ハイエンドスマホ「ROG Phone」シリーズの最新・上位機種
ASUSのハイエンドゲーミングスマートフォン「ROG Phone 6」および「ROG Phone 6 Pro」が10月7日に発売されることが決定した。
「ROG Phone」シリーズは、発売時点で最高のスペックであることに加え、モバイルゲームを快適にする機能や、ユニークなオプションパーツを備えているのが特徴。今回もこれでもかと言わんばかりに多彩な要素を詰め込んでおり、記者へ事前に提供された資料は大変な量になっていた。
今回は発表された中でも上位機種となる「ROG Phone 6 Pro」をお借りできた。本機に搭載された全要素を網羅するだけで長大な記事になるので、実際の使用感から注目してほしい部分にフォーカスしてレビューをお届けしたい。
メモリやタッチ性能まで妥協のないハイエンド構成
まずは「ROG Phone 6 Pro」のスペックから確認しておこう。
プロセッサはSnapdragon 8+ Gen 1で、メモリは18GBのLPDDR5、ストレージは512GB。現状では文句なしのハイエンド構成だ。
ディスプレイは6.78型有機EL(2,448×1,080ドット)で、リフレッシュレートは165Hz。タッチサンプリングレートは720Hzと非常に高速だ。加えてタッチ操作に関わるハードウェアやAndroidフレームワークのシステムの最適化により、タッチレイテンシはASUS調べで23msとしている。
背面カメラはメインと超広角、マクロの3点。メインは5,000万画素で、ソニー製の1/1.56インチセンサー「IMX766」を採用。ゲーミング向けの端末ながら、写真でも高画質が期待できる。インカメラは1,200万画素。
通信機能は5Gに対応し、2枚のNano SIMを挿入できる(5Gの2枚同時使用は不可)。無線LANはWi-Fi 6に対応する。
バッテリ容量は6,000mAhと大容量。内部では3,000mAhの2つのセルに分割されており、付属の充電機で最大65Wの急速充電に対応することで、フル充電までの時間は42分とする。同じバッテリ容量の「ROG Phone 5」では51分としており、さらに高速化している。
NFCには対応するが、おサイフケータイは非対応。防水機能はIPX4。本体重量は239gとやや重めだ。
【表1】ROG Phone 6 Proのスペック | |
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OS | Android 12(ROG UI) |
プロセッサ | Snapdragon 8+ Gen 1(3.2GHz) |
メモリ | 18GB(LPDDR5) |
ストレージ | 512GB(UFS3.1) |
ディスプレイサイズ | 6.78型AMOLED(有機EL) |
ディスプレイ解像度 | 2,448×1,080ドット(165Hz) |
ディスプレイ輝度 | 800cd/平方m(HDR10+) |
アウトカメラ | 5,000万画素(メイン、IMX766、1/1.56インチセンサー) 1,300万画素(超広角) 500万画素(マクロ) |
インカメラ | 1,200万画素 |
NFC | 対応(Type A/B) |
GPS | GPS、GLONASS、Galileo、BeiDou、QZSS、NavIC |
センサー | 加速度センサー、電子コンパス、光センサー、近接センサー、ジャイロスコープ、指紋センサー(画面内認証)、超音波センサー(AirTrigger 6) |
無線LAN | Wi-Fi 6 |
Bluetooth | 5.2 |
5G | n1/n2/n3/n5/n7/n8/n12/n13/n18/n20/ n25/n26/n28/n38/n40/n41/n48/n66/n71/n77/n78/n79 |
4G | FDD-LTE : B1/B2/B3/B4/B5/B7/B8/B12/B13/ B17/B18/B19/B20/B25/B26/B28/B29/B30/B32/B66/B71 TD-LTE : B34/B38/B39/B40/B41/B42/B43/B48 |
3G | WCDMA : B1/B2/B4/B5/B6/B8/B19 |
2G | GSM:850/900/1,800/1,900MHz |
USB | USB 3.1 Type-C×1、USB 2.0 Type-C×1 |
SIM | Nano SIM×2 |
3.5mmオーディオジャック | マイク・ヘッドフォンコンボジャック |
防水・防塵 | IPX4/- |
バッテリ容量 | 6,000mAh |
