドキャットのレビューを見つけたことがきっかけだった。

「彼のダイレクトメッセージに『ワイルドキャットの創設者として、本当に感謝しなければなりません』と送った」とズズネギ氏は振り返る。ロサンゼルスを拠点とする両氏はやりとりを始め、次第に飲みに行くようになった。ディオン氏のTikTok戦略やトレンドにまつわる知識の深さに、ズズネギ氏は感銘を受けたという。

TikTokインフルエンサーは「トリックを知っている」とディオン氏は言う。「自分たちのページに注目を集める必要があるため、トレンドは常に注視している」。

同氏は現在、TikTokアカウントをパートタイムで管理しており、コンテンツのアイデアを思い付いたら撮影を行う。動画には同氏が画面上に登場するものも、しないものもある。

TikTokから人材を採用しようと考えているブランドにとって、答えは明らかだろう。いかにしてTikTok上でバイラルになるかという、多くのブランドが苦戦する目標の達成方法を、インフルエンサーは熟知しているのだ。

「フォロワーを持つ人をブランドが採用する大きな利点は、彼らは通常ソーシャルメディアやコンテンツ作成、ユーザーとの接点の作り方について、企業のソーシャルメディアマネージャーよりも熟知していることだ」と、インフルエンサーエージェンシー「インフルエンサー・マーケティング・ファクトリー(The Influencer Marketing Factory)」のCEO兼共同創設者であるアレッサンドロ・ボリアリ氏は語る。

「企業は、すでにクリエイターである人たちを採用しようとしている。方法を知っているからだ」と語るのは、クリエイターマーケティングエージェンシー「ティクタル(TikTal)」のPRマネージャー、アンドレーア・オズテュルク氏。「クリエイターを雇えば、彼らは(編集やカメラの前で話すといった)すべての方法を知っている」。

クリエイターと他のインフルエンサーとの交友も、ブランドがさまざまな著名人との関係を構築する上で役に立つ。たとえばディオン氏も、TikTokの潜在的なブランドパートナーをズズネギ氏に紹介している。

「1時にZoomで話して、その相手には96万人のフォロワーがいたりするのだと(ディオン氏は)言っていた」とズズネギ氏は話す。

TikTokを介したリクルーティングの台頭も、インフルエンサーをブランドでの仕事に引き付けている。セラヴィ(CeraVe)がTikTokクリエイター/動画プロデューサーのポジションを募集するにあたり、同ブランドに関する動画を #CeraVeCareer というハッシュタグを付けて投稿するよう応募者に求めたところ、50本の動画を受け取り、ハッシュタグは660万ビューを獲得した。TikTokで50.3万人ものフォロワーがいるアリッサ・キンバー氏がハッシュタグを付けて商品レビュー動画を投稿した他、スキンフルエンサー(@d1na_th、フォロワー数3.1万人)やRoblox(ロブロックス)のアニメ制作者(@buildsbymike、フォロワー数2.3万人)、フィットネス系インフルエンサー(@levinarobin、フォロワー数7,000人)などが動画を応募した。

「1,000人~1万人規模のフォロワーがいる応募者は、かなりの人数がいた」と、セラヴィのバイスプレジデント兼グローバルデジタルマーケティング責任者であるアダム・コーンブルム氏は語る。だが、同ブランドでは採用にあたって応募者のフォロワー数よりも、クリエイティブな才能を重視していると強調した。

「私たちが探しているのはTikTokのプロ。応募者自身がインフルエンサーである必要はない」と同氏。募集しているポジションにおいて、評価しているのはストーリーテリング、クリエイティビティー、トレンドを見抜く力だという。

アディソン・レイ氏やダミリオ姉妹などトップインフルエンサーは何百万ドルも稼いでいるが、一般的にマイクロインフルエンサーが得ているのは副業程度の収入であり、本業を辞めてしまうような額ではない。アイゼア(IZEA)の2022年のレポートによると、さまざまなプラットフォームでスポンサー投稿ごとに稼ぐ金額は、ナノインフルエンサー(フォロワー数が1,000人以上~1万人未満)だと平均901ドル(約13万円)、マイクロインフルエンサー(フォロワー数が1万人以上~5万人未満)だと平均1,516ドル(約22万円)だという。ただし金額は大きく異なる場合があり、ディオン氏の記憶では、あるブランドは最近4本の動画制作で164ドル(約24,000円)を提示してきたとのことだ。企業でソーシャルメディア管理の仕事に就くと、スキルを活かして安定な収入を得ることができるようになる。

ブランドの仕事にフルタイム、あるいはパートタイムで就くインフルエンサーにとって、自分のチャンネルで他ブランドを宣伝することについて合意できるのか、という疑問は残るだろう。パートタイムで参画するディオン氏は、ワイルドキャットから投稿を制限されていない。セラヴィについては「よく検討しなくてはならないこと」だとコーンブルム氏。「これは少し興味深いジレンマだ」。

TikTokはこれまでとは一味違った、企業の世界への入り口になりつつある。ボリアリ氏によるとインフルエンサー・マーケティング・ファクトリーでは、小売店の従業員からTikTokerに転向し、コンテンツが拡散したことが目に留まって本社採用につながった人たちと連携してきたという。

リクルーターと話し合っていると「多くのフォロワーを抱える人や、企業のソーシャルメディアアカウント管理の他にも経験を積んだ人が、ソーシャルメディアのポジションに応募するケースが増えているようだ」とズズネギ氏は語る。「(ディオン氏が)企業で働いた経験がなくても構わない」というのが同氏の見解だ。

[原文:Brands are hiring TikTok influencers to run their accounts

LIZ FLORA(翻訳:田崎亮子/編集:山岸祐加子)

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