ACアダプタ | 最大65W(Quick Charge 5.0、USB PD 3.0対応) |
本体サイズ(高さ×幅×厚さ) | 173×77×10.4mm |
本体重量 | 239g |
価格 | 16万9,800円 |
ノッチなしのディスプレイと最高級のサウンドで抜群のゲーミング環境
続いて実機を見ていく。本体色は「ROG Phone 6 Pro」では白系のストームホワイトのみ。「ROG Phone 6」では黒系のファントムブラックも選べる。ちょっと青みがかった印象のホワイトで、デザインの各所にもライトブルーが配されている。SFロボットものを想像させる、いつものROGらしい遊び心のあるデザインだ。
カラーリングが分かるのは背面だけ。ディスプレイ側は電源ボタンにスカイブルーが入っているだけで、ほぼブラックで統一されている。使用中に見える部分はシンプルな方が、ゲームに集中できていい。
ディスプレイは色味も見え方もとても自然。リフレッシュレートの高さもあり、見た目に不満を覚えるところはまったくない。ディスプレイガラスは端に丸みがあるものの、ディスプレイ表示部はすべて平面部分に収まっている。
表示部の角は丸くなってはいるものの、インカメラ用のノッチやパンチホールはなく、素直な全面表示になっている。インカメラはディスプレイの右上部にあり、その分、3mmほど端末が長くなっている。それでもゲームではノッチなどない方がいいのは確か。また左上にはLEDがあり、通知の有無や充電状態を把握できる。
サイズ感は元々縦長のディスプレイに加えて、インカメラ分も伸びているため、かなり縦に長い。とは言え旧機種の「ROG Phone 5」とほぼ同サイズで、昨今のスマートフォンとして目立つほど長いというわけでもない。本体重量も変わらず239gとなかなかの重量級だ。ただ端末の幅は標準的な広さなので、持ちにくくはない。
カメラは背面上部に横向きに3つ並ぶ形で、周囲が2mmほどせり出している。横向きで持ったときに左手が当たるのが若干気になるものの、ホールド感を損ねるというほどでもない。ただゲーム用に特化する端末なら出っ張りのない平面にしてほしかった。
ケースも標準で付属する。最低限の範囲を覆う薄型のハードケースで、耐衝撃性より傷の防止という印象だ。なお本機の裏面には「ROG Vision」と呼ばれるサブディスプレイと、「DARE TO PLAY」の文字が書かれたシステムライトがあり、ケースはそれらを邪魔しないようにもなっている。
ACアダプタはUSB Type-Cケーブルとセパレートするタイプ。65W出力のACアダプタとしては標準的なサイズだ。ケーブルは編組で、やや太めで堅め。耐久性はありそうだが、ケーブルを接続した状態でのゲームプレイは若干重くて邪魔になる。6,000mAhの大容量内蔵バッテリを搭載しており、充電も十分高速なので、基本的にはバッテリ駆動でプレイするのがいいだろう。
指紋センサーは、ディスプレイの下部に内蔵されている。最近のスマートフォンではよく見かけるタイプで、精度も申し分ない。最初の指紋登録の後も、使用を続けることで学習して精度が向上するという。
顔認証機能も高速で、電源ボタンを押すと速やかに認証される。普段から眼鏡をかけている筆者が、外でマスクを付け、帽子をかぶった状態でもロックを解除できてしまい、これは大丈夫なのかと逆に不安になったが(笑)。何にせよよく機能している。
スピーカーは端末の上下に搭載されている。音質はスピーカーのサイズからは想像できないほど良好で、クリアな中高音と、低音も鳴っていると分かる程度には出ている。また横向きにしたときの音の定位感も抜群で、音楽のステレオ感もしっかりあり、手軽に音楽を聴くならこれで十分と思えるほど。
ゲームでも音がクリアで、FPSなどでの音による位置情報も自然に聞き取れる。人の声だけが聞き取りやすいという味付けではなく、あらゆる音がしっかりと鳴るという印象で、ゲームの迫力や没入感を高めている。筆者は過去に「ROG Phone」シリーズをいくつか触ったことがあるが、毎回、性能よりもサウンドの質の高さに驚かされる。
高性能なだけでなく、タッチ操作や熱処理も良好
実際のパフォーマンスを見るため、各種ベンチマークテストを実施した。使用したのは、「Geekbench 5.4.4」、「AnTuTu Benchmark v9.4.4」、「3DMark」、「PCMark for Android」。
【表2】ベンチマークスコア | |
---|---|
Geekbench 5.4.4 | |
Single-Core Score | 1,318 |
Multi-Core Score | 4,375 |
OpenCL Score | 6,640 |
Vulkan Score | 7,146 |
AnTuTu Benchmark v9.4.4 | |
Score | 1,116,136 |
CPU | 261,968 |
GPU | 476,333 |
MEM | 188,364 |
UX | 189,471 |
3DMark | |
Wild Life Extreme | 2,815 |
PCMark for Android | |
Work 3.0 performance | 17,503 |
Work 3.0 battery life | 14時間10分 |
Snapdragon 8+ Gen 1のパフォーマンスはやはり高く、CPU/GPUともに最高レベルの結果が出ている。+が付かないSnapdragon 8 Gen 1を搭載した機種と比較しても、はっきり差がついている。
バッテリ持続時間は「PCMark for Android」で14時間10分と計測された。3Dゲームなど高負荷な用途ではもっと早くバッテリを消費するはずだが、ディスプレイが常時点灯した状態で14時間以上持続したのは確か。普段使いであれば1日でバッテリ不足に陥る心配はないだろう。
実際のゲームプレイも試してみた。TPSの「フォートナイト」やFPSの「Apex Legends Mobile」をプレイすると、想像通り描画に関してはまったく問題ない。「Apex Legends Mobile」で最高画質にしてプレイしても、プレイ中の発熱は背面が少し温かいかなと感じる程度で、不快に思うほどにはならなかった。総じてプレイ感は良好だ。
またタッチ操作のすばやさと位置が重要になる「クラッシュ・ロワイヤル」では、タッチのレスポンスが気にならないのはもちろん、タップ位置もずれることなくほぼ想定通り。タップ抜けもまったく見られず、普段とは違う不慣れな端末にも関わらず、極めて快適にプレイできた。
ちなみに本機には動作モードが3段階あり、通常時の「ダイナミック」のほか、節電用の「超省電力」、ゲーム向けに性能を上げる「Xモード」が用意されている。ゲームのアプリを起動すると、概ね「Xモード」へと自動で切り替わるので、基本的にはユーザーが意識しなくても構わない。状況に応じて性能やバッテリ消費量を調整できるものと思っておけばいいだろう。
専用の冷却パーツと本体取り付け可能なゲームパッドも
本機にはさらにゲーミング向けの別売りパーツも用意されている。今回は本体のほか、外付け冷却システム「Aero ActiveCooler 6」と、ゲームパッド「Kunai 3 Gamepad」を一緒にお借りしているので、合わせて紹介する。
「Aero ActiveCooler 6」は、本機の背面に装着することで冷却力を高めるもの。本機の左側面にあるUSB Type-Cポートに接続し、本体を横から挟み込むように装着することで、背面中央付近を冷却する。本機はプロセッサが本体中央部に配置されており、その真上を冷やすことで効率よく排熱しようという仕組みだ。
冷却の仕組みは、「Aero ActiveCooler 6」に内蔵されたファンを回転させて放熱するという単純なものだが、ファンだけでなくペルチェ素子も搭載し、小型ながら強力な冷却力を発揮する。
冷却モードは発熱に応じて自動選択されるスマートと、ファンを回すのみのクール、ペルチェ素子を使用するフロスティ、さらにファンの回転数を上げるフローズンの3段階が選べる。
フローズンは「Aero ActiveCooler 6」に用意されたUSB Type-Cに電源を接続した際のみ選べる(本体の空いているType-Cで充電しても選べない)。「Aero ActiveCooler 6」の電源は通常は本体から取るが、電源を接続している場合は本体に充電しながら使用できる。
今回お借りした機材は端子部の接触不良があるようで、ゲームプレイまでは試せなかった。「AnTuTu Benchmark v9.4.4」は何とか実行でき、全項目で1~5%程度のスコアの上昇が確認できた。置き方があまり良くなかったので、うまくやればもう少し性能を上げられるかもしれない。
「Aero ActiveCooler 6」には4つのボタンも搭載されており、ゲームプレイにも利用できるという。ただしファンが回転する分、持ち手となる部分には温風が当たる上、「Aero ActiveCooler 6」自体もそれなりに大きく、冷却モードをフローズンにするとファンノイズもかなり大きいため、快適性は落ちる。それでも少しでもパフォーマンスを稼ぎたい時や、発熱によるパフォーマンス低下が見られる際には利用を考えたい。
なお「Aero ActiveCooler 6」は本機に装着するとスタンド代わりにもなり、本体を横向きにして設置できる(ただしUSB Type-Cは底面になるため併用できない)。この状態でBluetooth接続のゲームパッドを使って遊べば、手に伝わる熱を気にしなくていいのでおすすめ。
そのゲームパッドである「Kunai 3 Gamepad」は、本体左右に装着するスタイルと、単体のBluetoothゲームパッドとして使うスタイルの2つが選べる。ゲームパッド部分は左右2つに分かれており、本体に装着する場合は専用の本体カバーで、Bluetooth接続では専用のアタッチメントを使って使用する。Nintendo SwitchのJoy-Conとよく似た使い方だ。
本体カバーの内側にはUSB Type-Cの端子が出ており、底面の端子に接続することで、ゲームパッドを有線接続して使える。Bluetoothより高速で安定した接続になるのがメリットだが、かなり縦長の本体を左右のゲームパッドで挟み込む形になるため、ややアンバランスなほど横長のゲーム機のように見える。
ゲームパッドとしては問題なく機能し、ホーム画面でのアプリ選択もゲームパッドの操作で行なえる。ゲームでの動作はアプリによってまちまちで、「フォートナイト」は特に何の設定もせずに操作できたが、「Apex Legends Mobile」ではうまく認識してくれなかった。
しかし本機ではホットキーの設定が可能で、ボタンやアナログスティックの操作をディスプレイの任意の場所に割り当てられる。「Apex Legends Mobile」ならバーチャルパッド部分に左スティック、画面の何もない部分に右スティック、あとは各種ボタンを適当に設定すれば、さもゲームパッド対応ゲームのように操作できる。アナログスティックの感度調整もできるので、振り向きの速さも変えられる。
ちなみに「Kunai 3 Gamepad」を本体に取り付けた状態で、さらに「Aero ActiveCooler 6」の取り付けも可能になっている。見た目がかなり仰々しくなり、重さもさらに増すが、最高性能でゲームパッドによるゲームプレイができるという意味では、最高のモバイルゲーム環境が完成する。
今回も最高のモバイルゲーミング環境が手に入る
「ROG Phone」シリーズはそのときそのときで最高スペックを詰め込んでくるが、今回もその点は変わりない。そこまではある意味どこのメーカーにでもできることだが、「ROG Phone」はさらにゲーマーの使用感にまで深く踏み込んでいるのが印象的だ。
もっとも目立つのはサウンドの良さ。ゲームには映像の処理も大事だが、音の迫力がなければ没入感が薄れるし、音情報の正確性はゲームのスコアを左右する。音質を上げるためのさまざまな取り組みは事前資料にたっぷり書かれているのだが、実際に使用してみても最高級に音がいい、ということが伝われば良いかと思う。
またスクリーンにノッチがなく、ゲームによって表示に問題が発生する心配がないのも嬉しい。タップの反応速度も速いとされており、ほかの端末との差を実感するのは難しいものの、操作の違和感はなくキビキビと反応してくれる印象はあるので、ゲームにも地味に効いているのだろう。体感しづらいという意味では、PCゲームで反応速度が速いゲーミングデバイスを選ぶのと同じ感覚だ。
本機を選ぶ上で重要なことはまさにそこで、「デバイスによる差で優劣がつくのは許せない」というゲーマーの期待にしっかりと答えている。他人に負けない最高のデバイスであるという安心感があれば、負けの責任はすべてプレイヤーの腕にある。言い訳できない状況でプレイするから、負けを素直に受け入れて上達につなげられるのである。
とは言え高価なでデバイスには違いなく、約17万円という価格をモバイルゲーム専用に払える人はそう多くはないだろう。ならば普段使いのスマートフォンとしても使える方がありがたく、カメラも価格相応にこだわってくれれば嬉しい、というユーザーが多いのかもしれない。その辺りは個人の趣向や懐事情による。
普段使いで何か問題があるとしたら、防塵がなく防水がやや弱め、おサイフケータイには非対応(ASUSは「Zenfone 8」でおサイフケータイに初対応している)、やや長くて重めのボディ、好みが分かれるであろう背面デザインといった辺り。そんなのはゲーミング性能に比べたら些細なことだ、と思える人が本機を選べばよい。
とは言え価格なりに不満点の少ない、良質な端末であることには間違いない。熱処理にこだわりがある分、普段使いでもあらゆる状況で安定動作が望めるはずで、ゲーム以外にもちゃんとメリットはある。その辺りも考慮した上で、本機の購入を検討してみるといいだろう。
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